第169話 鬼のような上司
「ひどい!なんてひどいんでしょう!この上司は!夢見る乙女の夢を平然と踏みにじる!それでも人間?隊長には人の心は無いんですか?」
わざとらしくそう言うとアメリアは誠に向かって歩いてきた。
「ひどいと思わない?誠ちゃん。あの人鬼よ!せっかく人が努力して才能を伸ばそうとしてもそれを平然と摘み取る残酷な男だわ!人としてどうかしてると思わない?」
そう叫ばれても誠は何もできずに愛想笑いを浮かべていた。そのままじりじりと近づいてきて軽くアメリアの胸が誠の手に当たる。ちらりとかなめが蹴りを入れるようなポーズをとるのをカウラが止めているのが見えた。
「大丈夫だよ。新藤がどうせいろいろいじるんだろ?何とか見れるような作品にはなると思うぞ。それじゃあ続きをはじめるんじゃないのか?その為に俺を呼んだんだろ?」
そう言って嵯峨はそのまま手前の空いていたカプセルに寝転がった。
「そうね、新藤さん!お願いね!新藤さんも色々コネが有るでしょうから、切るところは思い切り切ってもらっても大丈夫だから。全責任は監督である私が取るから」
アメリアが叫んでみるが、相変わらずモニターから目を離さずに新藤が再び手を上げた。
「それにしてもシーン変わりが多い映画だな。俺としては長回しの多い作品が好きでね。一時期小津映画にはまってたくらいだから『東京物語』……良い映画だったなあ……」
嵯峨はそう言うとカプセルに横になったままタバコをふかすふりだけをしていた。
「隊長、ここは禁煙ですよ」
アメリアは鋭い口調で嵯峨にそう言った。
「そのくらいの常識はあるよ俺にだって。でもさあ、昔の昭和の映画監督ってタバコを吸ってるイメージが有るじゃない。タバコくらい吸いたくなるよね。こんな状況に置かれると」
嵯峨はアメリアにあれだけ言われてもタバコに未練があるようでタバコを吸うしぐさを続けていた。
「次は南條家のシーンだから!ルカ、お願い」
嵯峨のタバコへの執着に呆れ果てたアメリアは待機していたルカに向ってそう言った。
「はあ、仕方ないか。これも仕事だもんね。アメリアは自分が楽しい時だけは一生懸命になるんだから」
そう言うとルカは嫌々カプセルに身を横たえた。誠も出番があったのを思い出してまたカプセルの中に戻った。




