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23・2主人公のデビュー

 この舞踏会でジュディットがどんな行動をとるかによって、最初に出会う攻略対象が違う。果たして彼女はどうするだろう。

 今のところ対象のうち三人がここにいる。ジョナサンは先ほどいつもどおり両脇に女の子を侍らせて広間を闊歩していた。ルパートは見かけていないけれど父親の方は、私が広間へ来たときにはジョナサンの父親と談笑していた。


 というかクラウスは取り巻きたちとどこかに行かないのかな。彼女たちの視線が痛い。先ほど何人かがやって来て彼を連れて行こうとしたのだけど、彼は話の途中だからと断っていた。今日は大事なゲーム初日だから、ルクレツィアと私から離れていてほしいのだけどな。


 ついでにクリズウィッドも。声が惜しいけれど、ウェルナーも。

 ほんとこういう時に友達がいないのは厳しい。いれば然り気無くその子のところに避難できるのに。


 ずっとルクレツィアとクラウディアがいてくれればいいやと思っていたけれど。もう少し友達がほしいかも。シンシアとは結構気が合う。だけど彼女は社交界に出たくないという。


「何かしらあの髪は」


 そんな声にルクレツィアと私ははっとして顔を見合わせた。


「結っていないなんて、礼儀知らずもいいところだわ」

「さすが庶民ね」

「幾らドレスを着たってダメよ」


 そんなことを言い合うご婦人たちの向こうを、うつ向いたジュディットとゴトレーシュ伯爵らしき人が通り過ぎて行った。国王に挨拶しに行くのだろう。


 だけどゲームで髪型は批判されてたのかな? 私は覚えがない。今度シンシアに尋ねてみよう。


「伯爵があの髪を許可しているのよね」とクラウディアが言った。

 そうか。いくらジュディットがマナー知らずだとしても、ゴトレーシュは分かるはずだ。

「何かしらの理由があるのよ」

 クラウディアは急に大きな声で言った。


 先ほど批判をしていたご婦人方が振り返った。にっこりと微笑むクラウディア。

 かっこいい。

「素敵だわ、クラウディア」

「知ってるわ!」

 私の感嘆をさらりと受け取ると彼女は立ち上がった。

「さて、飽きちゃったから他に行こうかしら。クラウスもどう?」

「いや、結構」


 行け!と心の中で突っ込み、思わずルクレツィアを見ると目が合った。きっと同じことを思ったに違いない。お互いに苦笑する。


 それからしばらくは、時々誰かが加わりながらも大方五人で話しに興じた。

 いつまでも三人がここにいたらゲームが始まらないのじゃないだろうかと心配になり始めたころ、ついにクラウスが取り巻きたちと離脱、続いてウェルナーも女性にダンスを誘われて(!)離脱、最後までしつこく(失礼!)残っていたクリズウィッドもシュタルクの大使が探していると言われて離脱した。


「みんないなくなったわね」と私。「どうなるかしら」

「もし引き留めていたら、三人のルートは始まらなかったかしら?」

 ルクレツィアの言葉に虚を突かれた。

「そうね。その可能性もあったかもしれないわ」

「自分たちが悪役令嬢にならない対策ばかり考えていたわ。主人公には申し訳ないけれど、最初のフラグを折っておけば話は簡単だったのじゃないかしら」

 私たちは顔を見合わせた。

「今からじゃ遅いわよね」


お読み下さりありがとうございます。



☆お礼☆

日間ランキングの異世界恋愛ジャンルに、こちらの作品もランクインしていました。


連載初期から読んで下さっている方、

新たにお目に止めて下さった方、

どちらの皆様にも大変感謝しております。


拙い作品ですが、少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです。

本当にありがとうございます。


2019,6,20 新


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