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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第四十三章 突然クライマックスにする

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第183話 和んでる部外者

 そこに香ばしいにおいが立ち込めていることを誠はすぐに悟った。


「ずるい!ずっこい!」 


 食べ物のことなら彼女と言う小夏が叫んでいる声が聞こえた。上体を起こした誠は嵯峨と春子、そしてなぜか特務公安隊の隊長、安城秀美までがどんぶりを抱えて誠達を見つめている光景に出くわした。


「なんだ、これが良いのか?」 


 そう言って安城がどんぶりの中の食べかけのアナゴのてんぷらを見せ付けた。


「あ!それ佃屋のでしょ!あそこは値段も良いけど味も良いのよね……うちだって近いのに滅多に食べに行けないんだから」 


 小夏がそのきらびやかな赤い柿右衛門風のどんぶりを指差した。


「いいじゃないの、さっき春子さんのお弁当散々食べてたでしょ?」 


 食べ終わったどんぶりを手にアメリアがそう言うが、小夏はじりじりとアメリアに近づいていった。


「へえ、餌付けかよ。ずいぶんな熱の入れようだねー、安城少佐」 


 ランは明らかに安城に敵意を込めてにらみつけた。その先では余裕の表情で春子とランを見回しながらアナゴを食べる安城の姿があった。


「餌付け?何のこと?」 


 涼やかな印象がある美女、安城がとぼけたのが気に入らないと言うようにランは今度は春子を見つめた。


「ああ、これね。安城さんの差し入れ。他にもあるわよ」 


 そう言って奥に寄せてあったテーブルの上のどんぶりモノを指差す春子。


「やったー、じゃあカツどんある?」 


「オメエさっきもとんかつ食べてたじゃねえか!」 


 かなめの忠告を無視してサラはラップのかけてあるどんぶりを覗いて回った。


「サラの姐御!親子丼しかないですよ」 


 小夏はそう言って自分の分のどんぶりを確保する。サラも仕方ないと言うように小夏から親子丼のどんぶりを受け取った。


「アタシは天丼で、神前は?」 


 かなめに声をかけられて誠は我に返った。


「じゃあ僕も親子丼で」 


「残念!私が最後の親子丼を食べるのよ!」 


 アメリアはかなめが手を伸ばしたどんぶりを奪い取った。にらみつけるかなめだが、アメリアは気にせずラップをはがすと口にくわえていた箸をどんぶりに突き刺した。


「テメエは餓鬼か!」 


 呆れながらアメリアを見ていたかなめだが、サラやパーラ、マリア。そしていつの間にか来ていた島田と言った面々がどんぶりを取っていくのを見て仕方なく適当に一つのどんぶりを確保した。


「これで良いだろ?」 


 誠が受け取ったどんぶりは深川丼だった。


「ああ、僕は貝が大好物ですから!」 


 そう言って誠はうれしそうなふりをしてラップをはがした。


「嘘つくなよ、この前アサリ汁飲まなかった奴が……」 


 低い声でかなめがにらんでくるので誠は静かに箸を置いた。


「じゃあ、私のかき揚げ丼と交換するか?」 


 誠の後ろに立っていたカウラの言葉に誠は自分のどんぶりを差し出した。


「俺のは?」 


 新藤が窓際で叫ぶ。両手にどんぶりを持っていた小夏がちょこちょことかけていって新藤にどんぶりを差し出した。


「……安城にしては良い差し入れだな」 


 喜ぶ部下達を見て複雑な表情でランがつぶやいた。誠はその様子を見てアメリアを見つめた。


 アメリアはそのまま誠の袖を引き、入り口の嵯峨達から遠い場所で誠の耳に囁いた。


「あのね、安城さんもランちゃんも隊長に気があるのよ。二人とも遼州人だから恋に不器用なの……誰かさんみたいに」 


 そう言われてみれば安城とランが微妙な距離を取っているのも、春子とばかり話す嵯峨を時々のぞき見るのも納得できた。


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