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18・3距離

 離宮でも東西の棟とそこに住まう人物の関係は王宮と同じだ。更に父や軍務大臣などの家族は東棟。順列が下がるに従って西棟へ。

 そして西棟にはクラウスも招待されている。誰もが予想外のことだった。リリー情報によると、先代国王の重鎮だった家の人間をユリウスが招待するのは初めてらしい。

 名目は国王の甥だから、らしい。父は苦い顔をしているけれど、ユリウス国王はわりとフランクに会話をしているようだ。一説には大嫌いだった義兄(そっくりの甥)が、臣下になって自分を敬っていることに優越感を抱いているからだという。


 離宮のほど近くには迎賓館という名目の王家が所有するホテルがあり、そちらにも貴族やら上流階級やらがごっそり泊まっている。

 ほとんど都から社交界がスライドしてきたようなものだ。


 ちなみにウェルナーは都に残っている。あの素敵ボイスを聞けないのは残念だけど、仕方ない。



 ◇◇



 離宮に到着したのは、陽がまだ高い時刻で、暇をもて余した貴族たちは離宮の建物と庭を使った宝探しゲームをすることになった。

 毎年やる催しで、クジで男女ペアになってお題の宝物を探すのだけど、要するに男女でいちゃいちゃすることを目的とした遊びだ。

 ルクレツィアと私はやったことがない。


 が、今回図らずも参加となってしまった。

 到着した日にやるとは思わず、知らずにクジを引いてしまったのだ。クジの交換は禁止で、仕方ないツンケン態度で参加するしかないか、と二人で覚悟を決めた。


 うんざり気分で私の相手は、と探したらなんとクラウスだった。背中を冷や汗が流れ落ちる。取り巻き連中の視線が怖すぎるのだ。まだゲームは始まっていないけれど、今すぐ転落人生が始まってしまいそうだ。

 そこへクリズウィッドがやってきて、さらりとクラウスの持つクジと自分のクジを交換した。それは禁止ですよ、と誰も言わない。


 助かったような。余計にまずいような。

 どっちが相手でも困る。


 固まっている私にクリズウィッドはにこりと微笑んで、行こうかと言いながら、腰に手を回してきた。

 思わず飛び退く。


「……ええと」

 踊るときにそうされたことは、もちろんあるけれど。普段では初めてだった。

「あの、それは、ちょっと……」

 嫌だという言葉はキツすぎるだろうかと迷う。

「も、もう少し、大人になってから」


 ぷっとクリズウィッドは笑い、

「ではお手をどうぞ」

 と腕を出す。ほっとして手を添えた。


 間違いなく、クリズウィッドに距離を詰められている。

 このバカンス、無事に終わるか心配になってきた……。


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