11・1親友のあり方
ウェルナーを紹介されてから二日後。またまた王宮へ。
侍従の案内でルクレツィアの元へ向かう途中でばったりクラウディアに会った。
「ちょうど良かった!」
と言った彼女は、ちょっと来てと私を手近な部屋に引っ張りこんだ。侍従を廊下に残しバタンと扉を締め、窓の外も見て二人の他に誰もいないことを確認している。
一体何事だろう?
気が済んだ様子の彼女は私の元へ来ると真顔で尋ねた。
「ズバリ聞くわ。ジョナサンのことをどう思っているの?」
え? そんな質問のために念入りに人気のチェックをしていたの? 兄のためかな?
不思議になりながらも、ここは正直に答えて大丈夫だろうと判断をする。
「残念イケメン!」
その答えにクラウディアは深いため息をこぼした。
◇◇
侍従に通されたのは庭園だった。今日も例のパラソルの下でのお茶タイム。
「お待たせしてごめんなさい」
と言えばルクレツィアは可愛らしく微笑んで、
「おかげでシャノンとの会話が弾んだわ」
と答える。なんて素敵な親友なんだろう。
しばらくは無難な会話を楽しんで。
その後は予定どおりシャノンに下がってもらい、ウェルナーについての意見交換となった。
「アンヌローザ。恋しちゃったかしら?」と不安そうなルクレツィア。
「大丈夫よ」と私。「声があまりにどストライクでうっとりしちゃったけれど。それだけよ」
だって既に別の人に恋しちゃったからね。
自分でも驚くほど寝ても覚めてもリヒターのことばかりを考えてしまっている。
「そう。よかったわ。あまりに彼に見惚れていたから、てっきり心を持っていかれてしまったのだと思ったわ」
ほっとした表情のルクレツィア。
「そんなに? 私はだらしがない顔になっていたかしら?」
「なっていたわ」苦笑を浮かべるルクレツィア。「目なんてトロンとしてしまって、完全に恋に落ちてしまったお顔だったわよ」
まあ、声はリヒターより好みだものね。
……ってその他だって、元々の私の好みど真ん中だったっけ。
今のところのウェルナーはゲームどおりの印象で、下方にも上方にもブレてはいない。
「本当に大丈夫よ。推しキャラだったし、普通に素敵だとは思うけれどね。心配かけてごめんなさい」
「いいの」彼女は首を横に振った。「好きになったらいけない訳ではないもの。自分でコントロールできることではないのだから。ただその時は、あなたが悪役令嬢にならないよう、対策を練らないといけないでしょう?」
「ありがとう、ルクレツィア。あなたは最高の親友だわ」
それに比べて私はどうだろう。
居ずまいを正す。
「あのね、ルクレツィア」
「どうかなさったの? 改めて」
心苦しいことだけど、にこにこ顔の彼女に爆弾を落とさなければならない。
「このようなことを尋ねて怒らないでね」
驚きに目を瞬くルクレツィア。
「ジョナサンがお好きなの?」




