おまけ小話45・1警備隊の二人
リリーの恋人のあとの話
(警備隊モブ君の話です)
彼女たちから離れ店の中に入ると。
「おいおい、リリーの友達ってのは随分美人じゃないか」
幼なじみで警備隊の同僚でもあるウィルにこそっと伝える。
真面目一方のウィルが最近のぼせ上がっている娘がいる。悪名高いラムゼトゥール公爵の屋敷で小間使いをしているリリーだ。
何度か会ったが、これがまた悪徳宰相の屋敷で働いているとは思えないほど真面目で、しかも可愛くて、ウィルにはお似合いだ。
そのリリーの親友がどうしてもウィルに会ってみたいという。真面目な彼に一度に二人の女の子の相手なぞできない。それで俺が付き合うことになったのだが。この親友という娘が、見たことがないほど美人だ。
ちらり、と店の外で待つ二人の小間使いを見る。失敗したかもしれない。周りの男たちが彼女たちを見ている。
普通の女なら、彼氏に自分より可愛い友達なんて会わせたがらないものなのにな。リリーにとって、本当の友人なのだろう。
「確かに美人だが、リリーのほうが気立てがいい」
真顔のウィル。
いやいや、友達にはさっき初めて会ったのに、どうしてそう判断できるんだ。リリーに心底惚れ込んでいるのだろう。
今日は友達からの『合格』をもらい、その勢いで交際を申し込むつもりらしい。
ていうか、勢いがないと交際が申し込めないウィルが情けない。
「まあ、がんばれ。あの様子じゃかなり大事な友達だ。ミスるなよ」
「分かってる」
真顔でうなずくウィルに、ちょっと不安になる。
こいつは本当に真面目すぎる。そのせいで今までの恋愛は上手く行かなかった。
「頼むから、仕事の話しばかりするなよ」
「分かってるって!」
幸い四人がけの席があいているという。
彼女たちを呼んでランチにしよう。
ウィルが上手く合格をもらえるよう、俺もがんばらないとな。




