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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第九章 遊びに夢中で仕事をしない人々

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第49話 人気同人絵師、意地を見せる

「アメリアさん。当然他のキャラクターの設定もできているんでしょうね!」 


 そう言いながら誠は腕を捲った。ブリッジクルーがまるで待っていたかのように宿直室から持ってきた誠専用の漫画執筆用のセットを準備した。


「当然よ!キャラはメインの五人以外も端役までばっちり設定ができてるわよ。あちらがインフラ面で圧倒しようとするならこちらはソフト面で相手を凌駕すれば良いだけのことだわ!要は発想の転換よ!あちらにはメインの絵師は誠ちゃんのアシスタントをいつもお願いしているサラしかいないもの。アシスタントはアシスタントで分際をわきまえて欲しい物ね」 


 そう言ってアメリアは高笑いした。こういうお祭りごとが大好きなかなめはすでに机の上にあった機密と書かれた書類を見つけて眺め始めた。


「仮題『魔法少女隊マジカルなっちゃん』?戦隊モノなのか魔法少女ものなのかはっきりしろよ。神前に妥協したのか?媚びたのか?気が有るのか?まったくどいつもこいつも色気づきやがって」 


 かなめは題名の中途半端な魔法少女ぶりに呆れてそうつぶやいていた。


「だってせっかく誠ちゃんに協力をお願いするんだもの……少しは妥協してあげないと。それとサラの陣営を切り崩すためにこちらも最終決戦には巨大ロボットまで出す予定よ。私は最終的に勝つ為ならどんな妥協もするわ!」


 アメリアはそう言って笑った。かなめは黙って設定資料を読み進めた。だがすぐに開いたページで手を止めて凍てつく視線でアメリアを見つめた。


「おい、アメリア。なんだこれは」 


 機械でできた鞭を持ったおどろおどろしい姿の女性のラフ画像をかなめはアメリアに見せ付けた。


「ああ、それはかなめちゃんの役だから。当然最後は誠ちゃんと恋に落ちてかばって死ぬ予定なんだけど……」 


 何事もないように言うアメリアにかなめはさらに苛立ちはじめた。


「おい、なんでアタシがこいつと恋に落ちるんだ?それに死ぬって!アタシは噛ませ犬かなにかか?」 


 かなめは自分がこれまでの出動で噛ませ犬役になっていることを自覚しているのでいつもよりも激しく激高した。


「よく分かったわね。それにいつもの出動でかなめちゃんの行動を見ていると噛ませ犬はかなめちゃんの十八番じゃない。死に行く気高き騎士キャプテンシルバーの魂がヒロインなっちゃんの魂に乗り移り……」 


「お姉様が死ぬのか!そのようなもの認めるわけには行かない!」 


 背後で机を叩く音がしてアメリアとかなめも振り返った。


 そこにはかえでとリンが立っていた。かえではそのままアメリアの前に立つとかなめの姿が描かれたラフを見てすぐに本を閉じた。どうやら大勢はアメリアとサラの二強対決に決まったと見極めてベルばらの選挙事務所を畳んでこちらにやって来たらしい。当然アメリアへの意趣返しを考えているパーラはサラの陣営に行ったらしくその姿は無かった。


「あのー、かえでちゃん。これはお話だから……」 


 かえではなだめようとするアメリアの襟首をつかんで引き寄せた。かえではそのまま頬を赤らめてアメリアの耳元でささやいた。


「この衣装。作ってくれないか?僕も着たいんだ。凛々しい僕の面立ちならきっと映えると思うんだが、クラウゼ中佐、どうだろうか?それとできればもう少し露出の多い衣装の方が良いな。僕の妖艶さを引き出すようなエロチックな衣装であることがこの物語のカギだと思うんだがどうだろうか?」 


 その突然の言葉に再びかなめが凍りついた。誠はただそんな後ろの騒動を一瞥すると小夏が演じることになるヒロインの杖のデザインがひらめいてそのままペンを走らせた。


「かえでちゃん!ありがとう!」 


 濡れた視線でかえでを見つめていたアメリアがそう叫んでがっちりとかえでの手を握り締めた。


「その思い受け止めたわ!でも今回は二時間までって決まってるし……かえでちゃんの出番はあまり出番作れそうにないわね。でも誠ちゃんにはもっと露出の多い衣装にするように頼んでおくわね。それとリンちゃんのは当然ビキニアーマーでセクシーなのにする予定よ!安心して!」 


「おい!今回ってことは二回目もあるのか?」 


 かなめが呆れながらはき捨てるように口走った。そんなかなめを無視してアメリアはヒロイン、デザインを始めている誠の手元を覗き込んだ。その誠の意識はすでにひらめきの中にあった。次第にその輪郭を見せつつあるキャラットなっちゃんの姿にアメリアは満面の笑みを浮かべた。



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