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18・2バカンス

 ノイシュテルン王国の国王と議会は七月の第三週から一ヶ月半も休みになる。暑いからだ。

 その間、国王一家は北の離宮にバカンスに行く。

 そして各省庁もほぼ休み。貴族たちもこぞって王のバカンスについて行く。本来は領地に帰るべき期間らしいけどね。父や父一派の有力貴族は離宮に招待されるので、この一ヶ月はルクレツィアと朝から晩まで遊べる楽しい時期だ。


 だけど今年は……。

 まず、気が重い。クリズウィッドとも朝から晩まで一緒だ。今や私はすっかり彼の婚約者の立場に収まってしまっている。困ったことに気を抜くと侍従侍女さえいなくて正真正銘の二人きり、なんてこともある。

 婚前なのにおかしくない?と両親に訴えてみたけどスルーされた。兄夫婦はどうせ結婚するんだからいいじゃないかと無責任発言をして終わり。そういうものなのだろうか。


 そして、淋しい。一ヶ月もリヒターに会えない。

 週に一度しか会えないのだって淋しくて仕方ないのに。普段でも、私の護衛をしていないときは、恋人のような人といちゃいちゃしているのかな、と考えてしまって悲しくなる。きっと彼は恋人をどろどろに甘やかすタイプだ。だって私にだって、結局は甘いのだから。


 リヒターの方は、楽に稼げる仕事が長く休みになってしまうことを残念がっている。そこで週一で孤児院にパンを届ける仕事をお願いした。料金はなんと護衛料と一緒。すごく喜んでもらえた。よかった。

 リリーには、貢ぎすぎだと叱られたけれど。




 ◇◇




 都から馬車で数日をかけて北の離宮へ。私は毎年ルクレツィアたち三兄妹の馬車にお邪魔しての旅だ。だけど今回はちょっと違った。

 今まではルクレツィアと私が並んで座り、向かいにクリズウィッドと(いれば)クラウディアだった。それが今回は当然のように私の隣はクリズウィッドだった。


 やんわりとルクレツィアの隣がいいと訴えたのだけど、笑ってかわされた。

 じわじわと外堀を埋められている。

 ルクレツィアは完全に、私が兄の妻になる人としてふるまっている。それが私の一番の幸せだと信じているみたいだ。

 彼女のことは大好きだけどし、ずっと友達でいたい。

 だけど修道院に駆け込むことも考えてしまう。


 ちなみに両親に結婚したくないと力説はした。予想通りに、一蹴されて終わりだった。


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