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7・1速攻

 月が変わると、ユリウス国王と父からしたら厄介者のはずのクラウスが軍務省の中枢部に職を得ていた。どうやら様々な思惑が絡み合ってのことらしい。


 クリズウィッドの話だと思惑のメインは、クラウスを重要部署で働かせておいて何かしらの事件をでっち上げ彼に罪を着せる。そうして彼は死罪、フェルグラート家からは爵位も領地も資産も取り上げる。そんな算段ではないかとのことだ。


 えげつない……。


 だけどクラウス本人もなかなかの人物らしい。彼が穏やかな人物という噂は大間違いだった。

 夜会で見せた服従の態度は、あくまでユリウスに対してだけの服従だったらしい。

 父やその一派とは堂々と渡り合っているそうだ。弁が立ち知識もあるものだから、今まで権力に胡座をかいて怠けていた一派たちはやり込められてばかりいるようだ。


 ユリウスは国王として戴くけれど、父やその一派は臣下として対等な立場だということらしい。

 暗殺されるかもと護衛を連れているわりに、なかなか図太い神経をしている。


 しかもゲームでの性格、ちゃらい女好き、も間違いじゃなかった。

 いつ見かけても、ご婦人ご令嬢に囲まれている。彼の恋人、愛人を名乗る女性も数知れず。

 もっともそのほとんどが自称だと、クラウディアが言っていたけれど。何を言っても本人が否定しないから、女同士の見栄で自称しているんだって。



 ルクレツィアは、クリズウィッドとクラウスが親しくなるのを阻止しようと画策をした。クリズウィッドになるべくくっついて、夜会や舞踏会ではクラウスから距離をおくように動き、普段の生活でも彼が近くに来ていないか用心をしてくれた。もちろん私も出来る時はそのようにがんばった。


 それなのに。

 気づいたら、二人は仲良く午後のお茶を飲む関係になっていた。

 恐るべしゲームの力……。



 ◇◇



「一体いつの間に親しくなったのかしら」

 ルクレツィアが頬に手を当てて、吐息した。なんてサマになっているんだ。可愛らしい。


 西翼そばの庭園で。パラソルの下で二人、午後のお茶の席。


「すごいわ、公爵。全て速攻ね」

 私たちは耳目を気にして、クラウスのことは『公爵』と呼ぶことにした。

 クラウスは夜会で王宮に現れてからひと月も経たないうちに仕事も、社交界での立ち位置も、友人も、恋人も手にいれてしまった。


 おかげで父様たちは苛立っている。彼の身の安全的にはよろしくないのじゃないだろうか。

 とはいえゲームが始まるまでは大丈夫なのだろうけど。ゲーム後は……彼が不幸になるエンドはあるのだろうか? 私とルクレツィアが知る限りはなかったと思う。


「とにかく関わらないでおきましょう」とルクレツィア。「いずれ紹介されるでしょうけれど、深入りしない、二人きりで会わないを貫きましょうね」

 彼女の目を見て、強くうなずいた。

「あなたと二人、共闘できるから心強いわ」

 そんな私の言葉に、


「何と戦うのだい?」

 ルクレツィアではない声で返事が帰ってきた。


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