表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/251

43・2事件後の変化

 事件からしばらくは、王宮も社交界も動揺し重苦しい空気に包まれていた。


 ワイズナリーは怪文書の告発があったとはいえ、実際に証拠と共に逮捕されたわけでもない。だから現役の大臣の死として、国葬が営まれた。

 だが怪文書の件のうえ、ザバイオーネの動機も不明とあって、大抵の参列者が遺族を遠巻きにする、寒々しい葬儀だった。


 そんななかでジョナサンは、呆然自失の母と弟妹を連れてしっかりと喪主の役目を果たした。頬はこけ顔色は冴えなかったけれど、まっすぐ前をみつめていた。


 クリズウィッドがぼそりと、ルクレツィアは本当に見る目があったのだな、と呟いたほどに、立派だった。




 一方でザバイオーネ商会は国営になることが決まり、一家は財産没収となった。ルパートの母は修道院に入り、既婚の姉のうち三人は離縁されやはり修道院へ、残り一人は夫子供と都を出たという。

 近衛第二師団長だったザバイオーネの弟はヒラの警備隊員に降格となり、プライドが許せなかったのだろう、その日のうちに辞表を出したそうだ。


 そしてルパート。

 優秀だからなのか、攻略対象だからなのか。通常ならばあり得ないことだけれど、ゲームでの彼はその頭脳を買われて、王宮に住むとある夫人に引き取られる。そして変わらずゲームに存在し続けるという。


 現実でもそうなった。ただし、かなり裏がある。引き取るご夫人は、ユリウスの何番目かの愛妾だ。名目は彼女の従者見習い。だけども彼女も国王も可愛い『ペット』を拾ったと公言している。実際にルパートの首には赤い皮の首輪がついている。ちなみに彼女はルパートより二十歳年上だ。


 リヒターの話ではザバイオーネの屋敷、商会の持つ建物全てをユリウス警護が専門の近衛第一師団が、かなり荒っぽく捜索をしているという。


 ザバイオーネとワイズナリー、父とユリウス、この両者が微妙な関係だったことを鑑みると、前者が何か後者の弱みを持っていてそのネタ元を捜索しているのだろう、と裏町はにらんでいるそうだ。

 ルパートはそのネタ元がみつかるまで、保険として王宮に留められることになったと考えられる、とリヒターは話していた。


 社交界でそれなりにふんぞり返っていたルパート。プライドが高く、甘やかされて育った彼には、従者でなおかつペット扱いなんて、屈辱的な境遇だろう。だが通常なら、無一文で国外追放になるぐらいの状況だ。

 彼にとってはどちらがマシなのだろうか。




 ◇◇



 十二月の頭にはルクレツィアの誕生日があった。毎年クラウディア、クリズウィッド、私でお祝いをする。だけど彼女がジョナサンを好きだと知ってから、今年はなんとか彼を呼べないかと考えていたのだけど、それどころではなくなってしまった。


 当日密やかに、いつものメンバープラス新メンバーシンシアでお祝いをすることにした。

 ところがそこにジョナサンが現れたのだ。ルクレツィアの誕生日だと聞いた、と言って。


 彼はにこやかに、

「父と僕とを気遣ってくれた礼を兼ねて。おめでとう」

 とプレゼントを差し出した。

 すっかり動転してしまったルクレツィアは、ありがとうも言えずにそれを受け取った。

 ジョナサンが去ってようやく息を吹き返した彼女がプレゼントの箱を開けると、中には素晴らしい細工のネックレスが入っていた。

 ルクレツィアは嬉し泣きに崩れた。


 ようやく彼女の恋が前進したのかも。



 ◇◇



 ところで事件がありすぎて存在を忘れていた主人公。

 シンシアがブルーノたちから聞き出したところによると、変わらずクラウスの回りをうろうろはしているらしい。

 とにかく彼女には気を付けること!とシンシア、ルクレツィア、なぜかリヒターにまで言われている。




 その主人公に待ち伏せされました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ