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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十章 犠牲者の上に立つ勝利

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第57話 確信した勝利

「よし!勝った!菱川が動かないんなら他のメーカーも動かないわよ!島田君、残念だったわね!」


 アメリアが勝利を確信したように叫んだ。


「さっきから気になってたんだが……物語はどんななんだ?選挙戦よりそちらの方が重要だと思うんだが……」


 カウラはアメリアが描いたキャラクターの設定資料の束をサラの隣の机から取り上げた。そして一枚目のページをめくった。


「南條小夏。南條家の姉妹の妹。中学2年生」 


「そうよやっぱり魔法少女は中学生じゃないと!」 


 カウラの言葉にアメリアは胸を張って答える。そんなアメリアを完全に無視してカウラはさらに読み進めた。


「魔法の森の平和を守る為にやってきたグリンに選ばれて魔法少女になる……魔法の森って、ありきたり過ぎないか?もっと具体的な何かを暗示させるような名称の方が良いと思うんだが。私が読んでいるファンタジー作品だと古代ルーン神話などから名前を引いてくることが多いぞ」 


 そこでカウラはアメリアをかわいそうなものを見るような視線で眺めた。だが、そのような視線で見られることに慣れているアメリアはまったく動じる様子が無かった。


「おてんばで正義感が強い元気な女の子……まあアレも女の子だな。背と胸が小さいことを気にしている」 


 ここまでカウラが読んだところで会議室の空気が緊張した。だが、カウラはさすがにこれに突っ込むことはしなかった。しかし、胸を気にしていると言うことを自ら認めるほどカウラは愚かではなかった。


「勉強は最悪。かなりのどじっ娘。変身魔法の呪文はグリン……グリン?ああこの絵か。魔法熊?熊ってなんだ?まあいいか、が『念じればかなうよ』と言ったのに変身呪文を創作して勝手に唱える。しかも記憶力が無いので毎回違う……なんだそりゃ?」


 喫煙所から帰って来たかなめは台本の設定欄を見て呆れたようにそうつぶやいた。


「そうでしょ?やっぱりヒロインはドジっ子じゃないと」 


 アメリアはそうはっきりと断言した。


「別にドジっ子じゃなくてもいいんじゃね?それに戦うんだろ?ドジに戦場に居られても邪魔なだけだ」


 戦闘経験の豊富なかなめからすればドジっ子の戦士など役立たず以外の何物でもなかった。


「かなめちゃんはあまりに現実的ね。これはフィクション。お話よ。面白ければそれでいいの。あれでしょ、かなめちゃんがかえでちゃんを責める時も自分が気持ちよくなるように誘導するんでしょ?それと同じ」


 かなめの言葉にアメリアはそう反撃した。


「アタシは……確かにアイツにはアタシを気持ちよくするように強要してるな。まあ仕方が無いか」


 二人のこの奇妙な会話に誠はただ笑いをこらえるのに必死だった。だがその我慢もすぐに必要が無くなった。


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