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7話


「はい、では10番の方どうぞ」


そして、俺の番が来た。


「はい!10番 不知火暁斗、俳優志望です!」


今までの努力を出すだけだ。


「特技は、なんでも出来ることです!」


ピクッ


弥生氏が少し身じろぐ。


どうしたんだ?いや、今はそれを考える時じゃない。


ここからは演技だ......

俺が演じるのはここ半年でかなり流行っている少女漫画、学校のアイドルの男主人公、それに恋をした、人と関わりを持つことにコンプレックスを抱いているヒロインのスクールラブ、そのコンプレックスを乗り越えようと決意をする場面、その()()()()を演じる。


そして俺の演じ方はなりきること。

限りなく近づけるのではなく、自分がその人物になると思うこと。

憑依、と言ったところか。


だから俺は深く、深くその人物を考える。

境遇、生き方、考え方、全てを上塗りしていく。


そして......


「キャッ!!」


自分が後ろに倒れる。


今から演じる部分はヒロインがコンプレックスを乗り越える場面だが、恋のライバル、相手役と話して、その場面で乗り越えようと決意するのだが弱気になっているヒロインを自分と同じ土俵に立たせようと全力で話しているライバル役の女子に殴られた場面だ。


そしてここから全て女性の声で行う。

しかも男が出した女性に近付けた声では無い、本当に女性の声にしか聞こえない声だ。

俺は技能の一つとしてボイスチェンジを行うことが出来る。

なのでこのまま演じる。


「どう............して............」


「違う、違うの......分かってるの......分かってるのに動けないのよ......」


ここまでは弱気に話している。詰められるように喋られているが彼女は言ってきたのだ。

「そんな様子で彼の隣に立つつもりでいるの?彼にただ恥をかかせようとしているようにしか思えないわ」


「ッ!どうしてそんなこと言うの!貴方に何が分かるって言うのよ!今まで散々!散々!周りに虐められていて!誰も助けてくれなかった!見て見ぬふりをされていた!それでどうすれば自信がつくというの!あの人の隣に立っていられるというの!」


溢れ出した今までの激情を彼女へとぶつける。

今まで耐えに耐えてきていたのだ、それをそんな風に言われて耐えられるわけがなかった。

だが彼女は至って冷静に

「それよ、自信をつければいいのよ、耐えているだけじゃダメなのよ、周りに認められる、呆れられるほどの努力をすればいいのよ」

そして身をひるがして立ち去って行く。

そして小さい声で言うのだ。

「やるかやらないかは貴方次第よ、私は貴方と正々堂々と勝負したいけどね」

そう言って去っていった。


「私は......私は......」


どうすればいいの?出来るならもうしてるよ!

なんで......どうして......

分かんない分かんない分かんない分かんない分かんない分かんない分かんない分かんない分かんない............

だが、ずっとずっと考えていた時ふと思い出した。


「とても、とても綺麗だよ」

そう彼が笑顔で私に言ってきたことを。


努力すればもっと綺麗になれるかもしれない。

彼が笑ってくれるかもしれない、隣にいれるかもしれない。


今にして思えば出来るならやってる、やれるわけがない。

そう決めつけていた。

後悔するかもしれないのに。

なら、ならばだ。

やらずに後悔するのならやって後悔してやろうじゃないか。


胸ポケットにしまっていたピンを取り出す。

親友がもっと先を見通したくなったら使えとくれた。

大事なピンを。

それで前髪を上げる。

今まで隠していたその目をあらわにして、初めて顔全体がわかるようにした。

そして、前を向き歩き始め............


パァァン!!!


いきなり手を打ち鳴らす音が聞こえた。


そこでやっと俺は、不知火暁斗は戻ってきた。

少し酸素が足りないように感じ深呼吸する。


そして、手を打ち鳴らした弥生氏は獰猛な笑みを俺へと向けてくる。


へ?なんで?


「一体............」

「なん............」


隣では俺に突っかかってきた二人が驚きの表情を俺へと向けている。


「小僧、聞きたいことがある」


そう弥生氏は言ってきた。


「はい、なんでしょう」

「まず、さっきの声はどこから出した」

「俺からですけど」

「女性の声だったと思うが?」


先程から何を言っているのだろうか。


「俺の特技の一つです、ボイスチェンジですよ」


昔から練習していたら出来るようになったのだ。

今となってはいろんな人物、性別は問わず誰でも真似することができるようになった。


「では、演じ方だ、お前、さっき俺が手を叩かなかったら戻ってこれたのか?」


「戻って?」


隣では花澤さん?が首を傾げている。


が、俺には質問の意味が分かった。


「戻ってこれましたよ、深く潜るつもりでしたが戻って来れないとオーディションが止まってしまうので浅くしましたから」

「............クックックッ、フーハッハッハッ!!」


!!!??

なんか弥生氏が爆笑し始めたのだが......

どうして......


「ククク、あれで浅く?本気ではないと?」

「はい、限界まで深く潜ると気絶でもしないと帰って来れませんし」

「そうか、そうか」


肩を震わせながらそう言ってくる。

そして花澤さんの方を見ると


「お前がバカにしていたこの小僧を見てどう思った」

「............正直分かりません、次元が違います、男で女子を演じていたというのに女子にしか見えなかったんです」

「そうだ、お前とは次元が違う、それがお前が見た目だけで判断したこいつだ」


そこまで言うと花澤さんは唇を噛んで下を見る。


「いいことを教えてやる、お前は自分だけではない、他の人をちゃんと見ろ、以上だ。8番、9番は不合格だ、出口はそっちな。」


そして弥生氏は先程俺が思った他人を見ろというアドバイスをしたいと思ったことをまんま言って結果を伝えた。


花澤さんは俯きながらも先程のアドバイスを噛み締めているようで目に炎が宿っているような気がし、そのまま部屋を出ていった、あと、もう一人の人も(名前は忘れた)


とまぁ、そこは置いとき。


「なんで俺はこのままなんですか?」

「お前、それ素の口調じゃねぇな?素でいいしタメ口でいいぞ、これから長い付き合いになるからな」


いきなりどうして?

というか

長い付き合い?


「お前意味わかってないのか?鈍いな」

「鈍くねぇよ」

「鈍いわ、ハァ」


ため息をついてから少しためると


「合格だ、10番は合格、これからよろしく頼むぞ、不知火暁斗」


ニヤリとこちらを見てきた。


ブックマークとか評価をしていただけると作者が嬉しくなるのでよろしくお願いします!


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