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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第四章 自主映画会場に着いて

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18/201

第18話 市民会館が上映会場

 それから同じように途中まで進んでは正面から来た車に道を譲るために戻ると言う動作を意地になったカウラは三回繰り返した後、ようやく車は市民会館裏手の駐車場に到着した。


「カウラちゃんて……結構頑固よねえ……。あそこの道じゃなくても回り道したらもっと早く着いたのに……そんなだからいつもパチンコに大金つぎ込んで大変なことになるのよ。ランちゃんからも依存症外来でも言われてるんじゃないの?そんなこと」 


 助手席から降りたアメリアが伝説の流し目でカウラを見つめた。カウラはとりあえず咳払いをしてそのまま立ち去ろうとした。


「おい!鍵ぐらい閉めろよ。それとも何か?お前も今のアメリアの流し目でくらくらきたのか?アメリアもアメリアだ。こいつがパチンコ依存症を気にしていることは知ってるだろ?なんでそっちの話題に持っていくんだよ。まったく空気の読めねえ奴ばっかりだな」 


 後部座席からようやく体を引っ張り出したかなめが叫んだ。その言葉を口にしたのがかなめだったことがつぼだったようでアメリアは激しく腹を抱えて笑い出した。以前、かえでがこの流し目を見て頬を染め、それからはすっかりかなめと並ぶ身も心も捧げたいお姉さまの一人となっていることが彼女の流し目を『伝説』と呼ばせることになった。カウラはあわてて車のキーを取り出して鍵をかけた。


 そのまま造花とちょうちんに飾られたアーケードの下を四人は進んだ。いつもの司法局実働部隊のたまり場、小夏の実家の焼鳥屋『月島屋』とは逆方向の市民会館に向かって歩いた。そしてフリーマーケットの賑わいを通り過ぎた先にどう見ても怪しい集団が取り巻いている市民会館にたどり着いた。


 その市民会館の前にいる集団にはある特徴が有った。年は30歳前後が一番多いだろう。彼等は二種類に分類できた。


 一方は迷彩柄のベストや帽子をかぶり、無駄に筋肉質な集団が居た。そしてもう一方はアニメキャラのプリントされたコートなどに身を包む長髪が半分を占める団体である。本来の目的としていた家族連れや一般市民の姿はそこにはポツポツとしか見えなかった。


「おい、アメリア。お前どういう宣伝をやったんだ?どう見てもミリオタとアニオタしか居ねえじゃねえか。ミリオタは分かる。アタシ等は05式なんていうマニア垂涎の機体を運用している唯一の部隊だからな。でもあのアニオタはなんだ?今回の作品のテーマがアレだからか?やっぱりそうなのか?アレだからか?そんなだったらかえでの望み通りポルノでも流した方がまだマシだ!アタシは偏見の塊だからな!オタクは認めねえ!特にアメリア、オメエの存在自体を認めてねえ!」 


 違和感のある観客を見てかなめはものすごく不機嫌そうな顔をした。アメリアはただニヤニヤと笑うだけで答えるつもりは無い様だった。そのまま彼らから見つからないように裏口の関係者で入り口に向かった。そこにはすでに小夏が到着していた。小夏はいつも通り中学校の制服姿で、元気そうに市民会館を入った入場口の前を駆け回っていた。


「お前も相変わらずだなあ。元気なだけが取り柄って奴か。そのエネルギーを何か役に立つことに使おうとか思わねえのか?所詮は中学生だな」 


 呆れながら声をかけるかなめを見つけると小夏はそのまま中の通路に走り出した。


「おい!アメリア!これ!テメーは良いよな。これを掛けるだけだもんな。アタシはこんな格好だ……神前のデザイン。なんとかならねーのかな」 


 そう言ってゴスロリドレスを着込んでステッキを持った少女がめがねをアメリアに渡した。


 誠が目をこすりながら見るとその少女はランだった。その鋭い目つきは明らかにこの格好をさせられていることが気に入らないらしい。特徴的なランの眼光はぎらぎらと輝きながら誠達を威圧した。


 さすがに上官をこれ以上苛立たせまいとアメリアがめがねをかけて息を整えた。それを見たランが怒りに任せるように一気に爆発した感情に任せてしゃべりだした。



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