表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/251

4・1エスコート

 王宮に到着すると家族とは別れて、クリズウィッドを待った。広間に入る前からエスコートしたいと言われたのだ。

 リヒターには、王子はそれなりにお前を気に入ってんじゃねえの、と言われた。だけどそんなことはないと思う。

 宰相である父に気を遣っているか、妹に気を遣っているかのどちらかだ。彼からは妹の友人としての好意しか感じたことがない。


 それほど待つことなくクリズウィッドが現れた。柔和な笑顔で待たせたね、と言いかけて目を見張る。


「……今日はずいぶんと気合いが入っているね」

 目尻を下げる婚約者。私はきっちりと正装をしてきた。髪は美しく巻き上げて、胸元のあいた華やかなドレスに豪華なアクセサリー。いかにも公爵令嬢という装いだ。

「だってルクレツィアがちゃんとなさいと言うから」

 あまりしない正装に、気恥ずかしくなる。

「とても素敵だ」

 クリズウィッドは私の手を取り、指先にキスをする。


 すっかり慣れたはずなのに、リヒターが変なことを言うからドキドキしてしまう。

 何しろクリズウィッドは攻略対象だからね。文句なしのイケメンだもの。時々彼にはキラッキラのフィルターがかかっているのかなと思うときがあるよ。


 そんな彼にエスコートされて大広間に入る。普段より人が多い。


「みんな新公爵目当て?」

「だろうな。都の社交界が総出だ。だがまだ来ていないらしい」


 友人知人見知らぬ誰かに挨拶をしながら、ルクレツィアを探す。

 そうしてだいぶ進んだ奥地の壁際の長椅子に、姉と二人、ポツンとしている彼女を見つけた。私を見て、淑やかに片手をあげ微笑む。

 かわいい。

 絶対、悪役令嬢になるような娘じゃない。


 むしろクラウディアの方が、気の強いぶん素質はありそう。気のいいお姉さんなので好きだけどさ。

 彼女もブラウンの波打つ髪と鳶色の瞳だ。ルクレツィアとよく似ている面立ちだけど、妹が穏やかな容貌なのに対して、勝ち気そうだ。


 私たちは挨拶を交わしお互いの装いを褒めあう。終わると私はルクレツィアの隣に座った。


 広間を見渡……そうにも人が多すぎる。

 この騒ぎっぷり、父様は気に入らないだろうな。自分が常に目立っていないと我慢ならないタイプだから。


 と。多くの人で騒がしかった大広間が、徐々に静かになり始めた。それも扉側の一角から徐々に、まるでさざ波が寄せてくるかのように、静寂がやってきたのだ。


 なんだろう。

 ルクレツィアと顔を見合わせる。


 だが、すぐに原因が現れた。

 静寂の中を青年が優雅に歩いている。噂の人物、フェルグラート家の新当主だ。確かに、すごい。ゲームでの印象が霞む。銀の髪に白磁の肌。美しく怜悧な顔立ちに抜群のスタイル。しかもこれだけ注目を浴びながらも、物怖じすることもなく堂々としている。


 この世界、乙女ゲームの世界だけあって美男美女がゴロゴロしているけれど、彼は群を抜いている。


 大丈夫かな、とそっとルクレツィアを見ると、バチリと目が合った。彼女も私を見たところだったのだ。お互いに瞬いて、それから小声ですごいねと言い合った。

 お互いに一目惚れはしなかったようだ。ゲーム効果でいきなり好きになったらどうしようと不安だったけど、杞憂に終わった。第一関門突破だ。

 クラウディアは目が輝いていたけれど、彼女はゲームキャラではないから大丈夫。

 ほっと肩を撫で下ろした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ