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第八話 救世主とマル秘事項

「はぁ!? まだやってるの?」

「そうなの、困ったよ。あの日以来ずっと画面にしがみついているんだ」


 次の週の朝。俺は真心と教室でメズルフの事を話した。

 先週の火曜日にゲームを借りて、それ以来学校に来てもいない。何をやっているかと言うともちろんあのBLゲームだった。


 この頃になると俺は祈里のふりをするのに慣れて来て、自然と女言葉で真心と話ができるまでになっていた。

 まぁ、色々と困った事もあったけれども、祈里と続けている文通で何とか打破できている。

 このままいけば、この学校では祈里ではない事はバレないという自信はあった。


「しかも、ヘルモードでやってるんでしょ?」

「そうみたい。ヘルモードの天使が楽の塩対応にそっくりなんだって」

「そう言えば! 最初にメズルフが来たの日も楽の事に気があるって言ってたっけ? ……ははぁん、そう言う事ね?」

「え?」


 真心は嫌らしい顔で私を見ている。この子がこういう顔をする時と言うのは大体悪いことを考えている時だった。嫌な予感しかしない。


「あ、来たよ」

「来た?」


 真心の視線をたどると前楽が眠たそうに教室へ入ってきた。相変わらず俺の机とメズルフの机と前楽の机は繋がったままだった。


「お、おはよ」

「おはよ」


 これが今の前楽とのせいぜいの会話。俺は攻略どころか、まるで近づけもしないでいる。例の天秤の針もそのまんまだった。

 しょんぼりとしていると、真心が振り向いてこっちを見た。


「ねぇ、楽? この間からメズルフが体調崩してるのってあんたの所為らしいよ」

「はぁ!?」

「へ!?」


 前楽と俺は同時に驚きの声を上げた。


「ちょ、ちょっと真心!?」

「あんたに嫌われたって思って伏せているんだってさ、ねぇ祈里?」


 真心がこっちを見てウインクをしてくる。これは、便乗した方が事が進むかもしれないと俺は直感で判断した。


「そ、そうなの、今はげっそりして手目の下にクマが出来てるよ」


 俺がそう言うと真心が良い感じ!と言わんばかりの表情をしてきた。


「だから、今日の放課後にお見舞いに行こうよ??」

「……なんで俺が」

「だって、この間屋上でのことがあってからずっと元気がないもの。あんたの責任よ!」

「……」

「あのね、メズルフがいれるのあと3週間くらいじゃない? このまま学校に来なくなっちゃっても良いの?」

「……それは、確かにそうだけど」

「じゃぁ、決まり! 放課後、メズルフを励ますの会をしよう!」

「ちょ、ちょっとマジかよ!?」


 楽は強引に約束を取り付けられて困った顔をしている。あともう一押しだ!


「あのさ、ごめん。無理にってわけじゃ無いんだけど……私も来て欲しいな。私の家に」


 俺は敢えて『わたしの家』を強調してそう言った。するとピクンと楽が反応した。思った通りだ。この俺が祈里の家に興味がわかないはずがない!


「……そう言えば、メズルフは祈里の家にいるんだっけ?」

「そうだよ。だめかな?お茶とお菓子くらいは私出せるよ?」

「祈里の……家……お茶とお菓子……!!」

「あ、でも用事があったかな? それなら無理にとは言わないけど……」


 ワザとちらちらと前楽を見る。前楽は何かを妄想しているようだ。相変わらず気持ちが悪い。


「あの、楽?」

「あっ!! えっと……行く! 大丈夫。用事なんてないし!」

「良かったぁ!」

「じゃぁ、放課後に玄関で待ち合わせね!」


 真心が最後は取りまとめるようにそう言った。

 丁度担任の今田が入ってきて朝の井戸端会議はここで終了。


 こうして、俺は真心と前楽を引き連れて家に帰る事になるのだった。

 懸念があるとすれば、あのアホ天使……何も打ち合わせなしで合わせることが出来るやつじゃない。

 ぼろが出なければいいけど。


















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