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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第四十二章 場面も押し迫ってきて

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175/201

第175話 どうやら完結はしないらしい

「それでさあ、あとどんだけやるんだ?」 


 相変わらず春子の差し出す重箱から煮物を口に運びながら嵯峨がつぶやいた。


「ええと、後は。クバルカ中佐が日野少佐に見捨てられて最後の決戦に挑むところとリンとの最終決戦……」 


「つまりカヌーバ皇太子を倒すところまでは行かないんですね?じゃあ続編とか作るつもりですか?来年は続きをやるとか……勘弁してくださいよ。あんな恥ずかしい格好二年連続で公衆の面前で晒すなんてすごい罰ゲームですよ」 


「そのつもりだけど……誠ちゃんは嫌?」


「嫌です!」


 そんな誠の言葉に首を縦に振った。カヌーバ皇太子役と振られていたかえでががっかりしたような表情を浮かべた。かなめの騎士を自負する彼女はいいところを見せたいという気持ちなのだろうか。そんなことを考えながら出来るだけ目立たないようにと誠は部屋の隅でとんかつを食べた。


「やっぱりあれでしょ、基本は『戦いはまだまだ続く!これまで応援ありがとうございました』じゃないの?」 


 完全にゆがんだアメリアの趣味に誠は呆れた笑いを返した。


「ロマンだなー、いいなー」 


 言葉の響きだけはサラは感動していた。そんな小夏の後頭部を新藤がペンでつついた。


「なによ!」 


「いや、なんでもないから」 


 そう言うと新藤は笑顔で再び作業に戻った。


「はい、飯も食ったな。次のシーンは誰が出るんだ?」 


「隊長、いきなり仕切り始めないでくださいよ。次は小夏ちゃんとサラとかなめちゃんの三人。それに……」 


「僕が出るんだね」 


 そう言って笑みを浮かべたのはかえでだった。隣のかなめはあからさまに嫌そうな顔をした。


「おい、こいつ女だぞ。皇太子って……普通男じゃないのか?まあ普段から男だか女高分かんねえ奴だけど。まあアタシの前では女を晒して女の気持ちいいところが気持ちいいんだよな?」 


 かなめは不謹慎なことを平気で口にした。その言葉にかえではかなめを熱いまなざしで見つめていた。


「まあ仕方ないじゃないか……先日の『司法局イケメンコンテスト』一位になってしまう僕の美貌が罪なんですよお姉さま。それとお姉さまの前では僕は一匹の雌豚に過ぎません……神前曹長。君の前でも淫らな雌になってみせるよ」 


 その言葉が事実だっただけにかなめは呆れて誠を見た。


「まあ、うちの男子は……どいつもこいつも……女に負けて悔しくないのか?」 


 そう言ってかなめは今度は嵯峨を見た。そして深く大きなため息をついた。


「まあな。こいつが選択肢に入っていること自体おかしいんだけど……まあそうなっちゃったしな」 


 女子隊員全員にアンケートをした運用部主催の自主イベントで、ぶっちぎりのトップをかえでが飾ったことにより隊の男性陣の士気が著しく落ちたことは事実だったので、ただ呆れてかえでを見つめる誠だった。


「まったくこいつこういう時だけナルシストに成りやがって……」 


 そうつぶやいたかなめを見るとかえですたすたと歩み寄りかなめの手をがっちり握り締めた。


「いえ!お姉さまに与えていただくならどんな辱めでも僕は……」 


 そこまで言うといきなりかえでの後頭部にアメリアの台本が振り下ろされた。


「そんな個人的な趣味の話は後!ランちゃんが驚くでしょ!」 


「なんでアタシが驚くんだよ。こいつらの趣味なんか別にどーでも良いからはじめろよ」 


 すでにカプセルの中にスタンバイしているランの文句にアメリアはしぶしぶ引き下がった。誠はとりあえずこの状況がどう展開するのか気になってカプセルの縁に腰掛けてバイザーをかけた。



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