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第一五話 ポポと嘘つき男①

──オイラには、気になる女の子がいる。


 朝、店舗も兼ねた自宅の二階。朝日を受けて目覚めたポポは思う。

 体を起こして布団を片付け、一度外に出て顔を洗って気合を入れる。


「よしっ」


 パンパン、と二度ほっぺを叩くと身が引き締まるような思いがした。


──今日こそ、あの子に話しかけるんだ。


 そう決意を決め、もう一度家の中に戻っていく。

 ポポの家の一階は桶屋になっている。そこに入るとたくさんの桶が積み重なった異様な空間が広がっている。

 彼はこのルグドラクール大陸北部では珍しいハーフ二世である。

 父も母も共に猫の獣人のハーフ。両親は獣人よりも器用な手先を商売道具にして桶を作って売る仕事を、少なくともポポが生まれてからずっとやっている。


「いいか、ポポ。もしお前と歳が近いハーフの子を見つけたら、絶対に話しかけるんだぞ」


 ポポの父は口酸っぱくそう言っていた。

 その理由はハーフがなかなか結婚できないからだった。獣人たちの間で劣等種とされることが多い彼らは、獣人の交際相手を見つけることが難しいのが一つ。そしてハーフと結婚しようにもそもそもハーフの絶対数が多くないという問題がある。それ故なかなか歳の近いハーフを見つけることができないのだ。


 ポポの両親はそんな状況の中で運よく結婚できた身だった。しかも二人とも同い年である。ポポはそんな両親に憧れがないわけではなかったが、しかし父の言い草に辟易しているきらいもあった。

 そもそも、ポポは女の子にそこまで興味があるわけではなかった。もっと具体的に言えば、恋愛や結婚ということに強い関心はなかったのだ。それはある種諦めのようなもので、どうせ結婚なんてできないだろうから桶屋の息子としてこれから一生桶を作っていこうと、そう決めていた。


 しかし、少年の決意はたった一人の少女を見かけただけで変わってしまった。


 その女の子は可愛かった。


 おいなりさんのような狐色の髪の毛にふさふさとした尻尾、それに大きな三角形の耳。何よりも顔が好みだった。

 その狐のハーフの少女を見た瞬間にポポの心臓はがっちりと掴まれてしまったわけである。


 でも、その少女は暗い顔をしていた。どんな事情があるのかはわからない。しかし彼はその原因が一緒にいた男にあるのだろう、と考えていた。

 その男はフードで顔を隠した怪しい二十代のハーフに見えた。ガタイはそこそこ良く、鋭いのにどこか柔らかい瞳をした男だった。

 最初は少女と男が兄妹なのだと考えた。しかし、耳はフードを被っていたせいでよく見えなかったが、尻尾から推測するにアレは狼の獣人だ。狐と狼の兄妹なんているわけがない。

 だからきっとあの男は悪いやつで、少女はあいつに捕まっている。きっとあの男は少女に何か悪いことをしているのに違いない。それを裏付けるように、男からは嘘つきの音がした。


 だからきっとあの男をやっつければあの子は元気になる。そうすればきっとオイラのことを好きになる──それがポポの出した結論だった。


 が、そんな淡い幻想は早々と打ち壊されるわけで。


 次の日にポポが見たのは、あの子と嘘つき男が仲良く買い物をしている姿だった。暗い表情も好みだったが、向日葵のような明るい笑顔に魅せられてしまったのもつかの間、手元にハンカチがあれば食いちぎってしまいそうな勢いの感情の波が押し寄せてきた。


 だから、後をつけた。

 後をつけて何をするのかはポポにもわからなかった。ただ、何もせずにはいられなかったのである。


 そうしたら見つかったのである。しかも失態をまんまと見られ、あまつさえ救いの手を差し伸べられた。それだけならまだしも、あの子の前で大人気ない態度を見せてしまった。

 あの時のことを思い出すたびに頭でお湯が沸きそうになるほどの羞恥心が溢れてくる。


 全部全部、あいつが悪いんだ!


「おいポポ、どこに行くんだ?」

「散歩。ちょっとその辺歩いてくるから」

「朝ごはんはどうする!」

「いらない!」

「昼までには帰れよ! 夕方まで店番しなきゃ小遣いやらないからな!」


 家に戻って準備を済ませたポポは父親とそんなやりとりをしつつ町に出た。

 町に出ればまたあの子と会えるのではないかという期待があったからだ。あの子のことを何も知らないポポにとっては、これくらいしかできることはなかったのだ。


「おいポポ」


 プンスカと歩いていて掛けられた声に、ポポは内心ドキリとしながらも振り向いた。そこにいたのは犬の獣人の少年だった。

 その少年の名はアレス。ポポよりも二つ年下で、ポポよりも背が低く、ワルそうな目つきの少年だった。


「な、なんだよ」

「こんな朝っぱらから何してんだよ」

「なんだっていいだろ」

「そんなこと言うなよ。俺らの仲だろ?」


 ポポは彼のことが苦手だった。

 ポポよりも年下で、背も低い癖に、何かと上から目線で絡んでくる。こちらからそれとなく嫌だと言っても、彼は強引に絡んでくるのだ。


「ちょっと、散歩だよ」

「なら暇なんだな?」

「まぁ、そうだけど……」

「じゃあ今からちょっと付き合えよ」


 彼がここまで強く出られるのは、彼の父親が兵士だからだった。

 この町はハーフには比較的住みやすい町だ。しかしそれでも兵士に目をつけられればひとたまりもない。だからポポとしても彼に何か頼まれたら嫌々引き受けるしかなかったのだ。それが悪事の手伝いでも。


「……今度は何するの?」


 しぶしぶポポがそう聞くと、アレスはニヤリと下賤な笑顔を浮かべた。


「町の西の方にある銭湯、知ってるか?」

「知ってるけど……」


 知っているも何も、そこのお婆ちゃんはうちのお得意さんだった。風呂桶をよく注文してくるのだ。だからポポもそのお婆ちゃんを知ってる。話は長いけど、良いお婆ちゃんで、たまにポポにこっそりお菓子のくれるのだ。


「実はあそこ、女湯が覗けるって噂があるんだよ。ただ、覗きやってる間に誰か来たら大変だろ?」

「じゃあ見張りをすればいいの?」

「そういうこと。──そんな顔するなよ。ちゃんと俺が見た後にお前にも見せてやるから」


 ポポの肩に手を回し、アレスはねっちょりとした声で言ってきた。

 耳にまとわりつくような嫌な声だった。昨日はあの子の声を聞けて神聖なものになった耳が、この瞬間に穢れていく。


「オイラはいいよ」

「そう言うなよ。お前だって本当は興味あるだろ?」

「ないって」

「じゃあ俺がおかしいっていうのか?」

「そうじゃないよ……」


 ああ、めんどくさい、とポポは思った。

 そもそもポポが興味あるのはハーフだけだった。獣人という種が嫌いなわけではないが、とてもじゃないが恋愛対象には見れない。あんなけもくじゃらのどこが良いのか彼には理解できなかった。顔だってケダモノみたいだ。


「とりあえず、今日の夜、俺ん家の前に集合だからな。日が暮れたらすぐ来いよ。遅れたら親父に言ってお前ん家が商売できなくしてやるからな」

「……わかったよ。ちゃんと行くから」


 そう答えるとアレスは首に回していた腕を解き、楽しそうな足取りで離れていった。

 やっとのことで解放されたポポはうんざりしながら歩いた。

 悪いことを手伝えと言われて嫌だと言えない自分が嫌いだった。


 とぼとぼと歩く。そういえばどうして歩いてるんだっけ? と思って、すぐにあの子に会うためだったと思い出す。しかし今の自分でどんな顔をして会えばいいのかわからない。

 悪いことをする人は嫌いだろうな、と思う。あの子はきっといい子だ。

 ポポは昔からその辺の感覚が鋭い。人間の本質というか、なんというか、その人の人柄がなんとなくわかった。

 そんな感覚でわかるのだ。あの狐の少女は物凄く純粋な少女であると。


「あ」


 大きなため息を吐こうとしたときに、ポポは見覚えのある人を見つけた。

 その人は嘘つき男だった。ずっとフードを被っている怪しい男。今日は誰も一緒にいないように見えた。

 嘘つき男は何をしているのか、マヌケ面をしてどこか遠い空を眺めているように見える。


 さっきまでのポポなら、この男を見つけてすぐに回れ右をするか、難癖をつけに行ったかもしれない。しかし今はなんとなく、声をかけたい気分になった。


「おい」

「……ん?」


 声をかけてからやや間があって返ってきた返事。それと同時に嘘つき男はこちらの顔を見て、本当に少しだけ笑顔を浮かべた。


「昨日の……ポポって言ったっけ? 俺になにか用か?」

「こんなとこで何してんだ?」

「まぁ……ちょっと暇だったから。散歩ってとこかな?」

「お前働いてないのか?」

「どうだろうな。今が勤務してるって言えるのかどうか。給料がちゃんと出ればいいんだが」

「……? 何言ってんだお前」


 言っている意味がわからずポポは顔を眉間に皺を寄せた。

 嘘つき男は肩をすくめてみせた。


「君こそこんなとこで何してるんだ?」

「オイラは──」


 そこまで言ってどう言うべきか悩んだ。

 あの子を探していると言うのは恥ずかしいし、散歩と言ったらこの嘘つき男と一緒になってしまって、それはなんだかヤダ。


「……散歩、だよ」


 しかし、特にめぼしいことが思いつかなかったポポは、口先を尖らせてぼやいた。


「そうか」


 嘘つき男はただそれだけ言った。

 ポポは困った。

 何を話せばいいのかわからないし、この場から離れるのもなんだかしづらい。


「名前は?」

「ん?」

「名前だよ。兄ちゃんの名前。なんて言うの?」

「ああ……ソラだよ。ソラ──……だ」


 ポポは違和感を覚えた。嘘つき男は苗字を言おうとしてやめたように思えた。それがどうしてなのかはわからなかった。しかし、そういうところも含めてやっぱりこの男は怪しいと思った。


「大丈夫? なんだか上の空だけど」

「難しい言葉を知ってるな」

「そう?」

「ああ。普通君ぐらいの歳の子は上の空なんて言葉使わないよ」

「でも、本で読んだんだもん」

「本が好きなのか?」


 男が少し食いついたように見えた。


「うん。本を読むのが好きなんだ。『建国記』とか『ルグドミレニア』とか『神獣族』とか。ひいおじいちゃんがチシキジンだったから古い本がたくさんあって。暇なときによく読むんだ」

「へぇ。でもどれも知らないな。どんな本なんだ?」

「『建国記』はこの国の成り立ちについて。知ってる?」

「……確か、神様がこの世界を支配する為に遣わせたんだよな?」

「そうだよ。獣人はもともと楽園にいたんだけど、ある時神様がこの世界に導いたんだ」

「楽園?」

「うん。獣人にとってそこは理想郷なんだって。『ルグドミレニア』は王族の話。王族は獣人がこの世界に来るときに選ばれた人なんだってさ。それで歴代の王様が何をやったかとかが書いてあるの」

「選ばれたって誰に?」

「神獣族だよ。王族は神獣族の末裔なんだって。本当の姿じゃないから本来の力は出せないみたいだけど。本当の姿になれたらすごいことができるんだって。『神獣族』にある内容だと、山を抉ったり、首を切られても生えてきたり」

「頭痛がしてきそうな内容だな……。ま、俺の国も似たような感じだけど。大昔の初代の皇は神様だったって話だしな。でもそれにしてもな」

「やっぱり? オイラも信じてない。だってそんなのあるはずないし──どうかした?」


 ポポは心配そうに嘘つき男の顔を伺った。

 何やら青い顔をしている。


「い、いや、なんでもない」

「? なんだよ。気持ち悪いな」

「それよりも、昨日よりもずいぶん優しいんだな。噛み付いてきそうな雰囲気だったのに今日は大違いだ」

「う、うるさい! お前がなんだか落ち込んでるみたいだったから優しくしてやったんだ!」

「別に落ち込んでるわけじゃない。それより君こそどうした? 浮かない顔をしていたが」

「なんにもないやい! あーあ! 時間無駄にした! オイラは忙しいんだ。お前なんかに構ってる暇なんかないの!」

「君から話しかけてきたと思うんだが?」

「うっさい!」

「というかお前ティナを探してるんだろ?」


 その場から離れようとしたポポの足がピタリと止まった。等速直線運動を無視したかのような完全停止である。

 ポポは悩んだ。ここで嘘つき男と話すのはなんだか負けたような気がする。でもあの子の情報は欲しい。


「……ティナっていうのか?」


 やや上擦った声。悩んだ末にポポはプライドを捨てることを選んだ。


「やっぱりな。お前惚れてるだろ?」

「そんなんじゃないやい! ただ、ちょっと気になる? っていうか。そう、友達! 友達になりたいなーって」

「友達……友達ね。まぁいい。あの子なら朝早くから出かけててな。戻ってこないからちょうど俺も探してたところなんだ。よかったら一緒に探すか?」

「……困ってるのか?」

「ああ。割とな。変な奴に絡まれてないか心配だ」

「じゃあ仕方ないな! オイラが手伝ってやる!」


 人助けということにポポの心は踊った。

 そうすることで自分が今夜行わなければならない悪事の罪が軽くなる気がした。

 嘘つき男は「助かる」と一言言った。


 それからポポは男の後ろをついて歩いた。

 歩きながらティナの姿を探すものの、どこにもその姿はない。いればすぐにわかるはずである。何故ならハーフの子供なんてこの町でもそこそこ珍しいからだ。それなりの規模の町だが、おそらく二十五人居ればいい方ではないだろうか。

 そんなこんなでティナ探しをしているのだが……


「……」


 ポポはどこか呆れたような目つきで嘘つき男の背中を眺めていた。

 さっきからこの男はやたらとキョロキョロしたり、同じ道を何度も通っている。そして終いには困ったように頭を掻いている──そんな光景をポポは頭の後ろで手を組みながら見ていた。


「兄ちゃんはこの町初めてなのか?」

「……なんでわかった?」

「いや、なんていうかさ、なんとなく動きがぎこちないって言うか。あんま道わかってない感じだから」

「すまん。実は道に迷ってるんだ。というか複雑すぎる」

「歴史ある町だからね。その分いろいろごちゃごちゃなんだ。そろそろクカクセイリをするって話はでてるけど。それはそうと、そうならそうって早く言ってよ。ここに詳しい人がいるんだからさ」

「……すまん」

「言っとくけど、この鉄砲屋の前なんてもう三回も通ってるからね。オイラに買ってくれるのかと思っちゃったよ」

「欲しいのか?」

「そりゃね。だってかっこいいじゃん。一回くらい撃ってみたい」

「俺はそうは思わないな」

「どうしてさ」


 疑問に思ってポポは男の顔を仰ぎ見た。その顔はいつになく真剣で、彼は顎に手を乗せて考え込んでいた。


「人を、簡単に殺せるからな」


 音をひとつひとつ慎重に選んだように、遠慮がちに出された言葉をポポは鼻で笑った。


「そんなの使う人次第でしょ。オイラは人に向けようなんて思わないし。それに護身用には必要だと思うし。ほら、何事も人生経験だよ」

「……そうだな。そうなんだけどな」

「そういえばどうしてティナ──ちゃんはいなくなっちゃったの?」

「わからない。本当に突然で。ただ──」


 嘘つき男の言葉はそこで終わってしまった。

 なんだよ、とポポは思った。途中まで言ったなら最後まで言えばいいのに。

 そう思って男の顔を見てギョッとした。その顔がひどく落ち込んでいるように見えたからだ。


「ど、どうしたんだよ。兄ちゃんひどい顔してるよ?」

「別にそんなつもりはないんだけどな」

「嘘だよ」

「……無力だと思ってな。俺がもっと別の言葉をかけてあげればこんなことにはならなかったかもしれない。でも、俺にはそんな器用なことはできない。だから俺が何かをする度に人が傷つく」

「空回りってコト?」

「まぁ、そんなとこだ」


 そのとき、ふと思いついた。

 ひどく落ち込んでいたティナと、次の日になって明るくなっていたティナ。ティナがいなくなってしまったのは、その落ち込んでいたことが関係しているのではないか。そして嘘つき男はティナを励ます言葉を言って、それが逆効果だったと後悔しているのではないか。


「でも、そんなこと気にしたって仕方ないじゃん」

「そうなんだけどな」


 嘘つき男はため息まじりに言った。


「もしかしてあの白髪の人と喧嘩でもしたの?」

「……はぁ?」

「だってあの女の人、兄ちゃんのいい人なんだろ?」

「どうすればその考えに行き着く……」

「だって同じ狼のハーフだし、歳も近いし」

「歳が近くて同族だからってそんな関係なわけないだろ。だいたい、たぶん五歳くらい違うし」

「五歳くらい大人じゃ普通じゃないの?」

「普通じゃない、たぶん。というか、まだ子供だろ、あの子は。そもそも恋愛なんてな」

「……兄ちゃん、誰かのこと好きになったことないの?」

「いや、勿論あるが。ただ、恋愛となるとな。どうも中途半端な気持ちじゃしちゃいけない気がしてな」

「奥手だね」

「まぁ、そうだな。これでも堅物なんだ」

「いや見た目のまんまだよそれ」

「そうか?」


 嘘つき男が微かに笑ったように見えてポポは安心しかけ、そして心の中でぶんぶんと頭を振った。なんでこんな男がちょっと元気になったからって、こっちが安心しなきゃならないんだ。


「でも、さっきも言った通り、俺が関わって傷つけるのが怖くてな。困ってる相手に空っぽの言葉を投げかけて、そんな中身の入ってない言葉を言って、相手がそれで真剣に悩むかもしれないのに、言わずにはいられなくて。そういう人間だから他人に関わりすぎるのが怖いんだ」

「それって本当に空っぽなの?」

「ああ」

「でも、おかしいよ。言いたいってことは、それって兄ちゃんの中では大切な言葉だってことでしょ? 相手を想って言ったってことでしょ? それって本当に空っぽなの? 兄ちゃんの気持ちは篭ってるんじゃないの?」

「……そうかもな」


 肯定とも嘲笑ともとれる声色で嘘つき男は言った。

 それからわしわしとポポの頭を撫でてくる。


「な、なんだよ急に」

「良い奴だって思ってな」

「ちょ、やめろって。そんなわしゃわしゃ……オイラは犬じゃなくて猫なんだぞっ!」


 嘘つき男は笑った。高らかに、楽しそうに笑った。それは少年のような屈託のない笑顔だった。


「兄ちゃん、そっちが素でしょ。仏頂面してるより笑ってる方が似合ってるよ。普段からそうしたら? いつもの顔怖いよ。まるで人殺しみたい。もっと笑いなよ」

「そうかもな。……ま、全部が終わったら考えてやらなくもない。そんじゃ」

「どこ行くの?」

「ここからは手分けにする。そっちの方が効率がいいし」


 そう言って嘘つき男は歩き出し、一度首だけ回してポポに顔を向けてから再び前を向いて去っていった。

 止めようとしたが、手が伸びなかった。

 ポポにはティナがいそうな場所に心当たりがあったのに。

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