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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第八章 不毛なる戦いの記録

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第41話 加熱する多数派工作

 ハンガーの前ではちょうど先に車を降りたアメリアが記入を終えた技術部のアンケート用紙をこういう時は気が利く西高志兵長からまとめて受け取っているところだった。


「早いねえ、なんだ?組織票だな。恐らくは島田が部下を脅して書かせたんだ。合体ロボと書かねえ奴は根性焼きを入れるとか言ってな。技術部、特に整備班は島田の支配する『王国』だ。奴の言うことは絶対だからな。奴がサラの味方をすると決めたら全員がしたがう。それがあそこのルールだ」 


 そう言うかなめの言葉に西は引きつった笑みを浮かべているとそこに島田が顔を出した。そしてそのままアメリアに挑戦的な笑みを浮かべて切り出した。


「ああ、うちはサラの案で行くことにした。ロボはなんと言ってもうちの十八番だからな。シュツルム・パンツァーなんていう人型兵器を扱ってるんだ。当然ロボを活躍させるのが一番のうちの宣伝になるだろ?当たり前の選択じゃないですか。そんな俺の意見に逆らう馬鹿な奴なんてうちには一人もいませんよ……チームワークと統率力がうちの自慢でね。残念でしたね、アメリアさん」 


 きっぱりとアメリアにそう言うと島田はそのままハンガーの奥へと消えていった。


「技術部の組織票か。うちじゃあ一番の大所帯だこれは合体ロボで決まりかな。やはりファンタジーと言うのはありきたり過ぎるのか。小説のジャンルとしては人気が有るのだが。ここは『特殊な部隊』だ。世間一般の常識など通用しないと言うことなのか」 


 カウラはどういう表情をしていいのかわからないらしく、あいまいな笑みを浮かべつつそう言った。だが、すぐにアメリアの表情は不敵な笑みに変わった。


「おい、アメリア。最大勢力の技術部の組織票が動いたんだ。諦めろ。オメエが運航部の女芸人達を全員魔法少女命に洗脳しても数の暴力の前じゃどうにもできねえ。それが民主主義だ。決まった以上もうこんな紙捨てても良いんじゃねえのか?やるだけ無駄だろ、投票なんて」 


 かなめはそのままアメリアの肩に手をやった。


「ふっふっふ……私がそう簡単にあきらめる女だと思わないで欲しいわね、かなめちゃん」 


 声に出して不気味な笑い声を出すアメリアにかなめは少し引いた表情を浮かべた。


「かなめちゃんは分かってないわね。選挙とは最後の票が開くまで結果は分からないものなのよ。まあ、私が仕掛けた仕込みの方は内緒にしておいて、とりあえず機動部隊の部屋まで行くわよ。あそこは人数が少ないからすぐ終わるでしょ」 


 アメリアはそのまま奥の階段へとまっすぐに向かっていった。


「馬鹿だねえ。人数的にはあと数を稼げるのは艦船管理部ぐらいのもんだぜ。アイツ等釣りしか興味ねえからな。なんと言ってもテレビまで改造を施して釣り番組しか映らないようにできている……しかも全員が釣りの対象が違うんだ。それぞれに自分のターゲットとしている釣りの対象をテーマにしたドキュメントを作りたいってことで無効票しか期待できねえぞ。そんなところの票を期待して何が楽しいのやら」 


 ぶつぶつとかなめはつぶやいた。誠から見てもかなめの言うことが正解だった。その割にはアメリアの表情は明るく見えた。


「はい!管理部は全員一致でファンタジー路線に決めましたので!白石さんも何とか説得したら同意してくれました!他のおばちゃん達も本当はベルばらが良いって言ってたんですけどなんとか押し切りました!ベルガー大尉!褒めてください!」 


 階段を上りきったところで突然飛び出してきた菰田がいきなりカウラにアンケートを渡した。だが、大勢が決まったと思っているカウラは愛想笑いの出来損ないのような微妙な笑みを浮かべてそれを受け取っただけだった。


「菰田、島田の馬鹿の整備班が全体行動で動いたんだ。大勢は決した、諦めろ。技術部はうちでは一番の大勢力だ。もうサラの要望の合体ロボで決まりみたいだから。それに第二勢力の艦船運航部にはそもそも投票行動をするような意志は無い。アイツ等は釣りしか興味がねえからな。菰田、オメエの行動はいつも無駄に終わるな。ご愁傷様」 


 かなめの響く声に気づいたのか、突然実働部隊詰め所の扉が開いてサラが飛び出してきた。


「アメリア!ずるいわよ!あんなの有り?反則よ!」 


 そう言ってサラは息を切らしてアメリアの首にぶら下がろうとした。その表情は怒りと驚きに満ちていて、その様子を見守るアメリアもサラのその顔は予想していたらしく高笑いを浮かべながら彼女を迎えた。



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