表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/251

28・2強まる呵責

「この方たちはジュディットと親しくならないのかしら」

 手の中のリストを見ながら尋ねる。

 だけど口にしてから気がついた。主人公がデビューしてまだ二週間だ。まだ親しくなる機会はないだろう。

 というより出会ってない可能性の方が高いかもしれない。



「わからないけれど……」

 ルクレツィアは表情を陰らせた。

「先ほども言ったとおり、男の人とばかり話すようなの。彼女から令嬢の輪に加わることはないって、お姉さまが話していたわ。そういうゲームの主人公だから、仕方ないのかもしれないけれど。彼女とちゃんと会話したことがある同性は、まだお姉さまだけみたい」


 その時、すっかり忘れていたことを思い出した。

「彼女は、良い政略結婚をするために養女に迎え入れられたと聞いたわ」

「そうなの?」

「男の人たちはみんな知っているという話だったけれど、どうなのかしら」

「どなたから聞いたの?」

 一瞬だけ言葉に詰まった。ルクレツィアと約束をした三ない運動が頭を過る。だけど疚しいことはなにもない。

「公爵よ。主人公のドレスにワインをかけてしまった時に、少しだけ二人で話したの」


 ルクレツィアは黙っている。

「ルクレツィア?」

「アンヌローザ」とても真剣な表情だ。

「なあに?」

「彼を好きにならない? 大丈夫?」

「大丈夫よ」予期せぬ質問に驚きすぎて、彼女を安心させようと口がすべる。「リヒターがいるもの」


 はっとして口に手をやる。私は彼女の兄と婚約をしている。


「……その人と何か進展が?」

 すごく不安そうなルクレツィア。

「ないわ。変わらず私の片思いよ。ごめんなさい、無神経なことを言ったわ」

「いいえ。好きになるのは止められないもの。でも忘れないで。お兄さまも素敵な人よ」

「わかっているわ」


 悲しそうな親友の顔に胸が痛む。

 これをいつまで続けるのだろう。いつかリヒターを好きな気持ちがなくなるまで?

 やっぱり逃げ出してしまいたい。


「一度会ってみたいわ」とルクレツィア。「そんなにあなたが好きなのですもの。きっと良いところがある人なのよね」

「シンシアにも同じことを言われたの。だけどリヒターは嫌だと言うの。これ以上、ご令嬢に関わりたくないって」

 ルクレツィアが実際に会ったら、もっと反対するのではないだろうか。リヒターの良さはきっとすぐにはわからない。

「残念だわ」

「ごめんなさい」


 なんとなく話が止まり、お互いに菓子を口に運ぶ。

 と、開け放した扉からシャノンが顔を出した。

「クラウディア様がご一緒したいそうですが、よろしいでしょうか」


 私たちの間にほっとした空気が流れる。

 ルクレツィアがうなずいて、クラウディアが室内に入ってきた。それだけで部屋に活気が満ちる気がする。


「可愛いアンヌローザ! 元気になって良かったわ!」

 彼女の笑顔にまた良心が痛んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ