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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十六章 失敗に学ばない人

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第79話 トラブルメーカーズ

 それまで静かにしていたアメリアが満面の笑みをたたえながら歩いてきた。何も言わず、そのままかなめと誠が覗き込んでいるモニターを一瞥した後、そのままキーボードを叩き始めた。そしてそこに映し出されたのは典型的な女性の姿の怪物だった。ひどく哀愁を漂わせる怪人の姿をかなめがまじまじと見つめた。


「おい、アメリア。それ誰がやるんだ?絶対断られるぞ。アタシの怒りをより恥ずかしい格好で相殺しようって腹か?そんな手に乗るかよ!」 


 誠の首をギリギリとそのサイボーグの怪力で締め上げながらかなめは諭すようにアメリアに語りかけた。


「ああ、これはもう本人のオーケーとってあるのよ!かなめちゃん……自分の衣装がひどいひどいって言うけどこれに比べたらずっとましでしょ!だったら納得してあの格好しなさいよ!これは監督としての命令!私の命令は絶対!分かった?」


 何を根拠にしているのかよくわからない自信に支えられてアメリアが笑った。呆れて手を離したかなめから解放されて、誠は冷や汗をかきながらもう一度アメリアの指差す画面を覗き込んだ。そこにはほぼ全裸の薔薇女のようなものが映し出されていた。誠が冗談で描いた怪人キャラの中でも一番恥ずかしそうなものをアメリアはチョイスした様だった。 


「これって配役は確か月島屋の女将さんですか?僕は冗談のつもりでデザインしたんですけど本気でそれを使うつもりですか?正気ですか?アメリアさん。こんなの市の人が見たら一発アウトでしょ」 


 誠は恐る恐るそう言ってみた。その言葉にかなめももう一度モニターをじっくりと見始めた。両手からは鞭のような蔓を生やし、緑色の甲冑のようなものを体に巻いて、さらに頭の上に薔薇の花のようなものを生やしていた。


「おい、冗談だろ?小夏のかあちゃんがこれを受けたって……本人がオーケーしても小夏が断るだろ。アタシだってお袋がこんな格好して映画に出るなんて言ったら止めにかかるぞ」 


 かなめはそう言うと再びこの怪人薔薇女と言った姿のコスチュームの画像をしげしげと眺めていた。


「そんなこと無いわよ。小夏ちゃんには快諾してもらっているわ、本人の出演も含めて。小夏ちゃんが主人公だって言ったら全部任せるからよろしくねってことだったわよ」 


 そのアメリアの言葉がかなめには衝撃だった。一瞬たじろいた後、再びじっと画面を見つめた。そして今度は襟元からジャックコードを取り出して、端末のデータ出力端子に差し込んだ。あまりサイボーグらしい行動が嫌いなはずのかなめが脳に直接リンクしてまでデータ収集を行う姿に誠もさすがに呆れざるを得なかった。


「本当に疑り深いわねえ。まったく……!」 


 両手を手を広げていたアメリアの襟首をかなめが怒りに任せて思い切り引っ張り、脇に抱えて締め上げた。


「なんだ?北里アメリア?小夏の中学校の先生で……カウラと誠をとりあっているだ?結局一番普通の役は自分でやろうってのか?他人にはごてごてした被り物被らせて自分は一般人の役。調子に乗りやがって……テメエはラスト・バタリオンだ。普通の人間より頑丈に出来てる。多少痛めつけても死にはしねえだろ」


 かなめはアメリアの頭を右わきで抱えてギリギリと締め上げた。 


「ちょっと!待ってよかなめちゃん!そんな……痛い!ラスト・バタリオンは不死人じゃないから死ぬのよ!無茶をしたら。そんなに力を入れたら……痛い!痛いって!」 


 誠もカウラもかなめがそのままぎりぎりとアメリアの首を締め上げるのを黙ってみていた。


「僕は助けませんからね。アメリアさん、調子乗りすぎですよ。ここまで来たらデザインした僕でも責任は取れません」 


「自業自得だな。西園寺、気のすむまでやっていいぞ」 


 あきれ果てた誠とカウラはアメリアがかなめにヘッドロックを掛けられている様子を黙って見守っていた。


「なんでよ誠ちゃん!カウラちゃん!助けてくれてもいいでしょ!この人でなし!うっぐっ!わかった!かなめちゃん!わかったから!」 


 そう言うとアメリアはかなめの腕を大きく叩いた。それを見てかなめがアメリアから手を離す。そのまま咳き込むアメリアを見下ろしながらかなめは指を鳴らした。


「おう、わかったか。人がどんなに恥ずかしい気持ちかわかったみてえだな。それでどうわかったのか聞かせてくれよ。オメエとアタシの役を交換するか?それともアタシの衣装のデザインを大幅に変更するか?どっちか選べ」 


 かなめはそう言うと青くなり始めた顔のアメリアを開放した。誠とカウラは画面の中に映るめがねをかけた教師らしい姿のアメリアを覗き込んだ。



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