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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第四十六章 武者装束の準備

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第197話 本来の目的の武者姿

「なんだ、ありゃ?」 


 駆け出していくかなめとアメリア、そして入れ替わりに嵯峨が顔を出した。それまでアメリアに何かを吹き込まれてニヤニヤしていたサラとパーラが突然の闖入者に思わず目を逸らした。


「隊長、何か用が?」 


 立ち上がったラン、それを見ると思い出したように嵯峨が誠に手招きした。


「神前も来いや。お前さんに用があって来た」 


 嵯峨はぶっきらぼうにそれだけ言うと部屋を出て行こうとした。


「僕に用ですか?何でしょう?隊長に頼まれることって大体ろくでもないことなんですけど……本屋に行って風俗情報誌を買って来いとか、コンビニで甲種焼酎を買って来いとか……」 


 不思議に思いながら誠も立ち上がった。それを見てカウラは手を打った。


「ああ、今回のイベントの本題の方だな」 


 カウラは嵯峨の真意が分かっていると言うようにはっきりとそう言った。


「本題?」 


 カウラは尋ねてくる誠ににんまりと笑って見せた。


「この映画を上映するのは今度の節分だ。呼び物は隊長の提案で始まった時代行列。そこで着る鎧兜を選ぶんだ」 


「ああ、そういうこったな」 


 嵯峨の言葉に元々目つきの悪いランの目つきがさらに悪くなった。


「士官は大鎧、下士官は胴丸を作るんだ」 


「え!鎧兜を作る?」 


 嵯峨の言葉に誠は驚いた。彼の肩にカウラが手を伸ばした。


「時代行列でうちは源平絵巻の担当だからな。当然甲冑を着て行進することになる」 


「目玉は隊長の流鏑馬だ。期待してろよ……素人にゃちょっと出来ねー芸だ。アタシもこのことについてはいつも『駄目人間』だの『脳ピンク』だの馬鹿にしているが認めてやる」 


 自慢げにランはそう言った。誠は嵯峨なら乗馬くらいはできるだろうとは思っていたが弓まで使えることははじめて知った。


「ちょっと会議しようや。お前等も見るか?」 


 嵯峨にそう言われて一同がぞろぞろとついてきた。


「源平絵巻ですか……写真の資料しか見たことありませんよ、僕」 


 そう言いながら嵯峨に続いて電算室に入った。嵯峨は素早く端末の前に腰掛けると画面を開いて甲武のネットに接続した。


「やっぱり甲武ですか製作は」 


「そりゃあな。甲武の時代趣味はすげえからな。東和だと何時代の鎧……と言うかそもそもこれ日本の甲冑と違うじゃんと言う奴ができちまうからな」 


 嵯峨がそう言いながら甲武国立文化センターのセキュリティーコードを打ち込んでいるのを眺めていた。


「変わったところに頼むんですね」 


 誠の実家のある下町の工場でも5月人形の鎧兜を作っているところが有るので、時代行列の鎧兜もそう言ったところで作るものだとばかり思っていた。


「平安末期仕様の鎧兜って限定して作らせるとなると、俺の領地のコロニーしか無くてな。まあこのこだわりがどれだけ客に受けるかは別なんだけどっと!」 


 そう言いながら嵯峨は歴史物品複製製作のサイトにたどり着いた。


「とりあえず胴丸で……サイズからか……神前!身長は?」 


 嵯峨が突然振り返る興味深げに覗きこんだ端末には徒歩侍の姿が映っている。明らかに雑兵と言う姿に少し誠はがっかりした。


「一応186センチですけど……雑兵役……武将じゃないんですね」 


 誠は心底落ち込んだようにそう言った。本来であれば士官候補生と言うことは士官扱いで武将の役が出来たところである。それを嵯峨の一言で曹長に降格されて一気に雑兵扱いとはあまりの事だと唇を噛んだ。


「ああ、将校クラスは大鎧だが下士官はすべて雑兵の格好になるんだ」 


 カウラの言葉にサラが乗っかって誠に笑いかけた。


「神前、でかすぎだ。特別注文になるな。早めにサイズを聞いといて良かったわ。鎧はサイズが合わないと本当に調整のしようが無いからな」 


 そう言いながら嵯峨は端末に入力を続けた。キーボードを打つ嵯峨を初めて見る誠だが、それは驚異的なスピードだった。すぐさま鎧の各部分の設定などを入力して完成予想画面が映し出された。


「へえ、様になるわね」 


「良かったなカウラ」 


 パーラがカウラに声をかけた。それまで画面を見つめていたカウラは突然の言葉に頬を赤らめて下を向いた。


 嵯峨が体を引いてランからも画面が見えるようにした。ランはしばらく頭を掻いた後、仕方が無いというように画面を見つめた。そこには様々な文様の鎧の胴や盾が映っていた。


「兜は……下士官は雑兵だから烏帽子ですよね?」 


「まあな、女武者は鉢巻とかが普通だぞ」 


「ああ、アタシは赤糸縅の大鎧に鉢巻だ。まあ私は去年も今年も警備に駆り出されるだろうからな」 


 かなめの言葉で凛々しく騎馬で疾走する姿を想像して誠は納得した。カウラやかなめ、アメリアも将校であるところから考えれば、彼女達も恐らく源平の女豪傑の巴御前のような姿になるだろうと思って心が躍るのを感じた。


「やっぱり兜がねーと格好がつかねーよ」 


「贅沢言いやがって」 


 ごねるランに苦笑いを浮かべると嵯峨は再び端末のキーボードを叩いた。


「納期を考えると……緋縅(ひおどし)の甲冑の部品が余ってるみたいだからこれで行くか?」 


「仕方がないんじゃないっすか?」 


 ランの一言でようやく落ち着いた。


「ああ、そうだ。島田も今回は将校扱いだな……大鎧を作り直さなきゃな。誰か島田の野郎を呼んできてくれ」


嵯峨はそう言って『近藤事件』で誠の活躍で将校に出世できた割に誠を虐めまくる先輩であるヤンキー島田の名を出した。 


「私が連れてきます!」 


 嵯峨の言葉にサラが飛び出していった。誠は嵯峨の横から手を出して自分の鎧の完成予想図を見た。


「やっぱり雑兵だな」 


 カウラの一言。誠は大きく落ち込んだ。


「良いじゃないか。乗馬の練習とかしなくて良いし、それに大鎧は結構動きにくいからな」 


 カウラのフォローだが、所詮は祭りのコスプレである。格好が良い方を選びたくなるのが人情だった。


「まあ、がんばれ」 


 肩を叩く嵯峨。そこで再びドアのロックが解除された。


「どこに隠れた!アメリア!」 


 そう言ってかなめがずかずかと部屋に乱入した。だが、その視線が誠の目の前の画面に落ち着くとにんまりと笑って誠の頭をぽかぽか叩き始めた。


「おう、立派な雑兵じゃねえか!」 


 かなめはそのまま誠の頭をぺたぺた叩き続けた。誠は苦々しい笑顔を浮かべながら見つめてくるかなめのタレ目に答えた。



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