20・1暴露
ルクレツィアと私は悪役令嬢になりたくない。絶対に回避しようとあれこれ考えていた。それなのに、どうしてこの可能性を考えなかったのだろう。
リヒターの話で、ユリウス国王と父はクラウスがクリズウィッド側に付くことを懸念している、というものがあった。
だから私たちは二人の友人関係が本物なのか、クラウスに裏があるのではないか、と心配をした。
でももう一つ、もっと心配すべきことがあった!
もしクラウスに父たちが懸念している意図があるなら、彼はルクレツィアかクラウディアと結婚しようとするはずだ。それが一番手っ取り早いじゃないか。
ゲームにそんな展開はないはずだけど、あり得ないとは言いきれない。だって私の結婚だって、ゲーム上ではあり得ない、十月予定だもの。
ルクレツィアの部屋前の庭で二人、円卓で向かいあって遅い朝食を取りながらその話をすると、彼女は顔色を変えた。
「それは気づかなかったわ」
「そうなったらクラウディアが名乗りあげてくれるだろうけど……」
いいえ、とルクレツィア。
「お姉さまは二度と結婚はしたくないそうよ。公爵も、あくまで恋人の一人にしてほしいだけみたい。……もう、夫の死であれこれ言われたくないって」
「そう……」
あんなに気のいい人なのに。誰だ、彼女に二度も酷い結婚をさせたのは。
「でもクラウディアはあなたの味方だわ。万が一そんな話が出たら助けてくれるのじゃないかしら。あなたの恋を応援してくれているのだし」
「……そうね。……でも不安だわ。彼にその気がないといいけれど」
「一応昨日はルクレツィアに協力すると言ってくれていたけれど」
どうにもあの男は一筋縄ではいかなそうで、心配だ。
と、こちらにやって来るクリズウィッドの姿が目に入る。ルクレツィアに注意を促す。
どうしていつもいつも、作戦会議中に現れるのだろう。何か勘が働いているのだろうか。
しかもクラウスも一緒だ。
二人は私たちの元へ、いかにも偶然見つけたといった様子でやってきて、席についた。
……やっぱりクリズウィッドは私の隣。その向こうにクラウス。円卓に四人だけれど、なぜかそれぞれ向かい合わせにならないよう、微妙にずれた配置だ。ルクレツィアは先ほどの話が気になっているのか、固い表情だ。
これはもう、クリズウィッドにルクレツィアの恋心を知らせておいた方が良いのではないだろうか。それを知れば、クリズウィッドなら、妹を無理に結婚させようとはしないはずだ。
ルクレツィアにアイコンタクトを送る。彼女は意味を正しく理解したのか、赤らめた顔を小さく横に振った。
だけどクラウスが知っていて兄のクリズウィッドが知らないのも、なんだか気の毒だ。
「昨日のボートについて、打ち明けないのか?」
突如クラウスが爆弾を投げ込んで来た。見ると涼しい顔をしている。私たちのやり取りを彼も理解したの? 察しが良すぎじゃない?
ルクレツィアは再び固い表情になり、クリズウィッドは
「何のことだ?」
と眉を寄せた。




