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23・3出会いの選択肢

 今からだと下手に動くと、悪役令嬢としての振る舞いになってしまうかもしれない。どうするのがベストだろうか。


 と。目の前をジョナサンと女の子たちが通りかかった。


「ジョナサン!!」

 呼び止めようとして思いの外大きな声が出て、自分もジョナサンもぎょっとした。だけどすぐに気持ちを立て直して、立ち上がる。

「私、ここを離れなくてはならないの。ルクレツィアの相手をしていて下さらないかしら」


 可愛い女の子が大好きなジョナサン。その彼が一瞬戸惑いを見せた。やっぱりルクレツィアの心証が良くないのだろうか。散々ツンばかりでデレがないものね。

 だけれど彼はわかったとうなずいた。

「ありがとう! いい男ね!」

 思わず過剰に褒めて、彼の腕を叩いた。おばさんみたいだったかも。


 振り返るとルクレツィアは顔を強ばらせ、うつむいている。急なことに、きっと心臓が爆発しそうになっているのだろう。だけどこれでジョナサンルートを阻止出来るかもしれない。

 確か主人公が一息つくためにバルコニーに出ると、ジョナサンに出会う。


「最近の彼女、ちょっと人見知りなの」

 とジョナサンに囁く。そんなことあるかい、と自分で突っ込みを入れたくなるようなアホな設定だ。だけどこれで押しきるほかない。

「ちゃんと話は聞いているから、よろしくね」

 そう言い残して、その場を離れた。


 成り行きで席を立ってしまった。こうなったら、三人との出会いのフラグを折ることにしよう。

 主人公には申し訳ないけど、他の素敵な青年と出会ってもらおう。……そんなのがいればだけど。いたかな?

 まあ、まずは自分の未来を守らなきゃ。


 誰を最初に確保すればいいだろう。

 ルクレツィアと私、二人のためにはクラウスだけど、彼の場合は取り巻きも怖い。

 クリズウィッドは、追ってきたと勘違いされたら辛い。

 ここはウェルナーだな。彼を確保してからあとの二人を回収すればいいのじゃないかな。


 よし。


 ……いや。

 主人公がウェルナーと出会うのは、一息つかずにゴトレーシュ伯爵と離れないでいる、を選択した場合だ。広間のどこで出会うのか検討もつかない!


 彼は背が高いから、他の人たちより目立つはずだ。立っていてくれればだけれど。

 キョロキョロしながら探し歩く。


「何をしている?」

 背後からかけられた声に、嫌な気持ちになりながらも振り返る。予想通り、そこにいたのはクラウスだった。それと取り巻きたち。

 私、あなたに言ったよね? あなたの取り巻きたちが怖い、巻き込まれたくないって。なんでその状況で声をかけてくるのかなあ。


「ヒンデミット男爵をお見かけになりませんでしたか?」

 冷たく言ってやる。

「いや。だが私も用がある。一緒に探そう」

「え」

 つい不機嫌な声が出てしまい、クラウスも気づいたようだ。

 だって取り巻き連の顔が怖いんだもん! 私、リンチされそうだよ。


 彼は女性陣を見渡して、またあとで、と言った。


 その対応は違うよ! 止めてよ!

 と心の中で叫ぶ。だけれど本人は毛ほども気づいていない。


「ウェルナーに何の用だ?」

 あ。そこまで考えていなかった。

「……というか」然り気無く話をすり替える。「言いましたよね? あなたの取り巻きたちの争いに巻き込まれたくないって。あんな状況で声をかけないでくれませんか?」

「また敬語になっている」

「怒ってますから」

「悪かった。クリズウィッドと何かあってあの場を離れてきたのかと思った」

 足を止め、彼を見上げた。


 この人はそんなに悪い人じゃない。私が婚約者に苦手意識を持っていると知っているからだろう。バカンス以降、気まずくならないように然り気無くフォローしてくれている。しかも親友をしっかりと立てながらだ。

「……何もないわ。殿下はシュタルクの大使に呼ばれて行きました」

 そうだったかとうなずくクラウス。


 ……悪い人じゃないけれど。

 そういえば主人公と彼との出会いはそれこそ、定番の『飲み物ぶっかけ』だ!


 顔から血の気が引く。

 最初の選択肢で一息つくために飲み物を飲むを選ぶと、飲んでいる最中にぶつかってきた女性にワインをかけられてしまう。それがクラウスの連れの女性で、彼が謝り……という展開だ。


 その女性は私じゃないけど。私は手にグラスは持っていないけど。大丈夫かな、このシチュエーション。


「どうかしたか? 急に顔色が悪いようだが」

「えっと……大丈夫よ。早く男爵を見つけましょう」

 探すのは彼に任せて、私は周囲を警戒することにしよう。主人公を見つけたら、素早く待避!

 いや、クラウスから離れたほうが安全だ。別々に探そうと提案しよう。


 一歩前を行く彼に声をかけようとして、一瞬注意が疎かになった。

 どしん、と誰かとぶつかる。人の影になって、その向こうにいた人物が見えていなかったのだ。

 恐る恐る見ると、私がぶつかったのは主人公ジュディットその人だった。彼女の手には空のグラス。ドレスはワインまみれ。


 やってしまった……。


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