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おまけ小話49・1元残念イケメンの活躍

大晦日、舞踏会での話

☆元残念イケメンの活躍☆

(ジョナサンの話です)


 年に一度の真夜中の鐘が鳴った。新年だ。両脇の女の子たちと祝いの言葉を掛け合う。

 ややもして止まっていた音楽が再び流れ出して、広間は普段と変わらない様子に戻った。


 女の子に、踊るかい?と声をかけようとして、ふと視界に銀髪が入る。クラウスだ。

 僕が唯一顔で勝てないと認める男。しかも向こうが良いのは顔だけでない。年が同じ分余計に腹が立つ。


 ま、同じフィールドに立たなきゃいいのだ。あちらは文官、僕は武官。

 それに、いい奴だ。


 今夜はいつもみたいに取り巻き軍団に囲まれていない。ひとり一時間ずつ順番にエスコートをすると聞いている。

 それもこれも妹のデビュタントをエスコートするのが原因だ。


 派手に遊んでいるように見えるけど、実は真面目で誠実だ。

 何であんなに女性を侍らしているのか不思議だが、多分、還俗したときに浮かれてあちこち手を出してしまったのだろう。


 今もエスコートしている女性に笑顔を向けているけど、目が死んでいる。気の毒に。


 両脇の女の子たちに断って、歩み寄る。

「クラウス」

 声をかけると、彼の連れが嫌な目付きを向けて来た。邪魔をするなと言いたいのだろう。だけど僕だと気付いて、慌てて笑みを浮かべている。クラウスの妻になれなければ僕を、と考えているからに違いない。


「クリズウィッド殿下が探していたぞ。緊急みたいだ」

 連れの女性に笑みを向ける。

「悪いね、彼を少し借りるよ。それからクラウスばかりじゃなくて、後で僕とも踊ってくれよ」


 そう言って彼女から離れる。ついでに広間も出た。まだこちらの方が人が少ない。柱の陰に入ってもたれる。


「助かった。だがそんなに顔に出てたか?」

 クラウスは苦笑いを浮かべている。

「いいや。死んだ魚の目をしていたぐらいだ」

「そりゃまずい」

「少し女性たちを整理したらどうだ。で、こちらに回せ」

「……それは無理だな」

「どうして。あんなに沢山必要ないだろう」

 クラウスはため息をついた。

「必要はないがな。お前には回せん。確実に恨まれる」

「そんなに僕は不人気物件じゃないぞ」

「そういう意味ではない。お前も結構な鈍感だよな、って話だ」

「意味が分かるように話せ」

「そのままだよ」


 僕は頭が回る人間ではない。が、愚鈍とかそういう意味ではないだろう。彼は友人を貶めるような事は決して口にしない。


「本当に助かった。息抜きをしてくる」

 クラウスはそう言うと、柱の陰を抜け出して廊下の奥へ消えていった。


 まあいいか。広間に戻って楽しもう。

 そうだ、今日はまだルクレツィアとちゃんと話していない。新年の舞踏会だから、きっとドレスを新調しているだろう。

 一言褒めてこないとな。


 もっともルクレツィアは何を着ても可愛い。きっと心根が素晴らしいから、何もかも素敵なのだろうな。


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