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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第四十五章 物語の結末

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第192話 脚本家の弱音

「正直最後はやっつけで書いたのよね……矛盾点とかあったらあとで編集の時に何とかするから。うまくやってね」 


 端末のコードを抜きながらのアメリアの言葉が響いた。アメリアに逆らうのは無駄だと諦めている新藤はメガホンを機材の山に放り投げていた。


「おい、やっつけなのかよ。まったくストーリーができたのは俺のおかげなんだぜ。やっつけって言う表現は取り消してもらいたいねえ」 


 新藤はそうこぼすとサラから紙コップを受け取った。サラは奥から鍋を持って出てきた技術部の西高志兵長と紙コップを持った神前ひよこ軍曹からさらに紙コップを受け取った。


「おう、甘酒か。ひよこが朝から何やってるのかと思えば気が利くじゃねえか。こういう時は暖まるもんが一番なんだ」 


 いかにも嬉しそうにランがテーブルに置かれた大きな鍋の蓋を開けた。しろいどろどろの甘酒がかぐわしい香りをハンガー一杯に拡げた。


「クバルカ中佐。アルコールは飛ばしてありますから酔いませんよ。日本酒の様に楽しい気分になることは期待しないでください」 


 ひよこはそう言いながらいつの間にか監督の後ろに列を作っていた整備兵達に甘酒を振舞い始めた。


「しかし、こうしてみるともう冬なんだな。季節が巡るのはあっという間だな。本当に時間の経つのは早いものだ」 


 その列の中にいつの間にかいたカウラがエメラルドグリーンの髪に手をやった。


「なんだ?人造人間でも風雅ってもんが分かるんだ。カウラに風情が分かると言うのは初めて知る発見だ」 


 かなめの言葉にそれまで隣の甘酒を覗き見ながら機器を片付けていたアメリアが立ち上がった。


「ひどい偏見!私達も一応人間よ!取り消しなさいよ!カウラちゃんはロールアウトして時間が経って無いからあまり理解できていないだけ!私みたいにいろんな経験をすれば風情もわびもさびも分かるようになるの?そんなことも分からないから人の心が分からない我儘娘に育っちゃったのよ」 


 顔を近づけてつばきを飛ばすアメリアにかなめも一歩もひかない。すぐさまジャンプしたランがかなめの頭をはたいた。


「馬鹿やってんじゃねーよ。甘酒やらねーぞ」 


 そう言いながらランは副長特権で甘酒の列に割り込んで手にしたコップを傾けた。


「それより子供が酒飲むのは…… 」 


「アタシは大人だ。それにさっきひよこはアルコールは完全に飛んでると言ってた。つまりこれは酒じゃねえ」 


 カウラの言葉を切り捨てるとランはそう言って甘酒を飲み干した。


「これ、おいしいですよ。西園寺さん。西園寺さんも飲みましょうよ、暖まりますよ」 


 誠の一言になぜか機嫌を悪くしたかなめは黙って実働部隊の詰め所のあるハンガー奥の階段に向かって歩き出した。


「素直じゃねーな。あいつも」 


 その様子をランは紙コップの中の甘酒で体を温めながら見守った。


「あの、じゃあ僕も遠慮します」 


 誠の言葉にひよこに代わって甘酒を振舞っていたアメリアが目の色を変えた。


「そんな、かなめちゃんの我儘に付き合う必要なんて無いわよ」 


 そう言うとアメリアは警備部のスキンヘッドの兵士から甘酒の入ったコップを奪って誠に持たせた。


「別にそんな……」 


「いいから!持っていきなさいよ……これもね」 


 そう言うとアメリアはもう一杯の甘酒のコップを誠に持たせた。彼女の笑顔に背中を押されるようにして誠はそのままかなめのあとをつけた。


 誠が甘酒を持って振り返るとかなめの姿は無かった。早足でそのまま階段をあがって管理部の白い視線を浴びながら隣の詰め所に飛び込んだ。


 そして誠はそっぽを向いて机の上に足を投げ出しているかなめを見つめた。



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