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妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?  作者: 木山楽斗
本編

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第29話 余裕そうな態度

「オルディア、なんて無茶を……」

「あはは……」

「笑いごとじゃないよ!」


 医務室のベッドの上で、オルディアお兄様は苦笑いを浮かべていた。

 その顔の右側には、包帯が巻いてある。その範囲は、そこまで大きくはない。どうやらオルディアお兄様も、躱そうとはしていたらしい。


「マネリア嬢が、まさかあれ程に悪意を持っていたとは、僕も思っていなかったたんだ。危害を加えてくるにしても、もっと掴みかかるだとか、そういうことだと思っていた。これは僕も、流石に予想できなかったよ」

「なんでそんなに余裕そうに話せるのか、わかんないよ」

「エフェリアお姉様の言う通りです」


 オルディアお兄様の余裕そうな表情に、私はエフェリアお姉様ともども怒りを覚えていた。

 あれだけ危険なことをしたというのに、どうしてそんな風に笑っていられるのだろうか。それが私には、よくわからない。


「これは、名誉の負傷だからね……男の僕にとっては、誇らしいものさ」

「男だとか女だとか、そういう問題じゃないよ。一歩間違っていたら、死んじゃったかもしれないんだよ?」

「わかっている。だけど、エフェリアを傷つけようとする者を放っておく訳にもいかないからね」


 そこでオルディアお兄様は、その目を細めた。

 とても冷たい目をしている。その目からは、エフェリアお姉様を害する者を許さないという意思が伝わってきた。


「それに今回は、ヴェルード公爵家にまたケチが付くことを避けたかったからね。彼女に行動してもらって、こちらが被害者であることを大々的に示しておきたかった」

「……同情を誘うために、あんな無茶をしたんですね?」

「クラリアには、辛い役目を押し付けてしまったね。それはごめん」

「私よりも、エフェリアお姉様に謝ってください」


 私は、ゆっくりと首を横に振った。

 エフェリアお姉様と同じ気持ちでいる私だが、心からオルディアお兄様を非難できる立場ではない。あの時私は、お兄様に加担してしまっている。

 あそこでオルディアお兄様の名前を呼んでいたら、違った結果になっていたかもしれない。それは後悔として、心に残っている。


「エフェリア、ごめん」

「謝っても許さないんだから……」

「レフティス様も、すみませんでした。僕のわがままに付き合わせてしまって」

「いえ、私は共犯者のようなものですからね」

「いえ、それ程意図を伝えていたという訳でもありませんから」


 オルディアお兄様は、エフェリアお姉様とレフティス様に謝った。

 恐らくレフティス様も、適当な理由を聞いて入れ替わることを了承したに過ぎないのだろう。マネリア嬢に迫った時は動揺していたし、この件においては、彼も私とそれ程は変わらない立場だったのかもしれない。


「……さてと、事件を起こしたマネリア嬢のことだが」


 私達の会話が一区切りついた辺りで、ロヴェリオ殿下がゆっくりと口を開いた。

 それによって、私達の視線が一気にそちらに向く。そんな中でも、ロヴェリオ殿下は特に怯まない。やはり人の視線には、慣れているということだろうか。


「とりあえず地下牢に入れているが、基本的には大人しくしているらしい。本人としては、やり切ったといった感じみたいだな」

「……やり切った、ですか?」


 ロヴェリオ殿下の言葉に、私は思わず絶句してしまった。

 マネリア嬢という令嬢は、本当に狂気に囚われているようだ。こんなことをしておいて、やり切ったなんて思えるのは正気の沙汰ではない。


「まあ、彼女の本当の目的だったエフェリアには傷一つなかった訳だけれど」

「オルディア、それは誇るようなことではないからね?」

「ああいや、別に誇っているつもりなんてないよ」


 誇らしそうに自分の成果を語ったオルディアお兄様に、エフェリアお姉様が鋭く釘を刺した。

 とはいえ、オルディアお兄様の言っていることは、わからないという訳でもない。マネリア嬢は、何の望みも叶えられていないということになる。それを彼女は、何れ聞かされることになると思うが、その時にどのような反応をするのだろうか。


「オルディア公爵令息は、薬物のようなものをかけられたと聞いていますが……その辺りについて、何か言っているのでしょうか?」

「いえ、犯行に関することは何も話していません。まあ、王城としてはそういった者を会場に持ち込まれたというのが失態ではある訳ですが……」


 ロヴェリオ殿下は、ゆっくりとため息をついた。

 今回の舞踏会は、一応彼が主催者である。そんな中でこの事件が起きたということは、きっとかなり胃が痛くなることなのだろう。


 とはいえ、これを防ぐのは中々に難しいようにも思える。

 そもそもオルディアお兄様が自ら向かっていた訳だし、刃物などならまだしも彼女が持っていた薬物を見つけ出して防止するというのは、容易ではない気がしてしまう。

 ただ、ロヴェリオ殿下は改善しなければならない立場である。これからはリチャード殿下なども合わせて、色々と対策を講じていくのだろう。


「問題は、お兄様方だよね……今回の件でも、怒るだろうし」

「……まあ、今回のことは怒るようなことではあると思いますけど」


 エフェリアお姉様の言葉に対して、私は思わず返答をしていた。

 お兄様達程に過激になれる訳ではないが、それでも今回の件は問題だと言えるだろう。マネリア嬢には、きちんとした罰を受けてもらわなければならない。

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