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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第九章 遊びに夢中で仕事をしない人々

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第51話 ご本人登場

「で、ガキで生意気で目つきが悪くて手が早くて中身がオヤジなアタシが画面に出るとどうなるか教えてくれよ、西園寺。アタシが映画に出ると何か問題でもあるのか?言ってみろ。それによって後期の査定をどうするか考えることにするわ」 


 その人物、ランはかなめを睨みつけながらそう言った。かなめはそのままゆっくりと立ち上がり、膝について埃を払い、そして静かに椅子に座った。


「ああ、誠とかが仕事をしやすいようにお茶でも入れてくる人間がいるな。じゃあアタシが……」 


 ランはそう言って立ち上がろうとするかなめの襟首をつかんで締め上げた。


「でけー面してるな西園寺。悪いがアタシはさらに付け加えて気が短けーんだ。このまま往復びんた30発とボディーブロー30発で勘弁してやるけどいーか?」 


 かなめを締め上げるランの顔の笑みが思わずこの騒ぎを見つけた誠を恐れさせた。


「顔はやめて!アタシは女優よ!」 


「お約束のギャグを言うんじゃねーよ!」 


 そう言ってその場にかなめを引き倒したランだが、さすがにアメリアとカウラが彼女を引き剥がした。


「じゃあさっき言ってたな、茶を入れてくれるって。まずはそれをやってくれ。とっとと頼むわ」 


 そう倒れたかなめに言いつけるとランは誠の隣に座った。騒動が治まったのを知ってどたばたを観察していた隊員達もそれぞれの仕事に戻った。


「でもすげーよな。本当に神前が描いてるんだな……すげー!」 


 気分を変えようとランは誠の絵に集中するさまを感動のまなざしで見つめている。誠は今度は小夏の使い魔の小さな熊のデザインを始めていた。


「こんなの誰が考えたんだ?」 


 ランはそう言いながら後ろに立つアメリアに目を向けた。だが、彼女は振り返ったことを若干後悔した。明らかに敵意を目に指を鳴らすアメリア。強気な彼女がひるんだ様子で手にしたラフを落としてアメリアを見上げていた。


「あのー……そのなんだ……」 


「中佐。ここでは私は『監督』とか『先生』と呼んでいただきたいですね。それと常に私に敬意を払うことがここでのルールですわ」 


「おっ……おう。そうなのか?」 


 言い知れぬ迫力に気おされたランが周りに助けを求めるように視線を走らせた。だが、この部屋にいる面子は先月配属になったかえでとリン以外は夏と冬のフェスのアメリアによる大動員に引っかかって地獄を見た面々である。彼等がランに手を貸すことなどありえないことだった。


 明らかにランは戸惑っていた。それは誠にとっては珍しくないがランには初めて見る本気のアメリアの顔を見たからだった。明らかに気おされて落ち着かない様子で回りに助けを求めるように視線をさまよわせた。


「ちょっとクラウゼ中佐。見てくださいよ」 


 ようやくランを哀れに思ったのか、菰田はそう言うと会議室の中央の立体画像モニターを起動させた。そこには5台の戦闘マシンの図が示されていた。それぞれオリジナルカラーで塗装され、すばやく変形して合体する。


「ほう、これは島田君がサラに妥協したわね……兵器は構造が単純なのが良いんだってのが彼の思想だから。島田君がバイクが昭和のバイクが好きなのは下手な電子部品に頼らずアナログで動く単純な構造だからだもの。単純な構造こそがベストと言うのが島田君の思想のはずよ。それをここまで派手な合体シーンを展開できるようにするなんて……向こうも勝ちに来たわね」 


「妥協ねえ……そんなもの実際に合体ロボを作って戦場に送り出すわけじゃないんだから関係ないだろ」 


 真剣にそのメカを見つめているアメリアに冷めた視線のカウラがつぶやいた。そもそも合理的な思考の持ち主であるカウラには合体の意味そのものがわからなかった。アメリアや誠の『合体・変形はロマンだ!』と言い出して司法局の運用している05式の発売されたばかりのプラモデルの改造プランを立てる様子についていけない彼女にはまるで理解の出来ない映像だった。



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