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7・3自失

「彼は昨秋に風邪を拗らせ、この世を去りました。ですから私とヤコブ僧は気持ちを入れ替えようと、公爵の護衛に名乗り上げたのです……あ、お嬢様!」


 マルコの腕に支えられる。

 めまいを起こしたらしい。クリズウィッドが私を抱えて、椅子に座らせた。

 マルコがしきりに謝っている。



 ルカ僧が。

 私たちを助け、私の心に安らぎが訪れるよう祈ってくれると言った、ルカ僧が。

 こんなにも呆気なく、この世界からいなくなってしまっていたなんて。


 ポケットの上からロザリオを押さえる。

 毎晩、彼の無事を祈っていたのに……。



 ◇◇



 気持ちを立て直せずに、お茶席から辞去をした。



 ◇◇



 あの後襲撃現場に駆けつけてくれたのは、近隣の警備隊のみでマルコ僧とヤコブ僧はいなかった。どうやら先を急ぐ旅だったらしい。ルカ僧も警備隊の到着後、二人を追うためすぐに去った。


 その警備隊の隊長が教えてくれた。

 マルコ僧、ヤコブ僧、ルカ僧は軍関係者の間では名の通った三人組で、彼らは聖リヒテン修道騎士団が誇る二組の三騎士のうちの一組だ、と。


 特に秀でているのがルカ僧だという。不利なはずの小柄を活かした素早さで圧倒的な強さを誇り、故についた通り名が『リヒテンの死神』なんだそう。

 ただ、彼はあの通り顔と喉にハンデがあるから、最も力を発揮できるのが、マルコ僧とヤコブ僧と一緒の時だという。


 異教徒との戦い以外でもいつも三人で行動しているそうだ。だけれど異教徒との国境からも、聖リヒテン修道騎士団の本部からも遠く離れた襲撃現場に彼らが現れたことは、億分の一の幸運なのだ、と力説された。



 だけど私にとっての幸運は、彼らが現れたことだけじゃない。

 ルカ僧と過ごす時間があったこともまた、幸運だった。


 弱っていた私に彼のあの言葉は救いだった。

 判断を誤ってしまった私への赦しに思えた。




 ルカ僧にあのような言葉をかけてもらっていなければ、きっと私は自責の念に押し潰されていただろう。

 それなのに。あんな素晴らしい人が、もういないなんて。


本日、22時にもアップします。


今回は気が滅入る内容なので、次は明るめです。

気分転換になれば良いのですが。



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