表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/251

23・6味方がほしい

「それで主人公はクラウスを選んだの? アンヌは見ていたの?」

 まだほんのりと赤い顔で尋ねるルクレツィア。私はええ、とうなずいた。

「ごめんなさい、ルクレツィア。私、立派な悪役令嬢になってしまったわ」

「ええっ!?」


 私は席を立った後のできごとを、覚えている限り詳細に話した。

 終わるとルクレツィアは顔を青ざめさせて呆然としていた。


「ごめんなさい」とルクレツィア。

「何が?」

「だって」ルクレツィアの目に涙が浮かぶ。「三人のルートが始まるフラグを折ればなんて言い出したの、私ですもの。あんなことを言わなければ……」

 彼女は泣き出した。

 私は立ち上がると彼女の隣に座りなおし、その両手を包み込む。

「ルクレツィアのせいじゃないわ」

 しばらく泣きじゃくる彼女を懸命に宥めた。


 クラウスルートだと、ルクレツィアだって悪役令嬢になる予定だ。もっと根本的な対策を立てなければならない。

 彼女が落ちつくのを待ってから、そのことを口にした。


「私、悪役令嬢になりたくないわ。だけど」とルクレツィア。「ジョナサンの危険が回避できて良かった」

 後半部分はほとんど聞こえないような声量だった。

「そうね、私もそう思うわ。後はあなたが素直にその気持ちを彼に伝えられたら、悪役令嬢にならなくて済むかもしれないわよ」

「それができるのなら、こんなに苦労していないわ!」

「あら、本当」

 二人で声を出して笑い合う。


「とにかく、クラウスルートについてシンシアに聞いてみましょう。詳しいと言っていたわ」

 以前手紙で、ルクレツィアと私がどんな結末を迎えるかは教えてもらった。

 今日の様子を明日手紙で伝える約束をしているから、ゲームで実際に私達が仕出かすことを知りたいと頼んでみよう。


「ねえ、ルクレツィア。私はあなたしか友達がいないわ」

「私もアンヌローザしかいないわ」

「ずっとルクレツィアがいればいいと思ってきたけれど、いつまでもそれではいけないかなと思うの」

 どうして?と尋ねるルクレツィアは悲しそうな顔をした。

「味方になってくれる人が他にもいたほうが絶対にいいわ」


 それは理由の半分。


「……そうね。私達の味方になってくれるのは、お姉さまとお兄さまぐらいだわ」

「嫌な人たちと仲良くする必要はないけれど、探せばきっと気の合う人がいると思うの」

「ええ。派手に動くとまずいでしょうから、静かに探しましょう」


 ルクレツィアが賛成してくれたことに胸を撫で下ろす。

 理由の残りの半分は、私が修道院に逃げてもルクレツィアが一人ぼっちにならないため。

 クリズウィッドと一緒にいることに、いつか慣れる日が来ると考えもしたけれど、無理な気がしてきたのだ。


 ごめんねルクレツィア、と心の中で謝った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ