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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第四十四章 法術師と言う存在

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第186話 誠を待つ定め

「ベルガー大尉。神前さん。おかけになられてはどう?少し落ち着いて話をする必要が有りそうですわね」 


 その言葉にカウラは神前の肩を叩く。我に返った誠はカウラにの隣、茜の斜め左側に腰を下ろした。


「それではうかがいますが、お二人に神前曹長がこうなる前に手を打てる自信はありますの?この現象は純血の遼州人であれば法術適性に関係なく誰にでも起きる現象です。特に法術適性の高い人物の場合この現象が発生する確率は高い。しかも、神前さんは不死人では無いからこの現象に耐えることは出来ない……その事実を認識してらっしゃいますか?」 


 優雅に湯飲みに手をやる茜を誠は見つめていた。異常な発汗は続いている。そして自分がいつかはその死体と同じ運命をたどるかと思うと体の力が抜けていった。


「神前さんを助けることが出来るのですか?もしこうなる状態にまで追い込まれたとして……法術発動中はこの現象が起きる確率は格段に上がります。そのことはこれまでのデータで明らかになっているところです。お二人は神前さんの法術に何度も助けられてきた。ではご自分達は神前さんを助けることが出来るんですか?」 


 その穏やかな表情に似合わぬ強い語気に誠は茜が間違いなく嵯峨の娘であることを確認した。


「それは……」 


 カウラはうろたえ気味に言葉に詰まった。


「その方法が知りてえんじゃねえよ!アタシは何で今頃そんな話をしてきたかを聞いてるんだ!今更あの時は凄く危なかったんですよなんて言われて今更どうしろって言うんだよ!」


 そう言って怒りに任せてかなめはテーブルに右手を打ち付けた。 


「かなめお姉さま!そんな興奮なさっても状況は変わりません!」 


 今度はその笑顔が言葉とともに茜から消えた。その表情を見てかなめも落ち着いたようにソファーに腰を下ろすと視線を下に落とした。


「分かってるよ、そんなこと。ねえよ、そんな自信は。アタシは神前に守られてばっかりだった。その度に神前はこうなる可能性が有った。その事実……知って今更どうすると言いてえが……こいつに力を使わせるなって言うなら話は分かる」 


 そう言ってかなめは端末のキーボードを叩くラーナに目をやった。


「それでも事件は起きますわ。その時は神前さんは力を使うでしょう。その時お二人ともこの状況になった神前さんを見殺しにするおつもりだと?力に、法術に取り込まれて我を失って暴走して自滅する誠さんを……」 


 非情に的確に茜はかなめを論理的に追い詰めていった。


「そんなこと言ってねえだろ!なんとかできる方法が有るなら教えろ!頼むから教えてくれ!神前には死なれちゃ困るんだ!アタシは嫌なんだ!」 


 かなめはテーブルを叩いた。テーブルがひしゃげなかったのが不思議なほどの大音響にそれまで淡々とモニターを覗いているだけだったラーナもかなめの方を向いた。


「できるだけ神前曹長には力を使わせないような作戦を取るように心がけている、それに対策が有ればすぐに対応する心づもりではいる」


 カウラは冷静にそう言うと湯呑に手を伸ばした。 


「事実としてはこれまで二回、神前さんの力のおかげで助けられていますわね、お二人とも。その時もこの危険性はあったと言うことをお伝えしておきたかったんです。別に深い意味はありません。法術師に法術を使わせると言うことの意味を理解していただきたいんです。純血の遼州人でないお二人には神前さんを守ることは今のところできない。それが私の結論です」 


 そんな茜の穏やかな言葉にかなめとカウラは押し黙った。


 誠は黙って話を聞いていた。恐らくは連続放火事件の犯人である発火能力、パイロキネシスの使い手の法術暴走による自滅した慣れの果てのミイラ。それが自分にも訪れるかもしれない未来だと思えば次第に震えだす足の意味も良く分かってきた。


「じゃあ、どうしろっていうんだ?それに法術暴走の可能性ならオメエにもあるだろ?オメエは確かに地球人とのハーフだが、法術師であることには変わりはねえ。法術を発動している時は純血の法術師とハーフの法術師にどんな差が有るか知らねえが同じ法術師だ。法術の暴走の可能性がねえとは言わせねえからな」 


 ようやく話の糸口を見つけたかなめの言葉を聞いても茜はにっこりと笑っていた。


「そうですわね。私にも起こりうる出来事には違いありませんわ。でもそれを覚悟しているか、知らずに境界を踏み越えて自滅するか。私なら覚悟をする方を選びたいと思っています」 


 そう言うと茜はラーナを見つめた。その目に反応するようにラーナはそのまま戸棚の紅茶セットに向かおうとした。


「そんなにここに長居する気はねえよ。気分が悪くなるだけだ」 


 再びソファーに体を投げたかなめを見てラーナは手を止めた。



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