第178話 愛と友情の物語
「ランちゃん!助けに来たよ!」
小夏は笑顔で爆発系の魔法を使って見せた。ようやく魔法を使ったものの、その威力のすさまじさに誠はなんで最初からこの魔法を使わなかったのか疑問に思った。
『あのー!それまずいと思うんですけど!完全にクバルカ中佐巻き込んでるように見えますけど!それに最初にこれを使えば楽勝で勝ててたような気がするんですけど』
しかし、爆発の煙が収まると一人無事に爆発を避けるためにマントに隠れていたランの姿だけがあった。
ランはそのまま力尽きたように倒れこもうとした。静かに小夏はそれを支えた。
「ふっ。アタシが敵に情けをかけられるとはな。ついにここまで落ちぶれたか。笑えよ」
ランはそう言うと手にした銀色に光る剣をそばに来たかなめに手渡した。
「アタシが生きて貴様達の手に渡れば、アタシを慕ってくれた『赤色の魔法国』の民は皆殺しにされる。これで止めを刺してくれ。そうすれば民は助かるはずだ」
「馬鹿!」
そう言うと小夏はランに平手をかました。明らかに驚いたような表情のランは瀕死の人物の顔色ではなかった。
「ランちゃんが死んだらその人達は永遠に機械帝国の奴隷なんだよ!間違っている世界、間違った力。生きているからその間違いを正せるんだよ!」
熱い手でランの剣を握る手を引っ張って小夏は自分の胸に当てた。
「どう、私も生きてるでしょ。だからこうしてランちゃんに会えたの。だから機械帝国を相手に戦えるの。だから死ぬなんて……殺してくれなんて言わないでよ!」
そんな小夏を見てかなめは微笑むと剣をランに返した。
「そう言うわけだ。貴様に戦士の誇りがあるならこの剣を取れ。無いならもう一度機械帝国の黒太子カヌーバの前に行って殺してもらって来い。それが女のけじめと言うものだ」
かなめはランの視線を感じながら鞭を握り締めた。
「キャプテンシルバー、敵のアジトは分かるのか?」
殊勝に小夏がかなめを見上げる姿が誠には非常に新鮮に見えた。
「ああ、この先の廃鉱山の中に黒太子の秘密基地があるはずだ。あの地下を前線基地としてこの世界を侵略しようと企んでいる」
そう言うと歩き出そうとしたかなめだが、地鳴りのようなものが採石場全体を覆った。
「なに!なんなの」
ランに治療魔術をかけていた小夏が当たりを見回す。採石場の不安定な石は崩れ落ち、森の中から動物達が先を争って逃げ出した。
「私も分からない。何が起こったと……!」
かなめの目の前には信じられない光景が広がっていた。
そこには巨大な女性の像が廃鉱山のあった場所に立っているのが見えた。正確に言えば立っていたというよりも廃鉱山を壊して姿を現したという状況だった。




