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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第三十九章 秘密は隠せないもの

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第163話 母と子の定め

「どうするの!小夏ちゃん。ここで止めないと!この街が……この世界が……本当に機械帝国に征服されてしまうわよ!」 


 空中には鎌を構えるサラが浮かんでいた。小夏もサラも手詰まりと言うようにリンを見つめていた。


「カ……ウラ……」 


 カウラを見つめていた怪人ローズクイーンが搾り出すようにそう言った。すぐに鞭のような両腕から生える蔓が痙攣を始め、もがき苦しみ始めた。


「なに!何が起きた!どうしたと言うのだ?まさか記憶が?そんなはずが……私の技術は完璧のはずだ……あり得ん!断固としてあり得ん!これが貴様等の力などと言うことを私は絶対に信じないぞ!」 


 突然の春子の状況にリンは戸惑ったような声を出した。それを見た小夏がリンに突進した。


 寸前で止まった小夏が杖から放たれた火の玉をゼロ距離で発射した。腹でそれを受ける形になったリンが吹き飛ばされた。その後ろに待ち構えていた小夏が振るう鎌がリンの右肩に突き立った。


「なに!下等生命体が!ローズクイーン!」 


 リンの声に一人もがいていたローズクイーンがメイリーン将軍のところへ飛んだ。


 だが、彼女はそのまますべての蔓をリンに絡めた。ローズクイーンは明らかに自らの意志でリンを絡めとろうとしていた。


「何をする!私の言うことが聞けないというのか!私に逆らうのか!創造主である私に逆らうことの意味は分かっているのだろうな!」 


 リンは脱出しようともがいた。だがもがけばもがくほどその蔓に生えた棘がリンの身体を傷つけ、深く突き刺さった棘のせいで脱出が難しくなっていく。その様子が自分がいつもかえでに緊縛されている時のことを想像しているのか、リンの表情は恍惚としたものに変わった。そして全身タイツ姿の変身後の誠に寄りかかるようにして立っているカウラに春子は笑顔を向けた。


「カウラ。ごめんね」 


 そう言って春子は涙を流した。小夏とサラは同じように涙を浮かべているカウラを見つめた。


「せっかく会えたのに……こんなことしかできなくて……」 


 はっきりとした意志を持った言葉でローズクイーンは娘に向ってそう言った。


「そんな!お母さん!待っててね!今助けるから!」


 小夏の言葉にローズクイーンは静かに首を横に振った。 


「無駄よ。メイリーン将軍の言う通り私の心は改造されてしまった。こうして私の意識が表に出ているのにも制限がある。私の心があるうちに……意識があるうちに小夏とサラさんの力で私ごとメイリーン将軍を消し飛ばすのよ!」 


 アメリアとしては感動のシーンなのだろうが、アニメにうるさい誠としては今一つ納得のいかないシーンだった。


『ひどい話だな。自分の娘じゃない方の子供に人殺しをさせる?アメリアさん、ツッコミ期待のストーリーを狙いすぎですよ。これって市からの依頼の事業でしょ?もう少し親子愛をストレートに描いても良かったような気がするんですけど』 


 そう苦笑いを浮かべている誠は当然画面に映らなかった。


「小夏!サラさん!母さんを救ってあげて!今しかないのよ!母さんが母さんでいられる時間は!その間に母さんを元の母さんに戻してあげて!」 


 カウラの言葉に小夏とサラは静かに頷いた。


「やめろ!貴様等!こんなことを……母親もろともと言うのか!そもそもこんなところで私は朽ちるわけには!」 


 焦ってもがくリンだが、がっちりと蔓に生えた棘が彼女の機械の身体に食い込んでいて身動きが取れなくなっていた。


「あなた……!許さない!」 


 小夏が展開する巨大な魔方陣から火炎がリンと春子に襲い掛かった。


「くー!グワー!機械帝国!万歳!」 


 お約束の台詞を吐いてリンはひときわ派手に爆発した。そして気づいたときには立ち上がっていたカウラはそのまま誠前まで歩いてきていた。



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