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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第四十四章 法術師と言う存在

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第184話 法術師の宿命

「どうやら休憩を取られているみたいですわね。丁度いいタイミングですわ」 


 にこやかな表情で会議室に現れたのは遼州同盟司法局、法術特捜主席捜査官、嵯峨茜警部だった。


「おお、茜。お前も食うか?仕事ばっかじゃ疲れるだろ?少しは栄養取ってそれから仕事しろよ。父として言えることはその程度かな?……俺も父親らしいところが有るだろ?」 


 いつも通り下品な食べ方をしている嵯峨が娘の茜に声をかけた。


「お父様。(わたくし)はちゃんとお夕食はいただきましたの。なんでも過ぎたるは及ばざるに劣るですわ」 


 そう言うと彼女は誠を見つめた。


「ちょっと神前曹長の提出した資料についてお話がありますの。お時間をいただきたいんですけどよろしくて?」 


 茜の微笑みに父である嵯峨は何かを訴えたいと言うような視線を誠に送ってきた。


「おい!こいつの資料になんか文句でもあるのか?こいつは仕事を初めてまだ半年だぞ!オメエみてえに何時もおんなじ仕事をしている訳じゃねえんだ!そんくらい考えろ!」 


 かなめは明らかに怒りを前面に出して茜に迫った。それを軽く受け流すような微笑をたたえて茜は誠を見つめた。


「ああ、良いですよ。なにか……」 


 自分の事を思ってくれてはいるものの半分はあまり馬の合わない茜に対する嫌味のつもりでそう言うかなめを抑えて誠は立ち上がった。


「よろしいみたいですわね。じゃあかなめお姉さまと……」 


「げ!アタシも?」


 明らかに不服そうにかなめはそう言って渋々立ち上がった。


「私も行こう。西園寺の馬鹿が何をするか分からん。ここに居ても不安になるだけだ」 


 茜の視線を見つけてカウラも立ち上がった。


「食べかけだよ!どうするの?」 


「グリファン中尉。それほどお時間は取らせませんわ。とりあえずラップでもかけておいて下さいな」 


 サラに向けてそう言うと立ち上がった誠とかなめ、そしてカウラをつれて茜は部屋を出た。


「本当にちょっと見ていただければ良いだけですの。本当にお手間は取らせませんので」 


 そう言うとそのまま仮住まいの法術特捜本部と手書きの札の出ている部屋へと入った。


「ああ、警部!」 


 部屋ではお茶を飲みながら端末の画面を覗き込んでいる捜査官補佐カルビナ・ラーナ巡査が座っていた。


「ラーナ。どうなの?やっぱりあれで決まりなのね」 


 茜のそれまでの上品そうな言葉が急に鋭く棘のあるものに変わった。かなめはそれをニヤニヤと笑いながら見つめていた。


「やはり間違いないっすね。これは見事な……と言うか典型的なあれです」 


 真剣な顔のラーナにそれまでふざけていたかなめの顔が一瞬で切り替わった。


「アタシも気づいていたけどやっぱりか」 


 かなめはそれまでのふざけた調子を変えて真剣な顔でそう言った。


「どういうことだ?」 


 カウラの言葉にかなめは画面を指差した。そこには奇妙な死体が映されていた。出来上がったばかりの白骨死体。以前の誠ならあり得ないと切って捨てただろうが、それが人体発火による法術の発動によるものであることは瞬時に理解できた。


「典型的な人体発火……でも僕の資料でしたっけ?死体の資料ばっかり見てたんで度の死体が何なのかはよく覚えていないんですよ」 


 その白骨死体を見ても誠はいまひとつピントこなかった。そんな誠を茜とカウラは呆れたような視線で見つめた。


「しょうが無いじゃないか、こんなの珍しくも無い死体なん……?」 


 誠をかばおうとしていたカウラもその白骨死体の画像に引き込まれて黙り込んだ。


「いや、人体発火じゃないですね……これは……こんな死体……僕はてっきり典型的な人体発火だと思って資料をそちらに流しちゃったんですけど……明らかにそれとは違う?何なんです?この死体は」 


 自分が整理した資料だったが誠には覚えが無かった。だがその白骨死体はこうしてそれだけを目にするとその奇妙さがはっきりと分かるほどのものだった。


 それは普通の白骨死体ではなくミイラ化した死体であることに気づいた。それと同時に眼孔の奥に見える目玉だけがまるで生きているように輝いているのが分かった。



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