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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十四章 長いものには巻かれるものらしい

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第70話 非番と言うことで

「なんだよ、サラ。来てたのか?まあ、神前の飯より旨そうだからな。飯にするぞ、神前。よかったじゃねえか、オメエの代わりに飯を作ってくれる人が居たんだ。サラには感謝しとけよ」 


 秋も深いというのに黒のタンクトップにジーンズと言う姿のかなめが頭を掻きながら現れた。彼女を見つけるとサラはすばやくかなめの手をとって潤んだ目で見つめた。


 はじめは何が起きたのかわからないかなめだが、しくしくと泣きながらちらちらと島田を見つめるサラに少しばかり戸惑ったように島田に目をやった。


「おい、島田。なんかしたのか?せっかくのサラの飯に文句でもつけたのか?この彼女いる率0.01パーセントの国でそんなことをする奴は男の風上にも置けねえな」


 かなめがきつい口調で島田を脅迫するように怒鳴りつけた。


「何もしてねえですよ!何かするとしたら西園寺さんでしょ!いつも人を見ると怒鳴りつけて自分の責任を全部他人に押し付けて!俺が何をしたって言うんですか!証拠が有るなら見せてくださいよ!」 


 一度は威厳を持ち直したかに見えた島田だが、そんな言葉と共にかなめのタレ目に見つめられてはすべては無駄だったと言うように手にしていた竹刀を入り口の元の位置に置いた。整備班員は小声で囁きあいながら上官である島田の萎れた様を生暖かい目で見つめていた。


「まああのタコ明石が婚約する世の中だ。別にテメエ等がくっつこうがアタシには関係無いしな。サラ、泣くなよ。あとで島田は締めとくから。島田は銃殺しても死なねえから頸動脈を死なない程度に三時間ほど締め上げてやる。そんなことよりまずは飯だ。出来ればこいつの分も」 


 そう言うとかなめは誠の手を引いて食堂のカウンターに向かった。厨房にはサラとセットとでも言うように同じ運用艦『ふさ』のブリッジクルーの火器管制主任のパーラ・ラビロフ中尉と操舵士のルカ・ヘス中尉が当然のように味噌汁と鯖の味噌煮を盛り付けていた。


「そう言えば、今日は第一小隊は非番でしたっけ?どうするんですかねえ……非番だから休める……と行くと良いんですがね……」 


 今度は逆にかなめの足元をすくおうと島田が何か思うところが有るような口調で話を向けた。


「ああ、そうだな。今日はどうするか……なあ、神前。久しぶりにアタシもギターを弾きたくなってきた。豊川駅前で一日中路上ライブと決め込むか?一緒に付き合うよな?」 


 ルカから鯖の味噌煮を受け取ってトレーに乗せたかなめが誠を振り返った。誠はかなめの胸の揺れから彼女がブラジャーをしていないことに気づいて頬を赤らめた。


「もし西園寺さんがそうするなら僕も付き合いますよ。僕は楽器は弾けないですけどサクラぐらいにはなるでしょう。僕も予定は無いですし」


 誠は通販で買った地球のイタリア製のイタリア突撃砲『セモベンテ』のプラモを作りたかったのだが、かなめに馬鹿にされるのは見えていたので言い出すのをやめた。 


「西園寺さん。それに神前。いいんですかい?アメリアさんは今日出勤ですよ。あの人の事だ、また何をやらかすか分かったもんじゃないですよ……放置しておくと二人に後でどんな無理難題を押し付けて来るか分かったもんじゃないですよ。それでも良いって言うんなら路上ライブも乙な物じゃないですか?」 


 島田はアメリアのお守りは誠の仕事だと言う目で見つめていた。その同情がこもった瞳に誠は少し戸惑った。


「アメリアさんが出勤……あの人の事だ。まともに仕事をするわけがない。あの魔法少女のキャラクター原案とか言って色々面倒な設定のキャラを作りそうですね。そしたら僕がまたデザインをさせられるんだ……それに西園寺さん。また、西園寺さんもけったいな格好の敵役を押し付けられますよ」 


 すぐに誠は気がついた。今日は第二小隊が準待機で第一小隊は非番だった。運行部部長のアメリアが映画の筋を決めるとなれば、当然非番明けの誠達第一小隊にとても飲めないような内容のキャラクター原案が回ってくるのは確実だった。


「アメリアさん……絶対まともなストーリーなんて作る気無いんだから。せめて子供が見ても大丈夫な物語にしてくれると良いんですが……」 


 誠のその言葉に顔色を変えたのはかなめだった。手にしたトレーを近くのテーブルに置くとそのまま食堂を出て行った。


「それでお前はどうするんだ?どうせ絵を描くだけだから他人事だと言うことで済ませる気か?アメリアさんと西園寺さん。あの二人を一緒にしておくと何が起きるか分からねえぞ」 


 他人事のようにニヤつく島田の顔を見ながら誠は苦笑するしかなかった。考えてみれば昨日デザインした時点でかなりおかしな配役になることは間違いないと誠は思っていた。


 魔法少女モノと言うことだったが、なぜか特撮モノのようなデザインの衣装を着ているキャラが多かったり、本当にこの人が出てきていいのかと思うようなキャラも数名思い出せた。首をひねりながらかなめのトレーが置かれたテーブルの向かいに座った誠だが、そこに勤務服のワイシャツを着る途中でかなめに捕まったアメリアが耳を引っ張られながら食堂に連れられてくるのが目に入った。


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