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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十九章 うまい話には裏がある

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第90話 アナログ技術の最新式

「ったく!アメリアには期待していたのによう……おごりってここのことかよ。まあいい店だから良いけどさ。アタシの酒はここにしかねえから」 


 数時間前まで深刻な顔をしていたかなめはそう言いながらもニヤニヤしながら次々とつくね串を口に運んだ。そんな彼女の後頭部にお盆の一撃が加えられた。


「うちでなんか文句あるの?今日はアメリアの姐さんからの監視の指示が出てるからおとなしくしているのよ!それに今回はアタシがヒロイン。アンタは敵役。その点は心得ておくことね!」 


 かなめを殴ったこの店の看板娘、家村小夏はそう言い残して厨房に消えた。焼鳥屋『月島屋』の一階のテーブル席に誠とかなめとカウラの三人が座っていた。


「まあ、アメリアなりに自分がやりたいようにやってることで私達に迷惑をかけている自覚が有って気を使っていると言うことだ。それに私はここの鳥モツは大好きだがな」 


 カウラはそう言いながら大きな湯のみで緑茶を飲み始めた。


 アメリアが言うには撮影はすべて釣り部の監修で作った簡易3Dシミュレータを使うと言うことで、その場面やデータの入力の為にアメリアと運行部の数名が引き抜かれて徹夜で作業をするということだった。当然、機動部隊長のランが隊長の嵯峨へ機械の会議室への搬入の許可を上申することになる。その手間を考えると誠もデザインとして一枚噛んでいるだけに申し訳ない気持ちで一杯になった。


「しかし今回はセットとかはどうするんだ?去年のようなドキュメンタリーじゃ無いんだろ?あれか?グリーンバックで合成か?まあ二十世紀末をどこまでも再現しているこの国のテレビ局はまだそんな技術でやってるけどな。映画界なんて地球並みの合成技術で作ってるって言うのに……まあ、甲武も人のこと言えねえか。平民向けの映画館はすべて白黒の無声映画しかやってねえからな。今時、甲武には普通に活弁が居るなんて地球人が知ったらびっくりするだろうな」 


 カウラはご飯に豚串とトリモツを乗せた特製その名も『カウラ丼』を口に運ぶ。誠はそんな彼女をいつものように珍しい生き物を見るような視線で見つめていた。同じくどんぶりを口に運ぶカウラに驚いた表情を浮かべるかなめは思い直したように咳払いをすると説明をはじめた。


「前のあれがドキュメンタリーだったかどうかは別としてだ。まあ説明するとだな。まず場景を立体画像データとして設定するわけだ。たとえば家の台所とかのまあセットみたいなものをコンピュータに認識させるわけ。そしてその中にデータ化された役者を投入する」 


 かなめは何も知らないカウラ相手に得意げにそう言った。


「そこが分からないんだ。どうやってするんだ?」 


 あまり部隊の任務以外に関心を示さないカウラが珍しくかなめの言葉に聞き入っているのを誠は微笑みながら見つめていた。


「まあ、ここ数年の地球からの技術移転で東和の映画界でも使用されるようになった精神感応系の技術の向上はすごいからな。まあヘッドギアを役者……つうかアタシ等は素人だからそう呼ぶのも気が引けるけど、それをアタシ等がつけてコンピュータ内部に入り込んだような状態で中で台詞を読んだり動いたりするわけだ。わかるか?」 


 そこまで言うとかなめはレバニラ炒めを口に掻き込んでそのままビールで胃に流し込む。特性のカウラ丼を頬張りながらまだ納得できないと言うようにカウラが首をひねっていた。



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