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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第六章 まあ、実際リアルに魔法少女はうちにいるので

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第34話 アンケート配布作業

「そう言えば今度、二人新人が配属になるって本当か?」 


 カウラはそれとなくアメリアに声をかけてみた。だが、アメリアはどうでもいいというようにそのまま歩いていった。


「どうせ技術部の整備班員だろ?まーこの前実家の農家を継ぐって言うんで辞めた隊員が居たからな。その補充だろ。まあ、野球経験者なら歓迎してやるけどな。特に来年は外野があてにならねえ。島田一人であの広さを全部守れなんて無理な話だ。ちなみにキャッチャーとセカンドのめどがついたのがせめてもの救いだな。あのキャッチャーなら来年こそは3位を目指せる。打倒豊川市役所!映画は譲ってやるが野球は譲らねえからな」 


 かなめのその言葉に興味を失ったアメリアは隣の自分の机のある運行部の詰め所に向かおうとした。


「アメリア、もう本当にいい加減にしてよね。映画なんて適当に簡単な劇を作ってお茶を濁せばいいだけじゃないの。そんなに力を入れる必要なんてないのよ。面倒はこれ以上御免だわ」 


 部屋から顔を出すパーラにかなめは愛想笑いを浮かべた。彼女は廊下で突っ立っているカウラの肩を叩きながら部屋に入った。実働部隊の次に階級の高い将校が多いことと、部員の全員が女性と言うこともあり、かなり落ち着いた雰囲気の部屋だった。


 誠は良く考えればこの部屋には大き目の机があり、その持ち主が誰かと言うことは一目で分かる。机の上には同人誌やフィギュアが正確な距離を保って並んでいた。その主の几帳面さと趣味に傾ける情熱が見て取れた。


 アメリアは自分の席に特に仕事になるようなものが無いことを確認した。


「ご苦労様ねえ。じゃあ私も手伝うわね、配るの」 


 そう言って誠の手のプリントをパーラ・ラビロフ大尉は取り上げようとした。


「いいわよパーラ、そんなに気を使わなくても」 


 そう言ってアメリアは作り笑いを浮かべているパーラを座らせようとした。


「そう?別にたいしたことじゃないから手伝ってあげても……」 


 残念そうに机に座ると、パーラが入れたばかりの日本茶を運んできた。


「それじゃあお茶くらい飲んで行かない?誠君達にこういうことばかりさせてるのも悪いし」 


 その言葉にこの部隊には稀な常識人であるパーラは苦笑いを浮かべた。


「別に気を使わなくても……」 


 カウラはそう言いながら誠の後頭部を叩く。それがお前も同意しろと言う意味なのもわかってきた誠も手を大きく振った。


「そんな気を使わせるなんて悪いですよ。それに管理部とか配るところが結構ありますから」 


「アメリアのお守りは大変ねえ。がんばってね!」 


 そう言うパーラにかなめがアンケート用紙を渡した。そして愛想笑いを浮かべつつパーラに頭を下げる誠を残してアメリアとかなめ、そしてカウラは廊下へと退散した。


「じゃあ、あとは上の機動部隊と管理部だけね」 


 そう言いながらアメリアは意気揚々と階段を上がった。


「そう言えばよう。ここの階段上がるの久しぶりだな」 


 かなめがそんなことを口にした。日中とはいえ電気の消された北側の階段には人の気配も無く、初冬の風が冷たく流れていた。


「私は時々上るぞ。まあ確かに出勤の時は直接ハンガーに顔を出すのが習慣になっているからな、私達は」 


 カウラも頷きながらひやりとするような空気が流れる寒色系に染められた階段を上った。彼女達の言うように、誠もこの階段を上ることはほとんど無かった。上がればすぐ更衣室であり、本来ならそれなりに使うはずの階段だった。この階段の前の正面玄関のそばにカウラのスポーツカーが毎朝止まるのだから、それで通う誠とかなめ、そしてカウラとアメリアにとって駐車場から更衣室にはこちらを使う方がはるかに近道だった。だがなぜか誠達はここを通ることは無かった。



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