第十五話 中間テストと家庭訪問①
「おい、お前ら、修学旅行で浮かれる気持ちはわかるが、来週はテストだぞ」
担任の今田が黒板を軽く叩いてそう言った。
「……あ」
血の気がひいていくのを感じる。そうだ。5月の最終週、つまり来週はテストなのだ。
テストが終わってから、気持ちよく修学旅行にて羽を伸ばす。普通の生徒はそうなのだが……
「このテストで赤点のものは修学旅行中補修授業があることを忘れるなよ?」
問題はここなのだ。俺の記憶が確かならば、この補修授業というのは朝6時から開催される。つまり、赤点をとってしまうと、おまじないに行くことは到底叶わなくなってきてしまうのだ。
「やっべ!! そうだった!!」
俺の真横で同じように血の気がひいていく前楽がいた。何よりやばいのは、この後の展開だ。
「祈里、お願いだ! 俺に勉強を教えてくれないか!?」
「…………」
参った。とことんまいった。俺は俺であるが故に勉強なんて教えられるわけがない。けれどもここで断っては前楽が赤点をとって、補修となり、世界が滅亡してしまう!
「い……いいよ? 週末うち来る?」
「やったぜ!! ありがとう、祈里! 恩にきるよ!!」
「あ……あはは。うん。が、ガンバロウ……ね」
つい、どうしようもなくて、出来もしない約束をしてしまった。
「メズルフは?」
「私ですか? 私にテストは関係ありませんよ?」
「な、なんでだよ?」
「まぁ、テストを受けはしますが、テストの成績は関係ないので」
「ずるい……いいなぁ」
「と、いうわけで、私は今週の土日ちょっと遊びに行ってきます」
「遊びに?」
「まこまこが、楽しいところに連れて行ってくれるそうなんですよ! ねー!」
意気揚々とメズルフがそういうと正面に座っている黒縁メガネがくるりとこちらを向いた。
メズルフと真心は楽しそうに笑っている。
「まぁね! メズルフなら絶対喜んでくれると思うんだよ」
「あぁ? どこにいくんだ??」
「楽には内緒ですー!」
「ま、そゆこと。祈里、そういうわけで、メズルフは週末うち来るから」
「わかったよ……いや、全然わからないけど。とりあえず楽しんでね」
「はい♪」
「ありがと」
週末メズルフがいないということは前楽と俺は二人きりで勉強会になる。俺と俺の二人きり……こんな嬉しくない二人きりがほかにあるだろうか、いや、ない!!
だが、このままだと二人ともわからない勉強を前にうんうん唸って終わってしまう。俺も前楽も補修になるわけにはいかないのだ。
そこで、前回のテストの時は俺が祈里に教えてもらった。けれども付け焼き刃で手にした知識しかない俺に教師の真似事は無理だ。どうにか、前回のように祈里に頼むことはできないだろうか。
俺は次に祈里が起きてきた時を狙って、相談してみようと思うのだった。




