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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十七章 作業は快調に進むものの

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84/201

第84話 楽しみにする観客

「あ、聞いてなかったんですけど、そのテーマはどうなったんです?ファンタジーとか、弟が好きなんです!いくら際どい衣装が多くてもファンタジー世界なら良くある話ですから!エルフとか出てきますよね?当然ここは東和で法術の国ですから魔法なんかも出てきますよね?たのしみだなあ……」 


 純粋無垢なひよこは嬉しそうに誠に尋ねた。


「確かに魔法は出てきます。魔法少女モノに決まったんですよ、アメリアさんが言ってた案が通ったんです。しかもアメリアさんの案だとかなりバトル系の色彩が強い作品になりそうです」 


 誠の言葉にひよこの目が点になった。


「クラウゼ少佐のアイディアが通ったんですね?うちは弟はサラさんのロボットものの方がよかったんですが……まあ、女の子向けと言うのもアリかもしれませんね」 


 ひよこは一言そう言ってため息をついた。カウラは黙ってマガジンをはずした誠の銃を点検していた。


「はあ、小夏ちゃんがヒロインでライバルがランさんだとか。それとなんだか知らないけどアメリアさんがロボットも出すって言ってましたから期待していてください」 


 誠の言葉にひよこは理解に苦しんでしばらく考えた。


「そう言えば、私は釣り部にうち専属のお医者さんが居るのでそちらに誠さんの法術能力のデータのやり取りをしているから聞いてるんですけど、釣り部の中に元映像作家だった人が居たような……本職は傭兵だったらしいですけど」 


 戸惑いながらひよこはそうつぶやいた。


「そんな人がいるんですか?釣り部に?」 


 誠は『ありとあらゆる世界から釣りで人生を誤ったその道のプロ』が集まる艦船運航部こと『釣り部』の存在を思い出した。


「私も又聞きですけど傭兵だって戦争が無い状態でも暮らしていかなければならないですから。それに命を懸けてる釣りにどれだけの金がかかるか……それなりに稼げる仕事じゃないと生きていけないってことですよ……その人サイボーグらしいですから。義体の維持に結構お金ってかかるじゃないですか」 


 カウラが誠の首に湿布を貼るのを見終わるとひよこは再び机の上のポエムノートに目を向けた。


「はい、終わりました。また西園寺さんを放置しておいたら大変ですからもう行っても大丈夫ですよ」 


 ひよこの言葉を背中に受けると誠はすばやく置いてあった勤務服の上着とベルトを手にした。


「あのーカウラさん……」


 誠の一言に納得したようにカウラは白い病室のカーテンを閉めた。


「アメリアの馬鹿が作るんだ。期待はするな」 


「違うベクトルで見に行きたくなくなる作品になるでしょうね、市民の人達には。一部のコアなマニア……アメリアさんのゲームのユーザーとかは見たがるかもしれませんが」 


 ひよことカウラが外で愚痴をつぶやいている間にジーパンを脱いで勤務服のスラックスに足を通した。急ぐ必要は無いのだがなぜか誠の手は忙しくチャックを引き上げボタンを留めベルトを通した。そして上着をつっかけて、ガンベルトを巻くと誠はそのままカーテンを押し開けてため息をついているカウラとひよこの前に現れた。


「お大事に」


 そう言うとひよこは机の上の端末に向かって仕事を始めた。誠達はそのまま一礼して医務室を出ると一路実働部隊の詰め所へと向かった。



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