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11話


「えーと、文月さん......だっけ?」

「はい!昨日はありがとうございました!あの後震えも止まって自信を持って歌えました!」

「そうか、それでここにいるってことは?」

「合格しました!昨日信じてるって言って貰えましたからね!」


そういえばそんなことを言ったっけか。

まぁ俺は、努力が実らないってのは嫌いだからな。

見てわかるほどの努力をしている人を信じられないなんてその心情を無視してるようなものだしな。


「まぁ、文月さんが努力しているのは見てわかっていましたし、信じるのは当たり前ですよ」

「ふふっ、私もあなたがここに入れると信じていましたよ。ところでお名前を聞いてもよろしいですか?」


あー、そういえば昨日名前を言ってなかったんだっけ?


「不知火暁斗、同じ事務所だから会うこともあるだろうし、よろしくお願いします」

「不知火くんか、よろしくね、あと敬語じゃなくていいよ?たぶん年齢も近いだろうし」

「んー、分かった、よろしく」


文月さんと別れてから出口の方へと向かっていると前から猛スピードで走ってくる女子がいた。


って、ここの通路狭いからそのまま走ってくると避けれないぞ!?


どうやらその少女はまったくこちらにきづいていないようなのでどうしようもない。


しょうがねぇ、受け止めるしかねぇか。


走ってくる女子を受け止めるため少し腰を落とすと


ドスッッ


「グハッ......」

「痛っ!......って」


頭が胸あたりに来るかなぁって思っていたら思った以上に体を下に下げていた?ようで頭が鳩尾にクリーンヒットしたのだ。

受け止めるために腰を少し落としたのが失敗したようだ。


「すみません!すみません!私としたことが、急いでいたもので!あの、怪我は無いですか!!?」

「あはは、大丈夫で......す......よ............」


本当は痛いけどあまり気にさせないように強がっていたのだが暁斗は困惑と驚きに包まれた。


「心音?」


目の前にいるのは約10年前に別れた幼なじみに似ているのだ。


「どうして私の名前......を......」


やっぱり心音だ......やっと......やっと会えた......


「暁斗?」

「久しぶりだな、ここちゃん」


泣いているような笑っているような自分の表情が分からないけど、久しぶりに会えた幼なじみに呼びかける。


「あ、アキちゃん......アキちゃんなの?」


もう心音、ここちゃんは涙が溢れそうなほど貯めながら問いかけてきた。


「あぁ、そうだ、そうだぞ、本当に、本当に久し............ッ」


その後は言葉を続けることが出来なかった。

というのも、ここちゃんが俺に抱きついてきたからだ。


「アギぢゃぁぁん!あいだがったよぉ!」

「俺も、俺もずっと会いたかったよ」


落ち着くようにと俺からも抱きついて頭を撫でる。

大丈夫だと、俺はここにいるよと分かるように優しく撫でる。


どのくらい泣いていただろうか。

ここちゃんも落ち着いてきたようで力を抜いたので俺も手を止める......が、周りに人がかなり集まっていることに気がついた。


「あれは、確か唯一の男優?」

「あれって最近話題の白雪さんだよね?」

「え、どういう関係なの?」


や、ヤバい、なんか注目集めてるんだけど......


「あっ、そういえばここちゃんなんか急ぎの用事があったんじゃ」

「へ?........................あぁ!なんか呼ばれてるんだった!!!ちょっ!えーっと!」


行かなきゃいけないんだろうけどこのまま別れるのはちょっと嫌だな......


あ、そうだ。


「ここちゃん携帯一瞬貸して」

「へ?うん」


ロックを外してもらって一瞬借りる。

トークアプリで登録してっと。


「はい、俺の連絡先入れといた、後で連絡出来るから」

「ほんと!?ありがとう!ちょっと行ってくるね!」


また走り出そうとしてたので次はぶつからないようにしなさいと注意してから見送った。

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