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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
41/41

ヤンキーと卒業


 よう、久しぶりだな。


 今日はよ。


 いつぶりだ?


 20年ぶりくらいか?


 25年行ってるか?


 いや、そりゃ言い過ぎか。


 俺まだ23だもんな。


 つーかよ。


 今日はお前にちょっと報告があってよ。


 ああ、そうだ。


 実は俺よ。









 子供が産まれたのよ。


 おう。


 ユミの野郎がよ。


 ヤザワみてえなカッケー赤ちゃん産んでくれたよ。


 マジでヤザワだよ。


 YAZAWAだよ。


 ゴールドラッシュよ。


 名前?


 名前は尊敬する"あの人"からもらったよ。


 そう。


 俺が大好きな、あの男━━









 グアルディオラだよ。


 そう。


 世界一のサッカー監督。


 天才、ジョゼップ・グアルディオラ。


 通称ペップだよ。


 俺の子供ガキにはよ。


 ペップのような戦術家になって欲しいわけよ。


 え?


 漢字はどう書くんだって?


 馬鹿野郎。


 んなよ、呆れたような顔すんなよ。


 そこはちゃんと付けたよ。


 倶亜留ぐある出雄羅でおらだよ。


 そう。


 だから俺の子供ガキは、磯野倶亜留出雄羅だよ。


 イカすだろ。


 でよ。


 そいつを見てたらよ。


 ふと、胸にある想いが浮かんだのよ。


 俺もよ。


 ちゃんとしねえといけねーんじゃねえかって。


 いつまでもこんなリーゼントしてよ。


 こんななってねえ喋り方でよ。


 この倶亜留出雄羅が、俺みてえになっていいのかって。


 人から嫌われてよ。


 疎まれてよ。


 こんな可愛い俺のガキが。


 そんな人間になっていいのかって。


 そう思ってよ。


 ヤンキーを━━











 引退しようってよ。


 そう決めたのよ。


 俺ぁよ。


 今後の人生。


 倶亜留出雄羅に恥じないように生きていこうと決めたんだ。


 倶亜留出雄羅が、俺みてえになって、学校で嫌われたり、社会で苦労したり。


 そうならねえように、ちゃんと教育しようって。


 そう思ったんだ。


 だからよ。


 俺もよ。


 いよいよ引退だよ。


 もうリーゼントも辞める。


 特攻服も辞める。


 警察をマッポと呼ぶのもやめる。


 ガニ股も辞める。


 これからはよ。


 社会に嫌われねえように生きる。


 不良は卒業だぜ。


 ……え?


 子供の名前?


 辞めたほうがいい?


 可哀想?


 バーカ。


 んなもん、冗談に決まってんだろ。


 いや、産まれる前までは本気だったんだけどよ。


 実際、市役所までは行ったんだけどよ。


 届けを出す前、ユミに相談したんだよ。


 そしたらよ━━










 




 ジャイアントスイングされたよ。




 うん。


 めちゃくちゃ回ったよ。


 そりゃあもう。


 このまま浮くんじゃねえかってくらいにな。


 分かるか?


 ユミのこの怒りが。


 臨月の妊婦がジャイアントスイングだよ。


 そりゃ尋常じゃねえよ。


 ただごとじゃあねえよ。


 だからさすがに辞めたよ。


 うん。


 だからな。


 息子の本当の名前は別だよ。


 俺の尊敬するもう一人の男。


 彼に、名前をもらった。


 そう。


 俺の子供の名前は。








 磯野永吉だよ。



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