表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/251

20・2手

 私はちょっとだけクラウスを睨んだ。見てよ、ルクレツィアを。心の準備があるのよ!という意味を込めて。確実に目が合ったのに、奴は素知らぬ顔をして親友を見た。


「クラウディアに頼まれた。四人で湖に来てほしい、と」

「どうしてだ?」

 と何も気づかない様子のクリズウィッド。しばらくクラウスの顔を見ていたけれど、返事はない。私を見る。違う! 妹を見て!

「君は……知っていたのか?」

 うなずく。クリズウィッドは再び友人を見る。

「……クラウディアがお前とボートに乗るために?」

 違うと苦笑するクラウス。

 仕方ない。彼に言わせるのはルクレツィアがかわいそうだ。


「ルクレツィアのためにクラウディアが考えたの」

 私の言葉を聞いてもまだ理解できていない様子のクリズウィッド。鈍いのか!

「彼女はジョナサンと親しくなりたいのよ」

 ルクレツィアはますます赤くなってうつ向いた。

 クリズウィッドは瞬いて。それから。

「え!? あんな馬鹿と!?」

 と叫んだ。途端にゴスッと変な音がして、クリズウィッドがよろけテーブルがガタリと動いた。隣りの友人に顔を向けるクリズウィッド。クラウスはやや眉を寄せて渋面だ。


 まさかクラウスが蹴ったの? テーブルの下で? 優雅の権化みたいなくせに?

 意外とやるなあ。


「いや、すまない」

 失言に気づいたクリズウィッドは妹に素直に謝った。

「そうか。そうだったのか」

 うん、と一人でうなずいている。かなり驚いているのだろう。ジョナサンから家名と顔を取ると、良いところを見つけるのは難しい。


「兄として力を貸すべきだろう」とクラウス。

「まあ、そういうことなら仕方ない」とクリズウィッド。


 ……ということは、クラウスはルクレツィアと結婚する考えはないのかな。良かった!

 クラウディアだったら幾らでも差し上げるからね!


「このバカンスが良い機会だと思うの」

 私はクリズウィッドに提案をする。

「お互いに決まった相手はいないし、時間もイベントもたっぷりあるでしょう」

「そうだね」

 と笑顔を向けてきたクリズウィッド。テーブルの上の私の手に自分のそれを重ねた。思わず引っ込めそうになったけれど、がっしりと握られてしまった。

「ルクレツィアのために、ありがとう」


「……親友ですもの」

 答える顔がひきつっている気がする。


 手なんてたいしたことはないけれど。

 ダンスや挨拶では触れていた。

 クリズウィッドは嫌いじゃない、むしろ好感度は悪くないけれど。

 でも。

 これはちがう気がする。





 やっぱりダメだよ、リヒター。

 例えすっぱりフラれても、気持ちを切り替えて結婚なんて、私には出来そうにないよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ