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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十七章 作業は快調に進むものの

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82/201

第82話 いい加減にしてほしい目覚め

 誠が意識を取り戻してまず見上げた天井は白く、ただ何も無く白く輝いて見えた。


「大丈夫か?当たったものから考えれば大丈夫だと考えるべきなのだが」 


 のぞき込んでいるのは勤務服姿のカウラだった。半分呆れたようなその表情に誠は照れ笑いで返した。


「みなさん来てください!誠さんが起きましたよ!」 


 看護師のひよこの声が響いた。誠は首に違和感を感じながら起き上がった。いつもかなめやカウラに運ばれてくる自分がひよこにどう思われているかを考えて誠は苦笑いを浮かべた。


「首やっぱり痛みます?軽い捻挫だと思いますけど無理はしないでくださいね。頭の方は大丈夫だと思うので隣の工場の病院で検査する必要とかは無さそうです」 


 そう言うひよこの表情は諦めにも近い顔をしていた。


「僕は……どうしてここに居るんでしょうか?」 


 誠は飛んできた茶色い巨大な塊に押しつぶされて意識を失ったことを思い出した。


「まあ西園寺さんもいつものように悪気があった訳じゃないんですから。まあ当たったのが発泡スチロールの柱ですからあまり威力は無いですし。それにしても誠さんは怪我とか多いですね。もっと緊張感を持っていないと戦場では命とりですよ」 


 ひよこが苦笑いを浮かべながらこぼした。最近わかったことは予算の都合で医師は隣の工場頼みで専任の医師がつかないことがひよこには不満のようだった。時々、整備中に怪我をする整備班員達の世話ばかりでなく法術関連の資料の整理など、誠が来る前の体制とは全く異なる勤務に明け暮れるひよこには同情せざるを得なかった。


「湿布は……ここか。ひよこ、これを貼ればいいんだな?」 


 カウラは薬品庫を慣れた手つきで開けた。


「それにしても映画ですか……楽しみですね。どういうストーリーなんですか?子供も楽しめる作品にするとか言ってましたけど」 


 そう言うとひよこは席に戻って書物を開いた。


「そう言えばひよこさんには弟さんもいるんですよね」 


 ワイシャツのボタン外しながら誠はそう言った。子供の話と聞いてひよこは明るい顔をあげた。


「ええ!作るのは子供向けですよね?楽しみだなあ……」 


 家族の話を振られてひよこがうれしそうに振り向いた。


「まあ子供向けというより大きなお友達向けだな。あまり子供に勧めたい内容の物をあのアメリアが作るとは思えない」


 カウラの言葉にひよこは理解できないと言う顔で首をひねった。


「それってどういう意味なんでしょう?うちは貧乏なんでテレビが無いんで、良くそう言う言葉が有るのは知ってるんですけどその意味がいまいちわからなくって……」


 ひよこの一家はひよこの給料と母親の遺族年金で公団住宅で生活している。弟の学費もあり、決して豊かな生活とは言えないものだった。


「まあ、あれだ。かなり大人の観客を意識した衣装の女性キャラクターが多く出てくる作品なんだ。あんな際どい衣装のキャラが沢山出て来る映画など子供に見せるものでは無い」 


 カウラはそう言いながら首をさらけ出す誠のどこに湿布を張るかを決めようとしていた。


「際どい衣装って……そんなの上映して平気なんですか?去年がひどかったからってやりすぎですよ、それは」


 ひよこも常識人なのでカウラの言葉にすぐさま常識的な返答を返した。


「それでも決まってしまったものは仕方がない。あとはアメリアの監督としての手腕で何とか……なるわけないな。と言うかアイツの作る映像の主たるものはアダルトゲームだからな。当然内容もその傾向が強くなる。困ったものだ」


 カウラもひよこにそう指摘されてしまうと、アメリアに常識的な展開を期待することを完全に諦めていた。



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