第162話 怒りに震える正義の魔法少女
「なに!先ほどの一撃で斃れなかったというのか!そんな……信じられん!」
勝利を確信したリンは慌てて体勢を立て直した。その前に着地してひざから崩れ落ちたような格好で呆然とした表情で目の前の戦いを見つめていたカウラを守るように小夏は立ちふさがった。
「許さない!あなたはあんなに一生懸命なランちゃんを笑った……あの子は自分の国を守るために必死になって戦っていた……所詮機械の心しか持たないあなたには分からないでしょうね……自分が守るものがある者の戦う強さと言うものを」
小夏はそう言ってリンをにらみつけた。その表情は迫真の演技で、誠も拍手を送りたくなった。
「許さない?それこそお笑い種だ!貴様等のような下等な有機生命体にそのようなことを言われる筋合いはない!あいつが一生懸命?当然だろう!私達と同じことをなそうとすれば必死になっても仕方の無いことだ。生身の身体を持った有機生命体に出来ることなど限られている。必死になっても我々の足下にも及ぶことはあるまいて。それを知ってまだ抵抗するか……まあ無駄な足掻きだがな」
そう言ってリンはあざ笑いながら小夏に叩かれた頭部を撫でた。
「オイル!……もしかして……」
リンは驚愕して顔を引きつらせた。その迫真の演技に誠は唖然とした。
『おい!オイルなのかよ!もしかして油圧シリンダーとかで動いてるの?いつの時代?しかも今まで気付かなかったの?神経とかどうなってるの?アメリアさん……もう少し設定は細かくやりましょうよ。最近の子供はそう言うところ気付きますよ。そのくらい考えてくださいよ』
油を払うようにして手を振ったリンに狂気の表情が浮かんでいる様が見えた。
「貴様!私の美しいボディーに傷をつけるとは……許さん!」
誠はそんなリン達に思い切り突っ込みたくなった。だがここで突っ込んでも始まらないと誠は台詞を繰り出そうとした。
「小夏、だめ!その人に逆らっては!」
再び杖を構えようとした小夏に叫んでいたのは倒れたまま上空を見上げているカウラだった。その言葉に小夏がためらった。
「そうだ!この改造植物魔人ローズクイーンには貴様の姉のカウラの母、南條春子を素体として使っているからな。人の心とかを持つ貴様等には手も足も出まい!まあ、もはやその言葉すら届かぬまでに徹底して洗脳・改造してやったが」
そう言って舌なめずりをするリンに誠はドン引きした。普段はかえでの世話をして少し控えめに見えたリンが天性のサディストであることを確認した瞬間だった。




