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第七話 仮想現実と男男恋愛②

 俺とメズルフは家に上がると早速リビングへと向かった。

 祈里の部屋にはテレビの類は無かったし、ゲームがあるならきっとここだ。

 そうおもい、テレビの周辺の棚を開けて見ると思いのほかすぐにゲーム機が見つかった。ご丁寧にその横にはソフトを入れるケースが綺麗に並んでいる。さすが、祈里、どこまでも綺麗好きでしっかりと整頓されてる。


「そういえば、お前、何時から恋愛シュミレーションゲームなんて知ってたんだ?」

「はい?」

「いや、屋上でのことを思い出してな?」

「ああ。口から出まかせ言っただけですが、恋愛ゲームに関して言えば以前魂を運んだ女の子が言っていたのです」

「そう言えば、三途の川をこぐのがお前の仕事だもんな」

「ち、違います!!」

「は?」

「……あれは訳があってやっていた雑用。本来の私の仕事は魂の導き。死者を天界へと迷うことなく送り届けるのが仕事なんです」

「ああ。死んだ人の魂が空に向かって行くときに天使って出てくるもんな」

「んー、まぁそんなもんですね」

「あれ、仕事だったのか。なんか夢がねぇなぁ」

「天界にもいろいろあるんですよ」

「ふーん」

「ほらほら、そんな話はどうでも良いです。ゲームをやってみましょ!」


 メズルフは半ば強引に話を区切ったように見えたが、ただゲームがしてみたいという風にも見える。まぁ、あまり聞かれたくない内容なのかもしれないと、俺は手元の袋を開けた。


「真心さん曰く、『軽め』のを入れておいたって言ってました」

「軽め?」

「まぁ、『そう言う行為』がないところまでの健全なゲーム、と言う事でしょうね」

「……考えないでおく」

「また、そんな事を言って!このゲームで、少しでもそういう固定概念を取っ払ってくださいね?」

「なんでこんな事になっちゃったんだか……」


 俺は盛大にため息をついた。


「それはさておき、どのゲームやりますか?以前から祈里さんが借りていたものと合わせて4本ありますよ?」

「そこはメズルフに任せる」

「ふーむ……了解です! どれにしようかな?」


 そう言って、メズルフはパッケージの裏の説明を読んでいる。

 俺はその間に飲み物を取りに、キッチンへと向かった。今朝食べた後の皿がそのまま残っている。


「そっか……誰もいないってこうなるよな。皿、洗わねぇと……あと今日の晩飯……」

「らくー!! はやくー!!!」


 そう思っていると、メズルフのこえがリビングから聞こえてくる。仕方がない、皿洗いはあとでやろう。


「今行く!!」


 俺は結局、飲み物二つを手に、洗い物を残したままリビングに戻って行く。

 リビングへ戻ると、メズルフはニヤニヤしながら俺の事を待っている。なんだ、この嫌らしい笑みは。


「ほら、コントローラー!」

「はいはい。えっと……どんなゲームを選んだんだ?」

「これです!!」


 良いムードの音楽と共に、タイトル画面が表示された。


『ラブ☆エンジェル ~秘密の薔薇園で君を待つ~』


「ぶはっ!!!!」

 これを見た瞬間、俺は盛大に噴き出した。

「どうですか!! 天界から落ちてきた天使を主人公が助けるところから始まる恋愛シュミレーション!!『ラブ☆エン』人間界の事が解らず手取足取り教えて行くゲームみたいですよ!!」

「……」

「どうしました?」

「お前、天使なのによくこれ選んだな!?!?」

「天使だからですよー! 私だって楽しみたいし!!」

「そういうことなの!?」


 まさか、メズルフもBLが好きなのかと思い驚いてアホを見て見ると、メズルフはそれこそ何も分かっていないアホの顔をして首を傾げた。言っている意味が分かっていなさそうだ。


「え? そういうことって、どういう……?」

「……いや、なんでもない」

「とにもかくにもスタートですよ!!」

「へいへい」


 こうして、BLゲーム『ラブ☆エン』が始まった。

 最初は攻略できる男子たちの紹介オープニングが流れる。明るくて素直そうなキャラクター、カッコイイイケメンと言う雰囲気のキャラクター。落ち着いた大人の包容力を醸し出しているキャラクターや、逆に子供っぽいいでたちの若そうなキャラクターもいる。これが女の子なら良いのにな、と俺はどうしても考えてしまう。


 そして、主人公は天界から落ちてきた天使をたまたま見つけ、助けるところでオープニングが終了した。


「ねぇ、楽。これ、思った以上に面白そうですよ!?」


 終わると共に隣で目を輝かしたアホ天使が騒いだ。


「お前、目的を見失うなよ?」

「目的?」

「……おまえなぁ!?」

「はっ!わ、忘れてなんていませんよ!?ほら、楽がプレイしてください?」


そう言って、俺にコントローラーを渡してきた。


「さってっと。こんなのでおれの固定概念が崩れ去るとは思えないけど、ひとまずやってみようか」

「ええ!!」


俺の攻略ゲームが始まりを告げる。

だがしかし、俺たちはこの時まだ知らなかったのだ。

このゲームの本当の恐ろしさを……。





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