表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/251

18・1夏

 今年の春は怒濤の急展開だった。二番目の攻略対策が現れたのを皮切りに、ルクレツィアも転生者と判明。三番目とも親しくなり、父の犯した罪を知った。そして挙式が予定よりかなり前倒しの日程で決まった。

 だけれど藤の花が盛りを過ぎた頃には、落ち着きを取り戻し、穏やかな日々になった。

 嵐の前の静けさ、というやつだろうか。




 クラウスはルクレツィアと私に疎まれているのを知りながら、厚顔にも友人のように振る舞っている。なかなか図太い神経の持ち主らしい。

 彼をなんとか貶めたい父一派は、あれこれ企みを仕掛けているようだけれども、無事にやり過ごしているようだ。


 それからウェルナー。私がついつい親交を深めてしまい、ルクレツィアに心配をかけてしまっている。だってあの素敵ボイスには抗えない。

 彼は先週、軍務省に異動になった。相変わらずヒラ官僚だけれど、以前よりは重要部署らしい。


 どうも近頃は、陛下と父がうまくいってないようだ。そのため陛下は父の対抗馬としての活躍をクラウスに期待し、彼の友人や取り巻きにも甘い態度をしているそうだ。


 おかげでうちの中は常に苛立ちモードだし、父一派が集まっては耳を防ぎたくなるような罵詈雑言が飛び交っている。


 四番目の攻略対象のジョナサンは、政局の潮目に変化があることに気づいていないのか、取り合う必要がないと考えているのか、太平楽なものだ。何も変わらず女の子に片端から声をかけ侍らし、軟派な生活を送っている。


 そんなものだからルクレツィアも素直になることができずに、彼に冷たい態度をとってばかり。どう見ても恋しているようには見えない。

 できればゲーム開始前に二人をくっつけたいのだけれど。なかなかに前途多難だ。


 五番目のルパートは、ルクレツィアも私も、とにかく避けまくっている。今のところまだ接点はない。

 お助けキャラのえっ君も、誰なのかは不明のままだ。


 シンシアとは頻繁に手紙のやり取りをしている。ゲームのことだけではなくて、この世界の色んなことについても話している。一度だけ、街のカフェでお茶をした。文通のおかげで話は弾んだ。


 結局彼女も『王宮の恋と野望』はそれほどやっていないそうだ。ただし、推しがクラウスだったので、彼についてだけは詳しいという。


 そして、クリズウィッド。挙式の準備は滞りなく進んでいる。気のせいか、彼といると以前よりも雰囲気が甘く距離が近い気がする。

 ルクレツィアは、結婚するのだからそんなものでしょうと笑っているけれど、私は申し訳なさで居心地が悪くて仕方ない。

 彼には本命はいないのかしらと彼女に尋ねたけれど、知らないとの答えだった。


 逃げ出したいよ。


 リヒターは、婚約解消の良案は浮かばないと言っている。

 だけど諦めて結婚しろとか、好きな奴とどうこうしろとかは言わなくなった。気を遣ってくれているらしい。


 ひとつ、わかったことがある。リヒターの恋人のような人は、私とは真逆のタイプらしい。

 孤児院からの帰りに時々バルに寄るのだけれど、ある時彼の知人に出くわした。

「おいおい、あんないい女がいるのに浮気か? まるで正反対のタイプじゃないか」

 と声をかけてきたのだ。リヒターは

「ちげえよ、お守りの仕事」

 と返事をした。


 ……私は偉かったと思う。よく泣かなかった。


お読み下さりありがとうございます。


お詫びです。

今頃になって名前のかぶりに気づきました。


クラウスとクラウディアの3文字

クラウスとユリウスの2文字


全く意味はありません。

迂闊ですみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ