表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/251

19・1対ジョナサン

 後日、ボート遊びのときにクラウスは、涼しい顔をしてご婦人ご令嬢を順番に乗せていた。私はもちろん素知らぬふり。

 一方で私はやっぱりクリズウィッドと二人きりでのボートだった。


 確実に例年のバカンスと違う。隣にルクレツィアではなくてクリズウィッドがいる時の方が多い。まるで、もう夫婦のようだ。


 今まで友人を作らなかったツケが来てしまった。クリズウィッドと距離をとろうにも、逃げ場所が家族しかない。ルクレツィアもクラウディアも兄の味方だ。家族は一時的な避難場所にはなるけれど、私の気持ちを考える気はない。リリーは味方だけど、あまり匿うなと母から叱られているようだ。

 八方塞がり。


 唯一の味方がブルーノとラルフで、仕事のないときにこっそり息抜きに付き合ってもらっている。

 ちなみにあの早朝にブルーノが来なかったのは、ユリウスの近侍につかまってしまい愚痴を聞かされていたのだそうだ。


 二人はいつの間にか、クラウスのただの『従者』から『護衛』扱いに変わっていた。ユリウスより許しが出て、特別に帯剣を許されたそうだ。彼らはどこから調達したのか、灰色の指しか出ない袖の服を着ていて、その手を見るたびにルカ僧を思い出してしまう。


 元修道騎士たちは時おり、近衛に混じって剣の手合わせをしている。たまに見学をしているのだけど、正直なところ、あまり実戦のない近衛より余程腕がある。ジョナサンなんてまるで歯が立たない。

 もっともジョナサンも、予想していたよりはずっとまともな腕前だった。どちらかと言えば、上手い方かもしれない。意外なことに。


 第八近衛師団の兵にこっそりそう言ったら苦笑された。彼も仕事は真面目にやってますよ、と。

 私ってば、ちょっと彼をバカにしすぎていたのかもしれない。反省。


 そうそう、アレンは都で留守番だそうだ。ブルーノの話では、彼も同行予定だったのだけど、シンシアがこの世の終わりかというような顔をしたから、クラウスが諦めたのだって。どうやら彼女の恋は兄にバレバレらしい。



 ◇◇



 クラウディアと私はバカンス中にルクレツィアとジョナサンを、くっつけよう作戦を敢行中。だけど、うまくいかない。

 可愛い女の子が大好きなジョナサンは、離宮に来ようがブレはない。常に女の子を口説いている。


 当然ルクレツィアはおもしろくないし、素直にもなれない。

 バカンス中はイベントがたくさんあるから、良い機会なんだけど。


 ボート遊びのときも然り気無くジョナサンの近くでお喋りしたりしている。

 うまく誘われたこともあるのだけど、ルクレツィアは冷たく断ってしまった。後になって自己嫌悪に陥っている彼女を見ると、気の毒になってしまう。


 どうすればいいのだろう。



 ◇◇



 とある午後。近衛に加わって剣の鍛練をしているラルフを見学しながら、クラウディアと秘密の会議。他に人の姿がないからちょうど良い。ルクレツィアは疲れたからとお昼寝中だ。


 二人でどうしたものかと言い合っていると突然背後から

「何が?」

 と声をかけられ飛び上がった。振り返るとクラウスとブルーノが立っていた。

 剣のかち合う音のせいで、人の気配に気づかなかった。ちょうど良いとの考えは大間違い、秘密会議には向かない場所だったようだ。


 クラウディアはクラウスを見ると途端に笑みを浮かべた。ちっとも相手にされないと嘆いているけれど、まだまだ諦める気はないらしい。

 そのまま彼を引き留めてくれ。私は然り気無く立ち去る!


 だけれど。

「あら、いいことを思い付いた」とクラウディア。「あなたを利用させてもらいましょう」

 彼女はそう言ってにっこりと笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ