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勇者のクローン

「何、名乗るほどのものでもない。迷い込んだだけだ。それより、人に名を訪ねる時は自分から言うのが礼儀なのでは無いのか?」


いつの間にか後ろにいただけでなく、かなり厳密に隠蔽してある俺の存在に気付かれた。


「お前は魔族ではあるまい?勇者側の者か?」


「そう。私はアイギス。アイギス・ノルファ。ただ今回私は勇者をここに送り届けるのが目標。戦うことはしないから警戒しないでいい。」


「勇者に加勢しないと?」


「要らないって言ったのはあっち。それに、あなたがその気になれば私を簡単に殺せるはず。」


「そうでも無い。お前はかなり厳密に隠蔽した俺の魔力に気が付いた。戦えば、こちらも傷ぐらいは負うだろうよ。」


と、言っておく。あくまで俺は魔王。魔王である以上、他者に弱さを見せる訳には行かない。実際問題、魔剣や切り札の一つである帝剣を使えばまず負けることは無いのだがおいそれと使えるものでもないからな。


「その魔剣は、正直言って勇者の持ってる聖剣よりも強い。あなた何者?あそこで戦ってる人達より…強い?」


「さあな、ただの旅人だと言っただろう。」


そう言うと同時に、勇者が莫大な光を放つ。異能を全て聖剣につぎ込んだか。そうでもしないと、アルカード達を倒せないと踏んだのだろう。


「悪いがこれで終わりだ、くそ魔族共!!」


「無駄口を叩かずにとっとと来い。貴様如きにこの砦は落とせん。」


「はっ、黙ってろ。俺は光の勇者…限界を超える者、シルベスタ」


「興味ありませんね。貴方ように、異能を頼りきっている勇者の名前など。前勇者はあなたの何倍も強かったですよ?」


そう言って、魔力を莫大に高めるアルカードとシルビア。両者の高まった魔力は激突し…


「残念だけど、勝負は決まった」


「ああ、アルカードとシルビアの勝ちだな。あれではあいつらを倒せん。闇のものが光を対策するのは当たり前だろうに」


「…??」


勇者が幾度となく光を放つも、アルカードやシルビアは倒せない。あの者達は前魔王…俺の父親が育てたもの達だ。当然、勇者に対抗する手段はある。と、言うよりも当たらなければどうということは無い。


さらりと避け、勇者の腕を切り落とすアルカード。勇者が驚いた隙をついて、心臓を穿つシルビア。

いい連携プレイで追い詰めた。勝負は決まっただろう。だが、その命が果てる瞬間、アイギスが動いた。


「助けには向かわせぬ。悪いがここに手を出した愚か者は、須く消滅してもらう。勇者の命は諦めるが良い。そうすればお前は助けてやるが?」


「………私は、勇者を助ける。それが私に与えられた役割。」


そう言って、勇者のそばに転移したアイギス。それを追って、俺も転移する。


「魔王様、やはり要らしておりましたか。」


「…魔王?」


「ああ、勇者とやらの実力が気になってな…だが、これは」


「ええ、勇者にしては弱いかと…」


その言葉を聞きつつ、俺は自身の目に埋まっている魔眼イデアを起動する。

魔王族は系統は違えど魔眼を有する。俺の場合、それがこれだ。

この魔眼イデアは魔眼にしては珍しく、攻撃用では無い。魔眼はその殆どが効果が違えど攻撃目的の能力がほとんどだ。

魔眼イデアはイデアに接続しあらゆる万象を見抜く眼だ。


「ふん。やはりか。父上…前魔王から聞いた勇者のイメージでは、もっと強いはずなのだがな。お前、異能を与えられただけの急造品だな?」


「今代の魔王は頭が回りすぎるようだな…ああ、俺は偽モンだ。この異能は死ねば本物に帰る。本物……はお前らが疲労するまで待ってるだろうよ」


そう言って、絶滅する勇者の代替品。


「出てきたまえ、本物の勇者よ。お前の目的は力を削いで、ここを確実に落とすことだろう?」


「は、バレたかよ。安心しろよ、そいつは俺のクローンだ。とは言っても、ここで引かせてもらうがな。魔王が出てきた以上は分が悪ぃ。」


「覚えてて。私たち勇者同盟は、7日後に魔王城を強襲する。その魔王城を落としてみせる。」


「あばよ。」


そう言って消える勇者同盟とやら。いつの間にか人間どももいなくなっているな。さて、後始末をどうしよう………ああディアボロス…丸投げしていいかな…


「この砦にいる全魔族に告げる。よくぞ守り抜いた。俺はお前たちを誇りに思う。お前達のような勇敢な兵士を持てて、王として幸せである。これからも励め」


そう拡散の魔法で声を乗せて言う。


「そろそろ俺は戻る、お前は休むが良いアルカード。」


「シルビア、よくやった。それでこそ父上が認めた城主である。お前もよく休むが良い。7日後、力を借りることになるやもしれん」


「は。この勝利はエスカ様に」


そう言ってシルビアは下がっていく。さて、最後の仕事をしなければな…


「アルカード…何人、死んだ?」


「…………5名ほどでございます。」


「そうか…ゆっくり休むが良い。俺は戻る。」


そう言って自室に転移する。魔王になるのも案外疲れるな…言葉遣いとか。


それにしても…5人も死んだか。5人で済んだ、と言うべきなのかもしれんがな。人間共はそれなりの数いた。だがクローンを使って確実に戦力を削ぎに来た所を見ると、シルビアの強さは、あの砦の不落さは知っているようだ。今回の人間共は本気ということか、あるいは最強の魔王である前魔王、エクリプスが消えた今こそ勝機と見ているのか…


「魔王城は落とさない。誰にも絶対に。」



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