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45・1リリーの想い人

 いつもリヒターと待ち合わせする場所に、リリーと二人で立つ。今日は日曜。待っている相手はリヒターじゃない。リリーの『お友達』だ。


 例の警備隊のお友達とは、仲が進展していないらしい。お互い忙しい仕事だからすれ違いが多いみたいだ。

 とはいえリリーはかなり好意を寄せているようなので、私がずっと会ってみたい!と頼んでいた。

 だって大事なリリーの想い人だからね。


 それでついに、会えることになった。今日の私はリリーの同僚のアンヌだ。




 時間より早く来たせいか、まだ相手が来ない。退勤後に来るそうだから、仕事が押しているのかもしれない。


 リヒターはいつも先に来てくれている。どうやらそれも彼からすれば仕事の一環で、私が先に来て待っている間に何かあったらいけない、と考えているようだ。

 やっぱり根が真面目か、仕事には真摯か。どちらにしろ良い人だ。


「あ」

 とリリーが声をあげる。警備隊の制服姿の二人組がこちらに早足で来る。

「どっち?」と囁くと

「右です!」と答えが返って来た。


 ふむ。普段クラウスとかクリズウィッドとかのキラッキラを見ているからアレだけど。一般的に見ればイケメン。真面目そうかな。年はリリーの二つ上と聞いている。


「遅くなってごめん!」と『友達』。「仕事が延びてしまった!」

 彼は私にも謝る。うん。感じは悪くないぞ。

 お互いに紹介をし合う。リリーの友達が連れて来たのは『友達』の友達で、面識はあるらしい。私だけ二人と初対面。

 とりあえず四人で約束のランチに向かう。


 私は『友達』の友達…

 面倒だな。モブ君と呼ぼう。

 私はモブ君と並び、リリーには『友達』と並んで歩いてもらおうとしたのだけれど、なぜか彼女は私の手をしっかり握りしめて離さない。

「ちょっと!」

 とこっそり囁いて手を引っ張ったけど、

「離しません!」

 と返された。どうやら表情からして私を心配しているらしい。

 おかげで前を警備隊二人が振り返りながら歩き、私たちがついていくという、微妙な状況となった。


 いいの? これで?

 私、もしかしなくても、ものすごくリリーの邪魔をしているのかな?


 それでも一応会話は弾み、目的のお店に到着した。だけどかなり混んでいるようだ。警備隊の二人が入れるか見てくると言って、先に中へ入った。


「感じの良い人ね。真面目そう」

 リリーは頬を染めた。

「やっぱりそう思いますか?」

「うん。リリーにぴったりじゃない?」


 えへへと笑いあっていると。


「おい」と声をかけられた。

 振り返らなくても分かる。

「リヒター!」

 リヒターが立っていた。なんてラッキーなんだ。いつもの曜日以外でも会えるなんて。

「何してるんだ。二人なのか?」とリヒター。「いくら街中でもアブねえぞ。クリスマス前でスリと強盗が増えてんだ」

「そうなの? でも大丈夫。リリーのお友達と一緒なの。……警備隊の人たち」


 リヒターは裏町の人間だ。もしかしたら警備隊とは関わりたくないだろうか。そんな不安が一瞬過る。

 その時に、警備隊の二人が戻って来るのが見えた。


お読み下り、ありがとうございます。

おまけ小話です。

本編に出て来ているモブ君のお話です。

読まなくても本編に影響はありません。


☆警備隊の二人☆


 彼女たちから離れ店の中に入ると。

「おいおい、リリーの友達ってのは随分美人じゃないか」

 幼なじみで警備隊の同僚でもあるウィルにこそっと伝える。


 真面目一方のウィルが最近のぼせ上がっている娘がいる。悪名高いラムゼトゥール公爵の屋敷で小間使いをしているリリーだ。

 何度か会ったが、これがまた悪徳宰相の屋敷で働いているとは思えないほど真面目で、しかも可愛くて、ウィルにはお似合いだ。


 そのリリーの親友がどうしてもウィルに会ってみたいという。真面目な彼に一度に二人の女の子の相手なぞできない。それで俺が付き合うことになったのだが。この親友という娘が、見たことがないほど美人だ。


 ちらり、と店の外で待つ二人の小間使いを見る。失敗したかもしれない。周りの男たちが彼女たちを見ている。


 普通の女なら、彼氏に自分より可愛い友達なんて会わせたがらないものなのにな。リリーにとって、本当の友人なのだろう。


「確かに美人だが、リリーのほうが気立てがいい」

 真顔のウィル。


 いやいや、友達にはさっき初めて会ったのに、どうしてそう判断できるんだ。リリーに心底惚れ込んでいるのだろう。

 今日は友達からの『合格』をもらい、その勢いで交際を申し込むつもりらしい。


 ていうか、勢いがないと交際が申し込めないウィルが情けない。

「まあ、がんばれ。あの様子じゃかなり大事な友達だ。ミスるなよ」

「分かってる」


 真顔でうなずくウィルに、ちょっと不安になる。

 こいつは本当に真面目すぎる。そのせいで今までの恋愛は上手く行かなかった。


「頼むから、仕事の話ばかりするなよ」

「分かってるって!」


 幸い四人がけの席があいているという。

 彼女たちを呼んでランチにしよう。

 ウィルが上手く合格をもらえるよう、俺もがんばらないとな。


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