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妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?  作者: 木山楽斗
本編

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第30話 お兄様方の怒り

「全く以て、由々しき事態だ。オルディアの柔肌にこのようなものを残した者を、許しておけるものか。絞首台に送ってやる」

「まあ、今度ばかりはアドルグお兄様に同意しなければならないわね」

「僕は基本的には人道的なものを支持していますが、これは流石に許せませんね」


 ヴェルード公爵家の屋敷に戻って来た私達は、アドルグお兄様とイフェネアお姉様、ウェリダンお兄様と話していた。

 当然議題は、マネリア嬢のことである。三人とも、当然のことながら彼女のことが許せないらしい。


「お兄様方、どうか落ち着いてください。今回の件に関して、僕は彼女を利用した所もありますから」

「利用だと?」

「ええ、ヴェルード公爵家は現在色々と言われていますからね。その風評を少しでも撥ね除けられるように、僕が被害者となるのは有効だと思いました。だから自ら近づいたんです」


 オルディアお兄様は、基本的には寛大な人である。

 故に、あのようなことをしたマネリア嬢にも慈悲の心を持っているのだろう。

 いやもちろん、自分で言ったことも関係している可能性もある。オルディアお兄様は、彼女のことを本当に利用した所もあるのだろう。その罪悪感などがあるのかもしれない。


「仮にそうだとしても、マネリアという令嬢がやったことは重罪だ。我々貴族は、というよりもこの国に生きる者全てに言えることだが、人に手を出してはならない。いくら煽られようとも、それは変わらないことだ」

「しかしだからといって、今回のようなことで絞首台ということはないでしょう。別に僕は、彼女に罰を受けてもらいたくないという訳ではないのです」

「いや、実際の所今回は始末しておく方が都合が良いといえる。仮に何年か禁固刑になったとしても、出て来た時にまたエフェリアに加害の意思を示さない保証はない」


 怒りながらも、やはりアドルグお兄様は冷静であると言える。

 確かに、マネリア嬢は正気とは言えないような人だ。彼女はいつか牢屋から解き放たれた時、またエフェリアお姉様に対して逆恨みの感情をぶつけるかもしれない。

 そうならないためには、命を奪うのが確実だ。残酷ではあるが、そうすれば彼女は二度とエフェリアお姉様の前には現れなくなる。


 しかしながら、本当にそれで良いのだろうか。私なんかは、そう思ってしまう。

 マネリア嬢のことは、許せないと思っている。だけど、命を奪うということは気が引けた。

 ただ貴族としては、それを受け入れなければならないのかもしれない。そんなことを考えて、私は思わず息を呑んでいた。


「アドルグお兄様、私なら大丈夫です」

「何?」


 アドルグお兄様の言葉に答えたのは、オルディアお兄様ではなくエフェリアお姉様であった。

 お姉様は、ゆっくりと首を横に振っている。それはアドルグお兄様の判断を否定しているということなのだろう。


「私のことは、レフティス様が守ってくれますから。彼女の命を奪うのは、あまり気が進みません。甘いのかもしれませんが……それでも、オルディアを傷つけられても、私はそう思ってしまいます」

「エフェリア……」


 エフェリアお姉様は、自分の意見をはっきりと述べた。

 オルディアお兄様に最も近しいお姉様が、そのような判断をしている。それはアドルグお兄様の心を揺さぶるものだったのかもしれない。珍しくその目を丸めている。

 私にとっても、その意見はなんとも受け入れやすいものであった。やはり、人の命を奪うということは気が引ける。それはできるだけで、避けたい所だ。


「……あの男に頼るというのか」

「え?」

「あ、まずい。これはアドルグお兄様の例のあれだわ」


 アドルグお兄様の言葉に、イフェネアお姉様がその表情を歪めた。

 私にもわかる。お兄様は今、本題と外れた所に反応しているのだ。まだエフェリアお姉様の婚約を、唯一受け入れていないから。


「イフェネア姉上、アドルグ兄上のことを頼めますか?」

「え? ああ、ええ、そうね。お兄様、少し席を外しましょうか?」

「何? 何故、俺が……」

「はいはい。アドルグお兄様、行きましょうね」


 ウェリダンお兄様の指示によって、イフェネアお姉様がアドルグお兄様を連れて行った。

 レフティス様のことは今、関係がない。アドルグお兄様がいたら、そのことについて色々と言うだろう。故に部屋から一旦出て行ってもらうようだ。


「……まあ、本人達がそう言っているというなら、その意思を尊重する必要はあるのかもしれませんね」

「ウェリダンお兄様は、アドルグお兄様派ではないの?」

「もちろん、僕はどちらかというとアドルグ兄上の判断を支持しますよ。しかし、三人の気持ちがわからないという訳でもありません。単純に気が引けますからね」


 ウェリダンお兄様は、幾分か落ち着いているようだった。

 アドルグお兄様が変になったからだろうか。この場のまとめ役としての自覚をしたようだ。


「まあ、マネリア嬢も牢屋の中で反省するかもしれません。少なくとも、数十年は出て来られないように取り計らいます。そして出て来た時に彼女が反省していないというなら、非情な手段も辞しません。そんな所ですかね」


 ウェリダンお兄様は、今回の件をそのように結論付けた。

 それは私達にとっても、納得できるものである。マネリア嬢が、長い刑期の中でしっかりと反省してくれると良いのだが。

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