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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十章 犠牲者の上に立つ勝利

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第58話 きっかけを作っておいて

「よう!元気してたか?」 


 突然会議室の扉が開き、入ってきたのは嵯峨だった。雪駄の間抜けな足音が会議室にこだまする。


「隊長、なんですか?今手が離せないんで、仕事が有るんなら後にしてください」 


 菰田の作業を注視していたアメリアが顔をあげた。嵯峨は頭を掻きながらそれを無視すると義娘のかえでなどを眺めながら誠に歩み寄った。


「やっぱり、お前はたいしたもんだなあ……神前の絵はいつもの卑猥な画像と違ってこうして一般にお見せできるのを描かせても一流だな。なんで美大を目指さなかったの?やっぱり理系の方が就職に有利だとか考えてた?だとしたらご愁傷様だな。うちみたいなところしか引き受け手が無かったんだから」 


 誠の書き上げたイラストを嵯峨はしみじみと見つめた。


「叔父貴がなんで居るんだ?そんなに暇なのか?今度来る強力な機体の搬入の調整とか仕事はいくらでもあるだろうに」 


 かなめはつっけんどんにこの歓迎されざる客にそうツッコんだ。


「仲間はずれかよ、傷つくなあ。一応、俺はここの隊長だぜ。もうちょっと敬意を持ってもらいたいもんだけどな。それにその機体『武悪』の搬入手続きの関係の仕事はとっくに終わってるよ。俺は仕事が早い男なの」 


 嵯峨はそう言いながらふらふらと端末を操作している菰田の方に歩いていった。


「あちらはサラが空回りしていたけどこっちはかなり組織的みたいだねえ。神前が絵を描いて、それをルカが加工して、菰田がネットに上げる。普段の仕事でもこういうチームワークで効率よく仕事をしてくれると助かるんだけどね」 


 そう言うとアメリアが立ちはだかって見えないようにしている端末のモニターを、背伸びをして覗き込もうとした。


「一応秘密ですから。敵に寝返る可能性のある人物にはお見せできません」 


 アメリアに睨みつけられて肩を落す嵯峨はそのまま会議室の出口へと歩いていった。


「ああ、そうだ。一応これは本職じゃないから、あと30分で全員撤収な。役所も最近じゃ労働時間管理にはうるさいんだ。その辺のことも考えておくように」 


 そう言い残して嵯峨は出て行った。誠がその言葉に気がついたように見上げれば窓の外はすでに闇に包まれていた。


「え、五時半?うそでしょ?」 


 アメリアの言葉に全員が時計に目をやった。


「省エネ大臣の高梨参事が来ないうちってことですかね。あの人が来てからさらに経費関係の無駄遣いは厳しく取り締まられるようになりましたから」 


 手だけはすばやくタイピングを続けながら菰田がつぶやいた。誠もこれが明らかに仕事の範囲を逸脱しているものだということは分かっていた。もうそろそろ配属6ヶ月を過ぎて、おそらくこの馬鹿騒ぎは嵯峨と言う中央から白い目で見られている危険人物が隊長をやっているから許されるのだろうとは理解していた。おかげで司法局実働部隊の評価が中央では著しく低いことの理由もみてとれた。


「じゃあ誠ちゃんとカウラとルカは撤収準備をお願い。ちょっと片付け終わったら付き合ってくれるかしら」 


「アタシはどうすんだ?仲間外れかよ。覚えてろよ。そんなこと言うとオメエの映画の出演を拒否するからな!」 


 タバコから戻ってきたかなめが不機嫌そうに叫んだ。同じように菰田が手を止めてアメリアを見上げ、かえでとリンがつまらなそうな視線をアメリアに投げた。


「もう!いいわよ!みんな最後までやりたいんでしょ!じゃあ来たい人は着替え終わったら駐車場に集合!続いての活動は下士官寮でと言うことでいいわね!」 


 そんなアメリアの言葉に全員が納得したと言うように片づけを始めた。誠はデザイン途中のキャラクターの絵をどうしようか悩みながらペンタブを片付けていた。


「途中みたいだが良いのか?」 


 カウラはそう言うと描き途中の絵を手にしていた。何枚かの絵を眺めていたカウラの目がエメラルドグリーンの髪の女性の姿を前にして止まった。


「これは私だな」 


 そう言いながらカウラは複雑そうな笑みを浮かべた。『南條家長女』と誠の説明書きが入ったその絵の女性の胸は明らかにカウラのそれに似て平原だった。


「神前……まあ良いか」 


 以前のカウラには聞かれなかったような明るい調子の声がしたのを確認すると誠は肩をなでおろした。



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